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ゆらゆらと心地よい揺れがする。前にも何処かで――。
耳にふわっと何かが当たる感触がした。何だろう? くすぐったい。
「リサちゃん――、起きて下さいっす」
耳に直接囁かれて、私は意識を急激に取り戻す。
「スペ――」
しーっと、指を唇に押しあてられる。
「静かにっすよ」
暗闇で、状況が確認出来ない。
「ライト」
私は小さく、光を呼んだ。
そうだ、二人は? もぐらは?
まわりをキョロキョロと確認するが、さっきと場所が違う。と、いうかスペードの腕の中にいるんですけど! 私に、いったい何が起こったの!?
「いててっす、暴れちゃ駄目っすよ」
スペードから離れて、もう一度まわりを確認する。
「アリスト君とルード君は、あのまま、あそこでおねんねしてるっすよ。静かにしてれば大丈夫っすから。それより――」
スペードが、また近付いてきて肩に手を置かれ、背後から何かを指差す。
「あそこっす」
指差す方向を見ると、精霊の場の魔法陣と、その上にもぐらの魔物が乗っていた。あれは、風の精霊の魔法陣と――、魔物は、寝てる?
カチャリと音がして、横を見るとアリスの剣がソコにあった。
「これ、アリスちゃんの」
「あ、あぁ、ちゃんと後で返すっすよ。蔓や根をかき分けるのにちょっと拝借しただけっす」
そう言って、スペードは腰につけた鞘に剣を差し込んでいた。とても、手慣れている。王子というのは、本当なのかもしれない。あ、騎士とかでも、剣は使うかな。
でも、人のを勝手に使うなんて。私はじとりとスペードを睨み付けておいた。
小さな声なら、話してても大丈夫なのかな。
「あの、私、風の魔法使えないから、アリスちゃんが一緒じゃないと――」
「ん、何言ってるんすか? そこに精霊の場があるから、風の精霊と契約すればいいんすよ」
え?
「見えるんでしょ? リサちゃん」
は? 何、言ってるの? この人。
「今から、僕があそこまでふわっと持っていってあげるんで、風の精霊と契約して、ぱぁーっと浄化しちゃいましょうっす」
浄化魔法の事、何で知ってるの? 頭が混乱する。スペードにも見えているの? まさか、スペードは聖女? いや、これは無いか……。何で、何で?
「いくっすよー。風の精霊よ」
有無を言わさずに、私はまた彼の腕の中に捕まってしまった。
あれ、包帯してる……。
この角度からだと前髪の下に包帯を巻いているのが見えた。三重に目を隠しているみたい。こんなに厳重に隠して彼は前が見えるんだろうか。というか、これで普通に動いてるって、すごい気がする。
ふわりと、苔の生えた岩の上を通りすぎ、魔物の前に静かに着地する。
頭上を仰ぎ見ると、ちょうどぽっかりと穴が空いており、三つの月が顔を覗かせていた。
コメント
1件
あらあら、スペードさん、ずいぶん大胆に動いてますね(笑)。リサちゃんが戸惑いながらも風の精霊と契約しろって、結構な無茶振り。でも彼の目元の包帯、三重に巻いてるって描写がすごく気になる…何を隠してるんだろう?「ふわっといってぱぁーっと」のタイトル通り、軽やかさの中に秘密が詰まったエピソードでした。次が楽しみ!