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外は大雨だった。
玄関のドアが開いて、びしょ濡れのローレンが入ってくる。
『……ただいま……』
「うわ、何その状態」
『傘……意味なかった……』
靴を脱いだ瞬間、ふらっとよろける。
「おい」
葛葉がすぐ腕を掴む。
「熱あるだろ」
『……たぶん……』
「ソファ来い」
無理やり座らせて、額に手を当てる。
「……あっつ」
『……だから言った……』
「言ってねぇよ」
『顔に書いてあっただろ……』
「開き直るな」
葛葉はタオルを持ってきて、ローレンの髪を乱暴に拭く。
『……優しくしろ……』
「黙れ、風邪引き」
『……くっさんが触るから……』
「何」
『……落ち着く……』
ローレンはそのまま、葛葉の腕を掴む。
『……行くな……』
「どこにも行かねぇ」
『……嘘ついたら……許さない……』
「今のお前に嘘つくほど、俺ひどくねぇよ」
ローレンは力を抜いて、葛葉にもたれかかる。
『……体しんどいのに……』
「のに?」
『……くっさんのこと考えると……』
『……余計、離れたくなくなる……』
「意味分かんねぇ」
『……分かんなくていい……』
『……ここにいて……』
葛葉は溜息をついて、ローレンを抱き寄せる。
「……重い」
『……嫌なら離れる……』
「離すって言ってねぇ」
ローレンはそのまま、葛葉の服を掴む。
『……なぁ……』
「ん」
『……俺が弱ってる時……』
『……くっさん、ずるい……』
「何が」
『……優しい……』
「……今だけな」
『……今だけでいい……』
雨の音が、窓を叩く。
ローレンはぼんやり天井を見ながら言った。
『……くっさんがいない部屋……』
『……考えたくない……』
「……縁起でもねぇ」
『……約束して……』
「何を」
『……俺が弱い時……』
『……ちゃんと、捕まえて……』
「……逃げる気かよ」
『……違う……』
『……離れそうになる……』
葛葉は、ローレンの額に自分の額を軽く当てる。
「……離す気ねぇよ」
『……ほんとに……?』
「ほんと」
ローレンは小さく笑って、目を閉じる。
『……じゃあ……』
『……少しだけ……キス……』
「……熱あるのに」
『……だから……』
「……バカ」
短く、そっと。
唇が触れるだけのキス。
離れたあと、ローレンは葛葉の胸に顔を埋めた。
『……雨の日……』
『……嫌いだったのに……』
「今は?」
『……くっさんいるなら……』
『……悪くない……』
「……はやく寝な」
『……一緒に……』
「逃げねぇって言っただろ」
ローレンは安心したみたいに、ぎゅっと掴む。
『……好き……』
「……知ってる」
雨音の中、二人はそのまま動かなくなった。