テラーノベル
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人混みを避けるように、イギリスは廊下の端を歩いていた。
手には、いつも持ち歩いている分厚い本。
引退発表から数日。
まだ、どこへ行っても落ち着かない。
🇬🇧「はぁ……」
ため息を着いて本に視線を落とした瞬間
ドンッ
誰かと肩がぶつかった。
「っ……!」
手から本が滑り落ちる。
床に鈍い音を立てて落ちた。
🇫🇷「あ、悪いな」
聞いたことあるような声
その声を聞いた瞬間、背中に嫌な汗が流れる
🇬🇧(……げっ、フランス)
顔を上げる勇気が出ない。
バレるな、バレるな、バレるな。
相手がしゃがみこむ気配。
長い指が、本を拾い上げた。
🇫🇷「これ、お前の?」
差し出された本。
イギリスは、一瞬だけ、呼吸を止めてから、できるだけ、自然に受け取る。
🇬🇧「ありがとな……フランス(ボソッ)」
声、変じゃないか。
顔、見られてないか。
距離近すぎないか。
🇫🇷「……」
🇫🇷「いや、こっちこそ。前見てなかった」
軽い調子の声。
🇬🇧(……気づいてないのか?)
イギリスは、ほんの少しだけ、顔を伏せたまま頷く。
🇬🇧「……じゃあ」
それだけ言って、足早にその場を離れる。
背中に視線を感じる気がして、心臓がうるさい。
角を曲った瞬間────
🇬🇧「はぁ……っ」
思わず、壁に手をついた。
(最悪だ……なんで、今)
<フランス視点>
本を差し出した後、フランスは少しだけ、首を傾げた。
去っていく背中。
くすめの金髪。
聞いたことあるような声。
(……ん?なんだ)
一瞬何かが引っかかった。
でも、すぐに周りのざわめきに意識を戻す。
「フランスー!次の授業行くぞー!」
クラスメイトに呼ばれて、軽く手を上げる。
🇫🇷「今行く!」
歩き出しながら、さっきのことを思い出す。
(本を読んでいたな……)
(あの本どこかで……)
記憶を探るけど、うまく掴めない。
ただ、妙に気になった。
なんとなく、振り返る。
────もう、誰もいない。
🇫🇷「……気のせいか……」
小さく呟いて、前を向く。
でも、胸の奥に、ほんの少しだけ、違和感が残った。
🇫🇷(なんだろうな……)
理由は、分からない。
でも、どこかで、見たような。
どこかで、聞いたような。
そんな、感覚だけが、静かに残っていた。
<イギリスその後>
🇬🇧(バレてないよな……)
心臓がうるさい。
さっきの距離。
声。
目、見られてないか。
イギリスは無意識に髪を触る。
目元を、もっと隠すみたいに。
🇬🇧「……最悪だ」
小さく吐き捨てる。
それだけの接触。
それだけのはずなのに、妙に息が浅い。
フランスは現役アイドル。
しかも公表済み。
────自分とは真逆。
🇬🇧(なんで同じ学校なんだよ……)
教室に戻る前に、1度トイレに入る。
鏡を見る。
長めの前髪。
メガネ。
マスク。
🇬🇧「……ただの、高校生だ」
そう言い聞かせる。
でも、胸の奥がざわつく。
さっき拾った時の指先。
あの一瞬の距離。
(……気づいてない、よな)
確信が持てない。
それが1番、怖い。
イギリスは、深く息を吸って、顔を伏せた。
🇬🇧「……大丈夫だ」
誰に言うでもなく、そう呟いてから何事も無かったみたいな顔で教室に戻った。
教室のドアを開けた瞬間。
🇯🇵「……イギリスさん」
静かな声。
見てみると、席に座ったままの、
日本がこちらを見ていた。
相変わらず、落ち着いた目。
🇯🇵「顔色が、少し……」
🇬🇧「別に……」
即答。
椅子を引いて座る。
前髪を触る。
視線を逸らす。
日本はそれ以上追及しない。
ただ、数秒だけ見つめてから。
🇯🇵「……先程、廊下でフランスさんと、」
心臓がはねる。
🇯🇵「偶然、お見かけしました。」
言い方が柔らかい。
でも。
────見てたのか。
イギリスは、机に肘をつく。
🇬🇧「ただ、ぶつかっただけだ」
🇯🇵「そうですか」
それだけ。
なのに、日本の目は少しだけ鋭い。
🇯🇵「…………声」
🇬🇧「は?」
🇯🇵「いえ。なんでもありません」
日本は微かに、微笑む。
🇯🇵「イギリスさんは、歌がお上手ですね」
空気が止まる。
イギリスは、ゆっくり視線を向ける。
🇬🇧「……何の話だ」
🇯🇵「独り言です 」
日本はそれ以上言わない。
でも。
────気づいている。
全部ではないにしても。
イギリスは小さく舌打ちした。
🇬🇧(最悪だ……)
教室の窓から、グラウンドを見る。
遠くにフランスの姿。
胸奥が、まだざわついた。
数日後…………
次回10♡
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