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遊牧民の怪獣
草むらに放たれた羊が一匹、羊が二匹羊が三匹、白昼夢と化したこの地球、人びとには一匹ずつの真黒穴のような怪獣を飼っている現実だけが事実であった。
真黒穴は黒雲を生み出す。その黒雲は雲なのにありもしない質感を持ち、ありもしない固さをもち、人を振り回すことにかけてはピカいちであり、右に出る者がいなかった。それは草むらで一人一人の中で生きているかのように、それのおかげで人々は彷徨った。白雲に見えても全部それは黒雲だ。それに気づけるものも僅か、思いの外少なかった。図星という攻撃をくらうことで忙しい人間の殻を被った人間は面食らうからだ。地雷、ともいう。これをつつくのが好きな羊の一匹がいた。悪戯ないたずらなこの羊は、世間からドロップアウトしたために、豊かに生きる道を勝ちとった。そうした羊と周りの羊と、遊牧民の混沌としたものがたり。
つづく