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門がゆっくりと、音もなく開いた。
その奥に広がっていたのは、一面の氷。
足元から天井まで、全てが透き通った氷の迷宮で覆われていた。
「……寒っ。何これ、冷蔵庫より寒いんだけど」
アイビーがぶるっと肩をすくめる。
「気をつけろ、視界も悪い。何かがいる……気配がする」
ロビンは背中の武器にそっと手をかけながら、足を踏み入れる。
踏み込んだ瞬間、リクの足元の氷が軋んだ。
薄く透けた床の下には、まるで人の影のようなものが見えた――いや、“誰か”が氷に埋まっている?
リクの背筋に冷たいものが走った。
「ここ……誰かの、記憶?」
「もしかして、死んだ人たち……?」
氷の中に閉じ込められた“何か”が微かに動いた。
氷の向こうから、懐かしいような声が、耳元に囁く。
『……リク……』
「っ……!」
リクは振り返った。誰もいない。
ただ、空気だけが凍りつくように重く、静かだった。
門が背後で閉まる音がして、氷窟に、3人は閉じ込められた――
崩れかけた石造りの門に、どこか禍々しい雰囲気を感じ取っていた。
蔦を払いのけたロビンが、小さく息を呑む。
「……文字がある」
リクが目を凝らし、その名をゆっくりと読み上げた。
「亡骸の氷窟(なきがらのひょうくつ)」
読むと同時に、門の隙間から凍えるような冷気が漏れ出し、まるで死者の吐息のように頬を撫でていった。
古びた氷の洞窟に足を踏み入れたリク、ロビン、アイビー。
ふと、氷の床に残る足跡を見下ろすと、三人分……ではなく四人分あった。
今この場にいるのは三人だけ。
誰かがいつの間にか一緒に洞窟に入ってきたのか?それとも――。
洞窟の奥へ進むにつれて、氷の壁に不自然な刻印や金属のパイプが見え始めた。
かつてここは自然の洞窟ではなく、何かの研究施設だったのかもしれない──そんな気配を強く感じる。
床の氷には、古びた機械のパーツや壊れたモニターの破片が半ば凍りついていた。
リクたちは警戒しつつも、その謎を解くために足を進める。
氷窟の冷気が肌を刺す中、リクたちは慎重に足を進めていた。だが、ふとした瞬間、壁に凍りついた人影が微かに動いた。
「な、何だ…?」リクが声を上げたその直後、凍った亡骸がギギギと音を立てて動き出す。目には感情のかけらもなく、ただただ無機質な動きでこちらへと迫ってきた。
「氷徘者か…!」ロビンが咄嗟に警告する。冷たい空気に包まれた彼らの攻撃は、ただの力任せではない。近づく者の記憶を喰らい、心に影を落とすという。
リクは必死に思い出す。だが目の前の凍った亡骸が迫るほど、頭が混乱し、過去の断片が消えていくのを感じた。
「みんな、気をつけろ!これはただの敵じゃない!」アイビーが叫ぶ。
凍りついた空間で、無慈悲な氷徘者たちの襲撃が始まった。