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「すみませんでした! もう逃げたりしませんから、どうか命だけは助けてください!!」
無事井筒を捕らえる事に成功した美澄と小竹は郁斗と共に恭輔の元へやって来て引き渡すと、早速尋問のような行為が始まった。
一度ならばまだ多少痛めつける程度で終わっていたのだけど、今回は二度目とあって流石の恭輔も黙ってはいなかった。
「井筒さんよ、そう思うなら何で逃げる? テメェは前にもそう言ったんだよな? それでも懲りずに金借りて、また逃げ出しやがった。そんな奴の言葉を信じる人間がいるか?」
「すみません、すみません……」
井筒は既にここへ連れて来られた段階で美澄や小竹に何度となく殴られ、顔は腫れ上がっている。
そんな彼の髪を掴み上げた恭輔は、
「まあ、俺ら市来組は人を殺したりはしねぇ。ただなぁ、こっちも金貸しは商売なんでね、返して貰わねぇと困るんだよ」
「ひいぃぃ……」
「つーわけで、テメェには逃げられねぇよう別の組織に引き渡す事になった。せいぜいそこで命乞いでも何でもするんだな」
「た、助けて……」
「慎! こいつを間島組に運んで来い」
「了解しました」
「い、いやだ! 頼む! 必ず金は返すから……!」
「うるせぇな、黙ってろよ!」
「うぐっ……」
部屋から連れ出そうとすると暴れて騒ぎ出した井筒に苛立ちを覚えた慎は彼のみぞおちに拳を一発食らわすと苦しそうな声を上げて大人しくなったので、そのまま身体を担ぎあげて外に停めてある車へと運んで行った。
「美澄、小竹、ご苦労だったな」
「いえ! 昨日は本当にすみませんでした!」
「次はこんな事のないよう、気をつけます!」
「ああ、頼んだぞ。それから郁斗」
「はい?」
「お前、女を一人、拾ってるな?」
「あー、はい、まあ……」
「それが昨日言ってた野暮用か」
「……そうです」
「それでその女は、今日から『PURE PLACE』で働かせると?」
「流石恭輔さん、情報早いっすね」
「まあな。で、その女は何だ? ワケありか?」
詩歌の事を問われた郁斗は美澄や小竹をチラ見すると、恭輔は郁斗の言いたい事が分かったらしく、
「美澄、小竹、お前らはこれからこのリストに載ってる家回って集金して来い」
二人を事務所から出す為に仕事を言いつける。
「分かりました!」
「行ってきます」
そうとは知らず、仕事を言いつけられた二人が意気揚々と事務所を後にした。
「まあ、ひとまずそこに座って続きを話せ」
「はい」
そして、郁斗にソファーへ座るよう促した恭輔は先程の続きを話すよう言った。
「――そうか、そういう事情がな」
「ええ。とりあえず、今のところまだ花房家に動きはないようです」
「もう相手の動向を確認してるのか?」
「関西の方に拠点を置いてる昔馴染みのダチに依頼して早速調べて貰ってます」
「流石だな。それで、これからどうするつもりなんだ?」
「そうっすねぇ、まだ決めてないですけど、暫くは彼女のやりたいようにやらせてやろうとは思ってます」
「ふむ……、まあそれは構わないが、郁斗にしてはやけに肩入れするじゃねぇか」
「別に、理由なんてないっすよ。なんつーか、行きがかり上?」
「俺には、それだけには思えねぇが、まあお前がそうだと言うならそういう事にしておくか」
「なんすか、その含みのある言い方は」
「別に、何もねぇさ。それにしても……花房……か」
「どうかしたんすか?」
「いや、花房 慎之助……その男、どこかで見覚えがあるんだよな」
恭輔は先程詩歌の説明をする際に彼女の父親や婚約者の男の画像を郁斗から見せられた時、どこかで見覚えがあると思うも、なかなか思い出せずにいた。
「そうなんすか? まあ、また新たな情報入ったら共有しますよ」
「ああ、そうしてくれ」
「それじゃあ俺はこれから『PURE PLACE』に戻るんで」
「彼女の監視か?」
「まあ、そんなとこっすね」
「そうか。しっかり仕事して来いよ」
こうして、恭輔との話を終えた郁斗は詩歌の待つ『PURE PLACE』へと戻る事になって車を走らせる。
その途中、太陽から写真画像が送られてきたので信号待ちに確認すると、
「なっ…………」
その画像にはヘアメイクを終えてドレスアップをした詩歌の姿が映されていて、より一層綺麗になった彼女の姿に郁斗は思わず驚き言葉を失った。