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萩原なちち
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「……だいきさん。カードに書いてくれたメッセージ、声に出して言ってもらえませんか?」
「ん? いいよ。……俺は、しゅうとの事が大好きです。俺と付き合ってもらえませんか?」
「んふふ、僕も大好きです。喜んでお受けします」
さっきまで泣いていたのに、急に花が咲いたみたいに笑う。しゅうとは、なんだか子供みたいに純粋で、目が離せない。
「しゅうとは? 声に出して言ってくんないの?」
思わずニヤニヤしながら聞いてみたら、「あれは冗談やからな」と一転して真顔で返された。いやいや、俺はもう全身全霊で「いける!」って期待しちゃってるんだけど!
「でも……僕のこと、だいきさんのお部屋に誘ってくれたら、言わんこともないですよ?」
急にそっぽを向いたと思ったら、耳の先まで真っ赤じゃん。なんだよ、全然冗談じゃないんじゃん。
「急に積極的になるの、かわいすぎ……」
たまらなくなって、後ろからぎゅっと抱きしめて耳元で囁く。
「おじさんのくせに気持ち悪いって思われたらどうしよう」なんて不安がよぎって体を離そうとした瞬間、ぐいっと腕を掴まれた。
「僕、このまま背負い投げすることも出来るんですからね? 舐めんといてください」
「……ごめん。黒帯なの、一瞬忘れてたわ」
どちらからともなく笑い合って、自然と指を絡める。
30歳にして初めてできた恋人と、こんなに自然に手を繋いでる。やるじゃん俺!
♢♢♢
ベッドの上。向かい合わせでしゅうとを膝に乗せ、深いキスの途中で、真っ赤な顔をした彼が、恥ずかしそうに視線を落とした。
「……いつ、息していいかわからん」
「鼻でするんだよ。苦しかったら、無理に剥がしていいから」
「そんな!勿体無いこと出来ません!」
「ふふっ、大丈夫、俺はしゅうとだけのもんなんだから」
「……はい」
やけに素直な返事をする彼に、胸の奥がぎゅっとなる。
このしゅうとを知っているのは、世界中で俺だけなんだ。彼を独占しているという実感が、甘い優越感となって全身を駆け巡る。
「しゅうと。……あの手紙、その声で聞かせて?」
「……だいきさぁん、チョコと一緒に……僕も、いかがですか?」
「うわぁ、ズキュンときた!!」
緊張を誤魔化そうと冗談っぽく言ったつもりなのに、しゅうとは蕩けた顔のまま、ひたすらに次のキスを求めてくる。
そっと押し倒して、重なる体温。服の上からでも伝わるしゅうとの鼓動が、俺の胸まで響いてくる。
「……だいきさん。僕、こんな事を知ってしまってどうなるんでしょうか……」
「どうもしないよ? もっと俺の事好きになるだけ」
「……もっとかぁ、それは苦しいなぁ」
そんな、自分だけが恋をしているみたいな悲しい顔しないでよ。しゅうとが思っている以上に、俺だってしゅうとがたまらなく大好きなのに。
「……俺の方が絶対しゅうとのこと好きだよ?」
「……だったら僕はもっとです」
ふふっと目を合わせて笑い合う。
「……じゃあ、俺のことをもっと好きになるように――全部、教えてあげる」
しゅうとの頬を両手で包み込み、ゆっくりと顔を近づける。
「だいきさん……」
「いい? 苦しくなるくらい、俺のことで頭をいっぱいにして」
吐息が触れ合う距離で囁くと、しゅうとの長い睫毛が細かく揺れた。俺の手のひらから伝わる熱が、彼の不安を溶かしていくのがわかる。
これまで隠してきた独占欲も、抑えきれない情熱も、全部。今夜、この場所でしゅうとの心に刻み込んでやる。
重なり合う鼓動が、静かな部屋に二人だけの甘いリズムを刻み始めていた。
チョコレートの甘い香りが残る部屋で、俺たちはゆっくりと、お互いの熱の中に溶けていった。