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バサッ…
いつも特注のスーツに身を包みカチッときめている萬田くん
そのひとつひとつを脱ぎ捨てていく
いい具合に引き締まった体…
滑らかな肌…
長い腕に浮き出た血管…
顕になった色っぽい姿に自分の鼓動が高鳴るのを感じた…
ん………?
良く見ると萬田くんの体にいくつか大きめの傷跡のようなものがあるのに気付いた
結構大きめの傷跡
なんかあったんかな…
いやでもあんまり詮索するのは良くないか…
「…傷、気になるんやろ?」
私の考えている事を見透かしたかのようにそう聞いてきた萬田くん
「え…?あ…いや、別に…」
「ふ…ほんまにお前分かりやすいなぁ…笑。 気になるんやろ?」
「あ…えっと、傷って触っても痛くない?」
「ははは!痛いわけないやろ!笑」
人の心配をよそに爆笑する萬田くん…
「そんなに笑わんくたって…」
「なんでついた傷か気になるんやろ?」
「べ、別に…」
「気になるって顔に書いてあるぞ」
「………。」バレてる…
「ふっ…笑 しゃあない…教えたる。
肩にある傷はカギの頃、銭のために当たり屋やってた時についた傷、それでこの腕にある傷はそっちの筋の奴に因縁つけられてついた傷、あと腹の傷はまぁ…色々あってちょこっと刺された時についた傷。」
………。
もれなくどれもヘビー級
任侠映画の主人公なのか
情報過多…
「す、すごい波乱万丈を乗り越えた傷跡達やね…」
「無理やり良いように言わんでええ…笑 嫌なもん見せたな」
「そんな事ない!嫌なんかじゃない…だってそれって…それだけ一生懸命生きぬいてきた勲章やろ?」
…………。
その言葉を聞いて萬田くんは私を見つめたまま黙り込んでしまった
「………。」
そして黙ったまま私の腕を縛っていたネクタイを解き始めた
スッ…
「え?解いてくれるん…?
てか…私なんか気に障るような事言ったかな…。」
黙って首を横に振る萬田くん…
なんで喋ってくれなくなったのか全く分からない
ネクタイを解き終えて少し沈黙した後
萬田くんがやっと口を開いた
「さっき…本気でムカついたんや」
「え…?ムカついた…あ…私が萬田くんから借金してる高瀬さんの事匿おうとしたから…」
それもあるかもしれんけどそれより…」
「それより…?」
「お前が…他の男と体の関係持ってるって知らされて…それ聞いた時になんでか抑えられん感情が湧いてきて……ムカついて…」
「それって…」
「醜い嫉妬や…感情のコントロール出来ひんくなってしもたんや。男としても金貸しとしても最低や…痛い思いさせてすまんかったな」
「謝らんといて…!謝られたら…さっきの萬田くんが嘘やったみたいになっちゃうから…」
「嘘…?」
「だって、いつも冷静で感情に流されへん萬田くんが初めて感情むき出しにして私に向き合ってくれたもん…。」
「え…………..」
「それにな…金貸しっていう肩書きの重荷をちょっとは忘れる時間を作れたんかなって思ってなんか嬉しかった…」
………!?
その言葉を聞いてはじめて銀次郎は自分が金貸しという肩書きやプライドを忘れ目の前の桜子に夢中になり執着している自分が居る事に気付いた
今まで頑なに守ってきた金貸しとしてのプライド…自分に課した十字架
自分の過去の傷、弱さ、醜さ…
それを一生懸命生きてきた勲章だと言ってくれる桜子…
何よりも今まで誰に対しても湧いてこなかったこの感情が桜子に夢中になっているという何よりの証拠だった
「あ……な、なんか分かったような事言っちゃってごめ…」
ギュっ……
「ぇ……………!」
気がつくと私は萬田くんの腕の中で思いきり抱きしめられていた
その感覚が守られているようでどこかとても心地よかった…
「ま、萬田くん…?」
「米原…。好きや…」
銀次郎は静かに真剣に桜子の目をみてそう言った。