第21話:夏風の中で
時が流れ、春が過ぎ去り、梅雨も越えた。蒸し暑い夏がやってきた。あの日の約束を胸に、二人は一緒にいることが当たり前のようになった。離れた時間があったからこそ、今のこの瞬間がどれほど特別で大切なのかを、改めて感じる。
「悠斗、今年の花火大会、どんな浴衣にしようかな?」
澪が鏡の前で悩みながら言う。彼女の背後には、まだ選べていない浴衣がいくつも並んでいた。どれも似合うだろうけど、彼女の目がどれを選ぶのか気になって、少しドキドキしてしまう。
「どれも似合うよ、でも、俺は赤いのがいいな」
冗談を交えながら、少し照れくさい笑顔を向けると、澪はクスッと笑った。
「赤かぁ…それもいいね。でも、今日は悠斗の意見を聞いてみたかっただけ」
そう言って、彼女は手を伸ばして、無造作に浴衣を選んだ。
「じゃあ、これにする!」
決まった浴衣を見て、俺は思わず驚く。赤、白、青が絶妙に混じり合った華やかなデザインだった。澪が選んだ浴衣は、まさに俺が思い描いていたものだった。
その後、二人で手をつないで花火大会に向かう道を歩く。夕暮れ時の風は少し涼しく、心地よかった。澪の浴衣が揺れるたびに、その花模様が一層鮮やかに見える。
「花火、楽しみだね。去年は一人だったけど、今年は一緒に見れるって思うと、すごく幸せ」
澪の言葉に、胸が温かくなる。
「俺もだよ、澪。ずっと一緒にいるのが、こんなにも自然だって、驚くよ」
二人で過ごす時間が、どんな小さな瞬間でも、大切でかけがえのないものだと感じていた。
花火が夜空に打ち上げられると、澪は目を輝かせながら空を見上げた。その表情を見て、俺も笑顔になった。これが、本当に望んでいた未来だったんだと思った。
「見て、悠斗! 今年の花火、すごくきれい!」
その声を聞きながら、俺も花火を見上げる。
「うん、澪と一緒に見れて、もっときれいに見えるよ」
言いながら、ふと感じたのは、これからもずっと、この場所で、同じように花火を一緒に見ていけるんだろうなという確信だった。
「これからも、ずっと…一緒に」
花火が爆ぜる音とともに、俺たちの心にも、確かな誓いが響いていた。
澪の手を握りしめ、改めて感じる。これからも二人で、どんな日々も乗り越えて行こう。






