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ゆう
75
白井 あま 👾
204
第六話 家族
「……お兄ちゃん」
番になったことを直人に伝えると。
「そっか」
直人は笑った。
「よかったな、結衣」
「……うん」
その隣では葉月が春樹を見る。
「兄貴」
「何?」
「俺の妹をよろしく」
「お前の妹じゃないだろ」
「俺の番の妹だから、半分俺の妹みたいなもんだろ」
「意味分からない」
「兄貴、結衣ちゃん泣かせたら俺が――」
「葉月くん」
直人が止める。
「春樹さんなら大丈夫だよ」
「直人まで……」
結衣は笑ってしまった。
春樹が結衣を見る。
「結衣」
「なに?」
「これから、よろしく」
「……うん」
そのとき。
玄関から声がした。
「ママー!」
ゆみとゆいとが帰ってきた。
「ママ、今日――」
二人が春樹を見る。
そして。
結衣を見る。
「……?」
結衣は少し緊張した。
「ゆみ、ゆいと」
「なに?」
「今日から……春樹さんは、ママの番だよ」
二人は顔を見合わせた。
「……番?」
「うんだから2人のパパになる」
ゆみが春樹を見る。
ゆいとも見る。
そして。
「じゃあ」
ゆみが言った。
「春樹さん、私たちの家族になるの?」
「そうだよ」
ゆみとゆいとが笑う。
春樹は二人を見る。
そして、結衣を見る。
結衣も春樹を見る。
まだ。
怖い。
過去は消えない。
これからだって、苦しくなる日があるかもしれない。
それでも。
「……春樹さん」
「ん?」
「私、まだαが全部好きになったわけじゃないから」
「うん」
「春樹さんだけだからね」
「……それ、かなり嬉しい」
「調子に乗らないで」
「はい」
結衣は笑った。
昔のような、無理に作った笑顔ではなく。
自分で選んだ人の隣で。
自分で選んだ未来を見つめるための笑顔。
「春樹さん」
「ん?」
「……私のこと、嫌いにならないでね」
春樹は少しだけ目を細めた。
「嫌いでいさせてくれって言ってなかったっけ?」
「……言った」
「じゃあ」
春樹は笑う。
「もう無理かも」
「……ずるい」
「ごめん」
「だから謝らないでってば」
二人の笑い声に。
ゆみとゆいとの声が重なる。
そして
少し離れたところで、葉月と直人も笑っていた。
結衣は思う。
過去は変えられない。
忘れる必要もない。
ただ。
これから先のことなら。
自分で選べる。
そして今
結衣が選んだのは――。
土屋春樹だった。
♡お願いします。
コメント
1件
ええ、もう……本当に温かいお話でしたね。結衣さんが「春樹さんだけだからね」って言うところ、胸がじんわりしました。過去を否定せず、それでも“自分で選んだ”人と歩む覚悟が伝わってきて。あと、春樹さんの「嫌いでいさせてくれって言ってなかったっけ?」からの「もう無理かも」って返し、ずるいけどすごく好きです。家族の輪の中にゆっくり迎え入れられる感じが、この作品の優しさそのものだなって思いました。