それから二日程が過ぎた、金曜日の仕事終わりに、私はいよいよくだんの彼へ電話をかけてみる決心をした──。
スマホのディスプレイから、メモを片手に電話番号を一個ずつ押していく。
通話ボタンをタップすると呼び出し音が続き、それに比例するかのように、わけもなく緊張してくる。そろそろコールが十回目に達しそうにもなり、もう切ってしまおうかと思った矢先に、相手が電話に出た──。
「……も、もしもし、あの……」
彼の写真の主が、向こう側にいるのかと思うと、ついたじろいで言葉に詰まってしまう。
「はい、久我だが」
わぁー……声までがイケボ(イケてるボイス)で、何から何までまさに完ぺきっていうか……。
「えーっとあの、私は、草凪 彩花と言います……」
どぎまぎして頭が真っ白になり、しどろもどろでとりあえず名前だけを告げる。
「ああ、カッチェのお嬢さんか」
「えっ、ええ、はい」
『お嬢さん』だなんて呼ばれたこともなくて、動揺が思いきり声に出てしまい、カーッと一気に体温が上がった──。
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