過去を思い出しています。
休止期間です。これはわたしの妄想です。私自身こんなんじゃなかったのもわかってます。
それでも許すと言う心の広い方だけお読みください。
それはミセスの活動が休止に入り、元貴がソロ活動を始めてしばらくたった時期だった。
元貴はソロ活動を始めるにあたってかなりのイメージチェンジをした。
女性的な濃いメイクやジェンダーレスを意識した髪色や服装。今までの『ミセスの大森元貴』を取り払って本当の自分自身と向き合う作業はきっととてつもない勇気とパワーを必要とするものだったと思う。
その新しい変化を肯定的に受け入れてくれるファンも多かったが、やはり心無い人たちは一定多数いるもので…。
自分自身の目を背けていた一面と真正面から対峙するのは誰しも難しいもので、それを面白おかしく非難されるのはとてもつらく、繊細な元貴を傷つけていた。
そんな時、俺は偶然仕事場で元貴に鉢合わせした。活動休止前は毎日のように顔を合わせていたが、久しぶりに会った元貴はとても不安定にみえた。
「元貴…。大丈夫?」
「何が?」
冷たい返事が返ってくる。
「いや、その、体調…とかさ」
「…別に何も問題ないよ」
その顔には表情がなく、硬い殻に覆われていた。
俺にもこんな態度だなんて。これはけっこうヤバそうだな。 俺は心配でたまらなくなる。
「ねぇ、今日は仕事の後、元貴の家に行ってもいいかな?」
「なんで?」
「えっ、いや…。久しぶりにゆっくり話したいなぁと思ってさ。ダメ?」
理由を問われ、正直に心配だからと言うと怒り出しそうな気がして焦る俺を元貴は無表情にみつめる。
「…いいよ」
小さな声でOKが出されたので、ホッとして仕事が終わってから2人で元貴の家に向かった。
元貴の家は荒れているのに生活感が感じられない。こちらも不思議な状態で、まるで今の元貴の心の中を表しているように見えた。
「もう、こんなに散らかして…。俺、先にちょっと片付けるからね」
まずはキッチンに行って飲み物を探す。
「ほら、これ飲んでちょっとゆっくりしてな」
黙ってソファーに転がる元貴の前にお茶を置いて、俺はまず目についたものをまとめ、紙類はもしかしたら必要かもしれないのでそれ以外をゴミ袋に詰め込んでいく。
ある程度キレイになったので今度は冷蔵庫の中を覗いてみる。
あんまりまともなもの入ってないなぁ。
俺は少し悩んだ後、見つけたコンソメの元とインスタントのトマトソースに冷凍ご飯をぶち込んでリゾットを作る。最後にチーズを乗せて溶ければ完成。
「元貴。もし食欲あるならこれ食べてみて。なかなか美味しそうにできてるでしょ?もし食べれないなら冷蔵庫に入れとくから後から食べてもいいしさ」
元貴の前のテーブルにリゾットを置くと暖かい湯気とトマトのいい匂いがふわりと感じられた。
ゆっくりとした動きで起き上がった元貴は無言のままリゾットに手を伸ばす。
「…美味しい」
食べてくれた事もだが、言葉を発してくれた事にホッとする。
「よかった〜。俺そんなに料理得意じゃないからちょっと心配だったんだよね」
そう言いながら自分の分を一口食べる。うん。悪くないな。
元貴の方を見るとスプーンは止まる事なく全部食べ切ってくれたようだ。
「もっとおかわりいる?」
そう聞くと元貴がフフッと小さく笑う。
「……なんか涼ちゃんお母さんみたい」
元貴が笑ってくれた事が嬉しくて俺もニコニコしてしまう。
「なんだよ、お母さんって。俺は頼れるお兄ちゃんなんだから」
「頼れる?」
「頼りになるの!」
そう言い合って2人顔を見合わせて笑う。
もっくん少しだけ心を開いてくれました。
涼ちゃんがんばれ!
コメント
2件
顔を合わせて笑うとは、、、尊すぎる(///𖦹 ཫ 𖦹 ///)