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「何か記念に買って行きたいな…」
お店に並んでいる商品を眺めながら、何気なく呟くと、
「それならブーツグラスはどうですか?」
そう彼から持ちかけられて、「……ブーツグラス?」と、尋ね返した。
「ええ、ブーツの形をしたビアグラスは、ドイツでは有名なものなので。ほら、クリスマスバージョンの物もこちらに」
お店に陳列されているグラスを彼が指差すのに、「いいですね…」と、手に取った。
「だけど、なんでブーツ型のグラスなんでしょう?」
「昔、ドイツの軍人がブーツでビールを回し飲みをしたというエピソードから作られたもののようですね」
「そうなんですか」頷いて、「先生は、本当になんでも知ってるんですね」その知識の豊富さに感嘆して話すと、
「幼い頃から勉強ばかりしていたので、知識だけは増えたようで」と、小さく笑って、「ですが、そういうことでも好きな人の役に立つのなら、よかったと…」私の身体をスッと傍らに抱き寄せて、耳元に囁きかけた。
甘いセリフと耳に感じる吐息にはにかむ私の頬にチュッと口づけて、ますます顔を赤くさせると、彼がいたずらっぽくクスリと微笑った……。
ブーツ型のビアグラスは大小様々なサイズがありデザインも色々で、中でもカラフルなガラスにクリスマスの絵付けをされたものが目を引いた。
どれにしようかと迷っていると、「このスノーマンの描かれたグラスは、どうですか?」と、彼から比較的小振りのブーツグラスを見せられた。
「かわいい。じゃあ、これにしますね」と、赤と緑の色違いのものを買おうとすると、「私が買いますよ」と、彼がカードを出して、
「これでまた2人で飲むのも楽しみですね」
と、笑みを向けた。
ドイツでの2人の記念ができたことが嬉しくなって、お店で包んでもらったグラスを胸に抱えると、「ありがとうございます。私も楽しみが増えました」と、彼に笑い返した……。