コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
朝の光が教室に差し込む。
カーテンの隙間から差した日差しが、黒板のチョーク跡を照らす中、教室はまだ静かだった。
しかし、玄関のドアが開くや否や、空気は一変する。
「おいおい、今日からこのクラスを担当する“ド派手教師”、宇髄天元だ。よろしく頼むぜ。」
教室に入ってきたのは、金髪を後ろで束ねた派手な男。
腕には複数のピアス、シャツの袖は無造作にまくり上げられ、筋肉のラインまで見える。
普通なら威圧感しかないその姿が、どこか自信に満ちているのがまた――目立つ。
女子たちは思わず息をのむ。
「かっこいい…」
「何あのオーラ…!」
男子たちは互いに小さく舌打ちをするが、その視線をそらすことはできなかった。
だが、そんなクラスの熱気の中で、ひとりだけ机に突っ伏している生徒がいた。
その姿は、まるで今日の騒ぎとは無関係のように静かだった。
「おい、そこの金髪。寝てんのか?」
その声に、机の下で少年がビクリと体を跳ねる。
「ひ、ひぃっ!? せ、先生!? い、いきなり声デカいっすよ!! 心臓止まるかと…!」
顔を上げたのは、少し情けない目をした少年――我妻善逸。
髪は金色で、光の加減でまるで雷のように輝いている。
内気で臆病な性格とは裏腹に、髪だけは彼の個性を主張していた。
「お前なぁ……ビビりのクセに、髪だけ雷みてぇに派手じゃねぇか。」
宇髄は腕を組み、善逸をじっと見下ろす。
「こ、これは地毛ですっ! 生まれつきなんですっ!!」
善逸は慌てて弁解するが、その声は小さく震えていた。
教室が笑いに包まれる。
宇髄の口元も、少しだけ緩む。
「……まぁいい。俺のモットーは“地味禁止”。お前もその髪の色のように、もっとド派手に生きろ。いいな、我妻。」
「ド派手って…俺、ただ静かに卒業したいだけなんですけど!!」
善逸は目を見開き、思わず机を握りしめる。
宇髄はその仕草を見て、少し面白そうに笑った。
「ふん、静かにって……お前の才能、俺がほっとくと思うなよ?」
善逸はその言葉にピクリと反応する。
「そ、才能…ですか?」
胸がドキドキして、思わず頬が赤くなる。
「そうだ。お前、声の出し方、リズム感……悪くない。音楽室で個人指導してやる。もちろん、俺の指導は厳しいぞ?」
宇髄の瞳は真剣だが、どこか楽しそうに光っていた。
善逸は体が震え、声を震わせた。
「え、えぇぇっ!? そ、そんなの無理です! 僕、先生みたいに派手にできませんっ!!」
「派手にってのは見た目のことだけじゃねぇ。心の中まで全力で行くってことだ。」
宇髄は教室を一歩歩き、善逸の目をじっと見つめる。
善逸はその目に、強く引き込まれるような感覚を覚えた。
「心の中まで…全力…ですか…」
小さく呟くと、胸の奥が熱くなるのを感じた。
その瞬間、善逸の中で何かが目覚めたような――。
今まで怖がってばかりだった自分が、少しずつ変わる予感。
「よし、今日からお前の“雷の力”をド派手に伸ばしてやる。」
宇髄はにっこり笑う。
「俺と一緒なら、退屈な毎日なんて吹き飛ぶぜ。」
善逸はまだ信じられないような顔で、でも心の奥が少しワクワクしていることに気づく。
こうして始まった――教師と生徒の、ちょっと騒がしくて、ほんのり甘い日々。