喧嘩組短篇

　　

　　文化祭の夜、学校は賑やかな雰囲気に包まれていた。明るく照らされた廊下では、生徒たちがさまざまな衣装を身にまとい、各ブースやアクティビティで忙しく動き回っている。一つの暗い教室の前には「お化け屋敷」の看板が掛かっていて、かすかにぞっとするような雰囲気を漂わせていた。

　　「シャケ！！一緒にお化け屋敷行く？」Nakamuは興奮した様子で言い、目をキラキラさせながら、片手に先ほど勝ち取った小さな賞品を持ち、もう一方の手で横にいるシャークんの肩を軽く叩いた。

　　「本気なの？」シャークんは入口にぶら下がる偽の骸骨をちらりと見て、躊躇いの表情を浮かべた。「こういう活動って本当に面白いの？」

　　「もちろん！怖いの？」Nakamuは挑発的な口調で言い、少し口角を上げて微笑んだ。彼はシャークんの秘密を知っていた——シャークんは冷静で自信に満ちた印象を与えているが、恐怖に直面すると意外と臆病だった。

　　「全然怖くない」シャークんの声は少し低く、少しぎこちない。彼は見下されるのを嫌い、渋々頷いた。「入るなら入る」

　　二人はお化け屋敷に足を踏み入れ、瞬時に周囲は暗闇に包まれた。狭い廊下にはプラスチック製のクモの巣や不気味な装飾物がぶら下がっている。空気には冷たい風が吹き抜け、寒気を感じさせた。足を進めると、突然鋭い女の霊の泣き声が静寂を破った。

　　シャークんは驚いて立ち止まり、心臓が急速に鼓動し始めた。無意識にNakamuの服の裾を掴み、まるでそれが最後の拠り所のようだった。自分の行動が少し過剰であることを理解していながら、その本能的な恐怖を抑えきれなかった。

Nakamuは彼の小さな動作に気付き、思わず小声で笑った

　　「ほら、やっぱり怖かったんだ」

　　「ただ……声が突然過ぎただけだ！」シャークんは少し苛立って手を離し、先ほどの動揺を隠そうとした。

　　Nakamuは何も言わず、ただ前に進んで行った。まるでその驚かせる演出に全く気にしていないかのように。次の数分間、彼らはいくつかの仮装した幽霊に遭遇し、壁から飛び出してくる人に驚かされる度に、シャークんは毎回驚きのあまり後退りし、声を上げてしまう。しかし、Nakamuは常に冷静で、時にはその幽霊さんに挨拶さえした。

　　「本当にこういうのが好きなんだね。」シャークんは不満げに愚痴った。

　　「うん、日本の妖怪伝説は面白いと思うよ」Nakamuは答えながら、半開きのドアを押し開けた。ドアの向こうから突然低い鬼の笑い声が響き、次の瞬間、暗闇から白い衣装を着た幽霊が飛び出してきた。

　　シャークんは瞬時に反応できず、叫び声を上げた。「あ！」彼はほぼ本能的に後ろに退き、ドアの枠にぶつかってしまった。

　　「本当に幽霊が怖いの？」Nakamuは彼を振り返り、驚きと少しの茶化しの表情を浮かべて言った。

　　「……ただ、この怖がらせ方に慣れてないだけだ」シャークんの声は少し弱気になりながらも、彼はなんとか冷静さを保とうとした。

　　Nakamuは軽くため息をつき、優しい目を向けた。「大丈夫、もうすぐ出口だよ。先に行って道を開けてあげようか？」

　　シャークんは少し黙って考えた後、頷いた。二人が進み続ける中で、Nakamuは意図的に手を伸ばし、軽くシャークんの背中を叩いた。その温かい感触は、安心のサインのようだった。

　　最終的に、彼らは無事にお化け屋敷を出た。シャークんは長い息を吐き、先ほどの狼狽を隠そうとした。しかし、Nakamuの少し狡猾な笑顔を見た瞬間、思わず彼を軽く押した。

　　「次にこういう活動があったら、俺は勘弁だ。」

　　「えー」Nakamuは少し不満そうに言ったが、すぐに気を取り直し、シャークんの選択を尊重することにした。「じゃあ、次はお化け屋敷じゃなくて、もっと楽しいところに行こう！」

　　「それならいいけど」シャークんはほっとした表情を浮かべながら頷いた。

　　彼らが廊下を歩きながら、周囲の喧騒に包まれていく中で、シャークんは心の中で感じた温かさが、やがて二人の友情をさらに深めるきっかけになることを確信した。この文化祭の夜、恐怖と共に彼らの絆も少しずつ強くなっていった。