テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
💚side
目黒に胸の内を打ち明けてから1週間ほどした、グループ仕事の控え室でのことだった。ふっかが俺を呼ぶ。人に聞かれることを憚ったのか、別の狭い打ち合わせ用の会議室へと連れて来られた。
💚「何?何なんだよ」
💜「なべのこと、わかった」
💚「え?」
💜「目黒とデキてるらしい。本人から聞いた」
💚「目黒と?」
💜「そうだ」
頭が殴られたような衝撃。
そして、赤くなる顔。自分じゃとても制御できなかった。恥ずかしさとも怒りともつかない感情が込み上げて、思わず呻いた。少し興奮した様子のふっかは気づかずに話を続ける。
💜「昨日の夜、めめに相談されたんだよ。少し前になべから告ったらしい」
💚「……へえ」
💜「で、話の流れで阿部ちゃんの気持ちも聞いてしまった」
身体が冷たくなるのを感じる。
今となってはキャパを超えてほとんど無感情に近いところにいるが、ふっかの言葉は聞き漏らすまいと頭は冴えて耳を澄ませている。なんだか心と身体とがバラバラで気持ちの悪い感じだった。
💜「あとは、わかるよな?」
💚「…………」
💜「諦めてやれ。めめは、なべとのことをこれからも前向きに考えるそうだ」
💚「目黒が、そう言ったの?」
自分の声になるべく感情が乗らないように気をつけた。
💜「お前たち、色々あったみたいだけど、お互い大人なんだし、頑張って割り切れよ」
お前たち、って誰のことだよと思ったけど、敢えて聞き直すことはしなかった。もしかして目黒は俺と翔太が関係を持ったこともふっかに言ったんだろうか、そして、何も知らない俺は何の気なしにあの夜、目黒を傷つけていたんだろうか。翔太はなぜ俺を求めたんだろう。
突然のことで何も頭が働かない。
俺の混乱した様子を察したのか、ふっかは肩を叩いた。
💜「辛いと思うけど、ここは忘れてさ。酒でもなんでも付き合うから。早速今夜は?」
💚「……ありがとう。でも、とりあえずはいいかな」
やっとの思いでそう答えると、ふっかは気遣うような視線を残して、先に部屋を出て行った。頭の中がごちゃごちゃで、何も考えられない。控え室に戻れば否が応にも2人と顔を合わせることになる。…とりあえず落ち着こう。
壁に掛かった時計を見て、まだ少し時間があることを確認すると、俺は頭を抱えて、状況を整理することにした。
💙side
病み上がりの仕事は、まだ身体が本調子じゃなくて、起きるのも辛かった。無理やりにめめに抱かれたのもよくなかったようだ。腹の調子も良くない。控え室への到着も一番遅くて、空いている場所へ適当に荷物を置いたら、めめが自分の荷物を持ってわざわざ移動してきて、俺の隣りに座った。
🖤「おはよう。体調どう?」
爽やかな笑顔が眩しい。
甘えたいんだろう、そう思って、好きにさせる。めめは、付き合うようになってから分かったが、恋人にはとことん甘えるタイプらしい。仕事で男らしいところしか見たことがなかったから、プライベートのめめとのギャップにはかなり驚いている。
しかも今日はなぜか人目も憚らず、大胆に身体を寄せてくる。さすがにみんなの手前、抗議しようかと口を開きかけたところで、めめの方から強烈な一言が飛んできた。
🖤「俺たちのこと、メンバーには言おうと思うんだけど、どう?」
💙「え」
🖤「別に馴れ初めとかは照れるからいいかなと思うけど、隠すよりいっそ公表しちゃった方がよくない?メンバーならきっとわかってくれると思う」
💙「やだよ、急になんでそんなこと言うんだよ」
🖤「………阿部ちゃんのことが気になるの?」
ぐさり、と笑顔のままで核心をついてきた。
視線が固まったのを気づかれた気がする。俺は黙っていた。
🖤「まあいいや。考えといてね。あと、何人かにはもう気づかれてるみたいだから、そのつもりでいてね?」
めめは、噂が広まるのは時間の問題だとでも言いたげだ。
その言葉を聞いて、俺はもう阿部ちゃんのことしか考えられない。俺たちのこと、知ってるのだろうか。今知らなくても、そのうち、知ることになるのだろうか。わかりきっていたことなのに、この場から消えたくなる。
あの夜のことが生々しく蘇ってきた。もっと勇気を出していれば良かったとあの時ほど後悔した夜はなかった。阿部ちゃんと話がしたい。切実にそう思った。
仕事の帰り、阿部ちゃんを呼び止める。
めめが見ているけど、視界に入れないようにした。悪いけど、それどころじゃなかった。
振り返る阿部ちゃんが困惑して笑うのを見て胸が痛んだ。
💙「ねぇ、ちょっと話したい」
💚「目黒が見てるよ」
小声で囁く。
……知ってるんだ。
💙「そうだね。ごめん、呼び止めて」
阿部ちゃんが小首を傾げて、心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
💚「翔太、今日はあんまり体調良くなさそうだったから、今夜はしっかり休んで。めめにしっかり甘えるんだよ?」
頭に置かれた手を衝動的に振り払いたいのを我慢して、阿部ちゃんを見送った。後ろからめめがじゃあね、阿部ちゃんと声を掛けるのがやけに遠くに聞こえた。目の前で起きること全てがまるで悪い夢を見ているかのようで頭がくらくらした。
コメント
5件
しょっぴーとあべちゃんの気持ち知っててそれでもしょっぴーの事諦められなかっためめの気持ちはよくわかるけど、後々めめも辛くならないかな? みんなが幸せになれたらいいけど 難しいですね
まーじでどうなるんだ?????