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「まさにリバティ・トラストは、セミナーのうたい文句通り、彼女の人生を変えてしまったの、あのカリスマペテン師の教祖は巧みに貞子さんの心の中へ入り込んで、彼女の亡きご主人が残した財産を一円残らずせしめたの、実家もふくめ総額1000万を超える額だったわ」
驚いて声が出せない私を見ながら次に弘美さんが言う
「今は貞子さんは亡くなったんだけど、彼女の日記に書いてるのを見ると、まさに見事な手口だったわ、蛇みたいに悪どくて、しかも合法なの、貞子さんが自分から進んで財産をお布施したことになっている」
「そういうことが日記にかいてあったわけ?」
奈々さんが頷いた
「娘さんは貞子さんが亡くなってから、初めてこの事の重大さに気が付いたの、貞子さんは年配の元幹部と出来ていたの、その元幹部は貞子さんより10歳も若いのよ、日記はめくるめくその元幹部とのロマンスの記録があったわ
今その元幹部は横領をしたかなんだかで教団を追放されて行方不明なのよ、連絡が取れないの、貞子さんは愛と信頼の証明に全財産を寄付したのよ」
「そんなあっけなく騙されるなんて・・・・」
「寂しかったのよ」
奈々さんが言う
「かわいそうに・・・」
弘美さんも続く、私はとてもその年配で孤独な貞子さんとやらに同情した
「今その娘さんの案件で、教団相手に訴訟を起こす難しい裁判をしている最中なんだけど――」
「ちょっ・・・ちょっと待って、その貞子さんと娘さんはとてもお気の毒だと思うけど・・・それが私に何の関係があるの?」
少し混乱して私は言った、話の先が見えない、奈々さんが深刻な顔で私に言った
「この訴訟を起こすにあたり、他にも同じような裕福で孤独な女性が教団に多額の寄付をしているんじゃないかと、色々同じような事例を探していたら・・・ちょっとこれを見てほしいの 」
奈々さんがタブレットを右にスワイプした、そこにはリバティ・トラストのホームページが映し出されていた
「右下の信者の体験談という欄を見てみて」
弘美さんも苦虫を噛みつぶしたような顔をして言った
「リバティ・トラスト」の信者さんの体験談だった
その内容はどれも、人間関係や病気などの苦しみからリバティ・トラストの教えに出会って、どれほど幸せになったかと言うものだった
そしてその体験談の一つに信じられないものを発見した
「暴力妻との壮絶な離婚を乗り越えて見えた一筋の光」―体験者田村俊哉さん―(リバティ・トラスト統括地区長)
―田村俊哉―
「俊哉?・・・」
もう嫌な予感しかしなかった