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それは、最初から嘘だった。
そう書かれた紙を、
私は何度も折り直して、ポケットにしまっていた。
「ここに来れば、会える」
誰が書いたのかは分からない。
字は雑で、でも迷いがなかった。
駅から少し離れた、
古い歩道橋の下。
昼間でも薄暗くて、
人通りの少ない場所。
最初は、信じていなかった。
そんな都合のいい話があるはずがない。
それでも、
気づくと、そこに向かっていた。
会いたい理由は、
説明できなかった。
名前も、
顔も、
はっきりとは思い出せない。
ただ、
会わなければならない、
という感覚だけが残っている。
歩道橋の下には、
何もなかった。
コンクリートの壁。
古い落書き。
風で揺れる草。
「……ここ?」
声に出すと、
自分の声だけが返ってきた。
帰ろうとしたとき、
背後で足音がした。
振り返っても、
誰もいない。
でも、
“来ている”気配だけはあった。
それから、
私は何度もそこへ行った。
朝。
夕方。
夜。
時間を変えても、
景色は同じだった。
それなのに、
行かない日が続くと、
胸の奥が、少しずつ痛んだ。
行かなければ、
忘れてしまう気がした。
何を、とは言えないまま。
ある日、
歩道橋の下で、
誰かが立っているのを見た。
距離は遠く、
逆光で、顔は見えない。
でも、
心臓が一度だけ、
強く跳ねた。
私は名前を呼ぼうとして、
やめた。
もし違ったら、
もう来られなくなる気がしたから。
近づくと、
その姿は消えていた。
代わりに、
新しい紙切れが落ちていた。
「今日も、来てくれてありがとう」
文字は、
私のものだった。
その瞬間、
分かってしまった。
会えていないのに、
“会ったこと”にしていたのは、
私自身だ。
ここに来れば、
会える。
そう信じることで、
会えなかった事実を、
なかったことにしていた。
それでも、
私は次の日も来た。
来なければ、
完全に終わってしまうから。
歩道橋の下に立つ。
何も起きない。
でも、
確かに“いる”。
いないはずの誰かが、
ここにだけ、残っている。
それが、
嘘でも構わなかった。
この場所に来る限り、
会えない現実を、
先延ばしにできる。
だから私は、
今日も、ここにいる。
ここに来れば、
会える。
それが、
最初から嘘だったとしても。会いたい理由は、
説明できなかった。
名前も、
顔も、
はっきりとは思い出せない。
ただ、
会わなければならない、
という感覚だけが残っている。
歩道橋の下には、
何もなかった。
コンクリートの壁。
古い落書き。
風で揺れる草。
「……ここ?」
声に出すと、
自分の声だけが返ってきた。
帰ろうとしたとき、
背後で足音がした。
振り返っても、
誰もいない。
でも、
“来ている”気配だけはあった。
それから、
私は何度もそこへ行った。
朝。
夕方。
夜。
時間を変えても、
景色は同じだった。
それなのに、
行かない日が続くと、
胸の奥が、少しずつ痛んだ。
行かなければ、
忘れてしまう気がした。
何を、とは言えないまま。
ある日、
歩道橋の下で、
誰かが立っているのを見た。
距離は遠く、
逆光で、顔は見えない。
でも、
心臓が一度だけ、
強く跳ねた。
私は名前を呼ぼうとして、
やめた。
もし違ったら、
もう来られなくなる気がしたから。
近づくと、
その姿は消えていた。
代わりに、
新しい紙切れが落ちていた。
「今日も、来てくれてありがとう」
文字は、
私のものだった。
その瞬間、
分かってしまった。
会えていないのに、
“会ったこと”にしていたのは、
私自身だ。
ここに来れば、
会える。
そう信じることで、
会えなかった事実を、
なかったことにしていた。
それでも、
私は次の日も来た。
来なければ、
完全に終わってしまうから。
歩道橋の下に立つ。
何も起きない。
でも、
確かに“いる”。
いないはずの誰かが、
ここにだけ、残っている。
それが、
嘘でも構わなかった。
この場所に来る限り、
会えない現実を、
先延ばしにできる。
だから私は、
今日も、ここにいる。
ここに来れば、
会える。
それが、
*最初から嘘だったとしても*。