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かんすい
19
それは、最初から嘘だった。
そう書かれた紙を、
私は何度も折り直して、ポケットにしまっていた。
「ここに来れば、会える」
誰が書いたのかは分からない。
字は雑で、でも迷いがなかった。
駅から少し離れた、
古い歩道橋の下。
昼間でも薄暗くて、
人通りの少ない場所。
最初は、信じていなかった。
そんな都合のいい話があるはずがない。
それでも、
気づくと、そこに向かっていた。
会いたい理由は、
説明できなかった。
名前も、
顔も、
はっきりとは思い出せない。
ただ、
会わなければならない、
という感覚だけが残っている。
歩道橋の下には、
何もなかった。
コンクリートの壁。
古い落書き。
風で揺れる草。
「……ここ?」
声に出すと、
自分の声だけが返ってきた。
帰ろうとしたとき、
背後で足音がした。
振り返っても、
誰もいない。
でも、
“来ている”気配だけはあった。
それから、
私は何度もそこへ行った。
朝。
夕方。
夜。
時間を変えても、
景色は同じだった。
それなのに、
行かない日が続くと、
胸の奥が、少しずつ痛んだ。
行かなければ、
忘れてしまう気がした。
何を、とは言えないまま。
ある日、
歩道橋の下で、
誰かが立っているのを見た。
距離は遠く、
逆光で、顔は見えない。
でも、
心臓が一度だけ、
強く跳ねた。
私は名前を呼ぼうとして、
やめた。
もし違ったら、
もう来られなくなる気がしたから。
近づくと、
その姿は消えていた。
代わりに、
新しい紙切れが落ちていた。
「今日も、来てくれてありがとう」
文字は、
私のものだった。
その瞬間、
分かってしまった。
会えていないのに、
“会ったこと”にしていたのは、
私自身だ。
ここに来れば、
会える。
そう信じることで、
会えなかった事実を、
なかったことにしていた。
それでも、
私は次の日も来た。
来なければ、
完全に終わってしまうから。
歩道橋の下に立つ。
何も起きない。
でも、
確かに“いる”。
いないはずの誰かが、
ここにだけ、残っている。
それが、
嘘でも構わなかった。
この場所に来る限り、
会えない現実を、
先延ばしにできる。
だから私は、
今日も、ここにいる。
ここに来れば、
会える。
それが、
最初から嘘だったとしても。会いたい理由は、
説明できなかった。
名前も、
顔も、
はっきりとは思い出せない。
ただ、
会わなければならない、
という感覚だけが残っている。
歩道橋の下には、
何もなかった。
コンクリートの壁。
古い落書き。
風で揺れる草。
「……ここ?」
声に出すと、
自分の声だけが返ってきた。
帰ろうとしたとき、
背後で足音がした。
振り返っても、
誰もいない。
でも、
“来ている”気配だけはあった。
それから、
私は何度もそこへ行った。
朝。
夕方。
夜。
時間を変えても、
景色は同じだった。
それなのに、
行かない日が続くと、
胸の奥が、少しずつ痛んだ。
行かなければ、
忘れてしまう気がした。
何を、とは言えないまま。
ある日、
歩道橋の下で、
誰かが立っているのを見た。
距離は遠く、
逆光で、顔は見えない。
でも、
心臓が一度だけ、
強く跳ねた。
私は名前を呼ぼうとして、
やめた。
もし違ったら、
もう来られなくなる気がしたから。
近づくと、
その姿は消えていた。
代わりに、
新しい紙切れが落ちていた。
「今日も、来てくれてありがとう」
文字は、
私のものだった。
その瞬間、
分かってしまった。
会えていないのに、
“会ったこと”にしていたのは、
私自身だ。
ここに来れば、
会える。
そう信じることで、
会えなかった事実を、
なかったことにしていた。
それでも、
私は次の日も来た。
来なければ、
完全に終わってしまうから。
歩道橋の下に立つ。
何も起きない。
でも、
確かに“いる”。
いないはずの誰かが、
ここにだけ、残っている。
それが、
嘘でも構わなかった。
この場所に来る限り、
会えない現実を、
先延ばしにできる。
だから私は、
今日も、ここにいる。
ここに来れば、
会える。
それが、
*最初から嘘だったとしても*。
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