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今日はバルトの魔術師団入団日だ。
紹介人ということで、シュメリも一緒に出掛けて行った。
「いいかい。絶対に屋敷から出ないようにね」
シュメリが僕に、きつく言い含めて行った。
「良い子で待ってろよ」
バルトは、ちょっと緊張している感じだった。
二人が並んで出掛ける姿を見られるのは嬉しい。
最近の二人はシュメバルというより、仲良しの友達って感じだ。
だから、安心して一緒にいられる。
(僕も一緒に行きたかったなぁ)
なんて思いながら、遠くの空に想いを馳せる。
「やることないし、猫魔になってみようかな」
カノとキノが教えてくれた通り、体の奥に溜まっている魔力を放出する。
「えい!」
水色のベールが僕を包む。
剥がれ落ちると猫魔の姿になった。
「うにゃ!」
魔力を使って猫魔になると、人に戻っても服を着ているから安心だ。
水色のリボンは猫になっても、そのまま残っていた。
(首輪みたいで、可愛い)
黒い毛並みに白と水色が良く映える。
とっても気に入った。
僕は久し振りに猫の姿で屋敷の中を探検することにした。
一階は、食堂や広間、いつもお茶するテラスがある。
「おや、その姿……リンネ様、お散歩ですか?」
使用人の人たちは、僕が猫魔だって知ってる。
猫に変化できるようになったことも、シュメリから聞いて知っているみたい。
「あにゃ!」
挨拶をして、僕は階段を昇った。
二階には、シュメリの書斎やお部屋、寝室がある。
僕とバルトのお部屋も、二階にある。
「にゅぅ」
シュメリの書斎はいつも鍵がかかっているから、入れない。
書斎の中にシュメリがいる時も、入れてくれない。
お部屋とか寝室には入れてくれるのに。
何があるのか、気になるなぁ。
「にゅ?」
シュメリの書斎のお向かいには、バルトの部屋がある。
扉が薄く開いている。
僕は、何気なく扉を押した。
「はにゃ」
開けちゃった。
叱られちゃうかな。
僕は、こっそりバルトの部屋に入った。
(バルトは時々、お部屋に入れてくれた)
実は一緒にお昼寝したこともあるんだ。
シュメリに話すときっと怒るから、内緒だけど。
(森の家では、一緒に寝てたのにな)
丸太の家にはベッドが一つしかなかったから、二人で寝ていた。
眠れない夜はバルトが御伽噺を話して聞かせてくれた。
それが面白くて、余計に寝付けなくなったりした。
(バルトの匂いがする)
少しだけ、森の匂いがする。
その匂いをだどって、部屋の中をウロウロする。
一番匂いが濃い、クローゼットを開けた。
「バルトの服だ」
僕は人型に戻って、その服を手に取った。
この屋敷に忍び込んだ時にバルトが着ていた服。
#御本人様とは一切関係ありません
もちもち
692
29
#しょしんしゃ
洋食派‼︎
55
森の匂いが染み込んでる。
「懐かしいなぁ」
心の底から、声が出た。
僕は森が懐かしい。
覚えていなくても、そう思う自分に違和感はなくなっていた。
ぽたりと零れた雫で、バルトの服が濡れた。
「あ……いけない。バルトのお洋服なのに」
そう思うのに。
二人で暮らしたあの家の匂いを、僕はめいっぱい吸い込んだ。
「森に、帰りたい」
気付いたら、そう呟いていた。
このお屋敷が嫌なんじゃない。
出て行きたいわけじゃない。
ただ、一度でいいから森に行きたい。
丸太の家や草原を、もう一度感じたいんだ。
「そうだ、森に行こう」
今日なら、行ける。
シュメリとバルトが帰ってくる前に、行って帰ってくればいい。
僕はもう一度、バルトの服の匂いを嗅いだ。
(この匂いを覚えてる)
森の匂い。
バルトの服からする、懐かしい匂い。
これを辿れば、森に帰れる気がする。
立ち上がって、猫魔の姿に戻った。
誰にも見付からないように、こっそりと屋敷を抜け出した。
コメント
1件
ああっ、第33話もう読んだよ〜!!😭💕 リンネちゃんがバルトの部屋で服の匂い嗅いで「森に帰りたい」って呟くシーン、めっちゃ切なくて胸がギュッとしたよ…!懐かしさとか寂しさとか、色んな感情が混ざってる感じが伝わってきた🥺💦 留守の間にこっそり抜け出すって選択、子供っぽい無邪気さとちょっとした背徳感もあってドキドキした!これからどうなるのか気になりすぎる…!✨