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大繁盛。大忙し。
それ以外の何でもない。
いつからこの店をやっているのか忘れるぐらいの大にぎわい。
「………」
怯えた様子でまた新しいお客さんが来る。
「ひゃ!い、いらっしゃぁいッ!」
新人の子が、調子っ外れの挨拶で迎えた。
「お久しぶりで~す」
あたしが声をかけると、決まってお客さんは同じことをする。
不思議そうに首をかしげる。
いつもそう。
お客さんは大抵、ここに前来たことを覚えていない。
でも、一度は来たことがあるだろう。
「コルニャーデンさまですね、朱の百二十四番のお部屋へ」
案内人の子がお客さんの額に触れ、てきぱきと部屋割りをしていく。
「コルニャーデン…?」
きっと《コルニャーデン》という名に覚えがないのだろう。
これは魂の名。
生まれる時などに頂く名ではない。
「サーメルカークちゃーん?」
あたしが新しく入った子を呼ぶと緊張した声が返ってくる。
「はいっ…!」
お部屋の掃除を頼むと、今度は元気な返事が来た。
「分かりましたっ!」
懐かしいな、コルニャーデンさまは食いしん坊だったな
そんなも思い出に耽っていると、新人ちゃんの声が聞こえる。
「女将さぁ~ん(泣)」
また何かやらかしたようだ。
「は~、なあに~?」