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依頼のあった廃校にやってきた。ここには確かにただ者ならぬ気配がある。ただ、その気配は学校全体を覆っており、どこにその怪異がいるかはわからなかった。
「さて、どうしたものか」
私はとりあえず校舎を一周してみることにした。そして、一階の職員室の前を通り過ぎようとしたとき――
キュイーーン
という音が聞こえた。とっさに音のした方を見ると、そこには一台のカメラがあった。
ただのカメラか、と一瞬思ったが、こんな場所にあるのは不自然だし、何よりこのタイミングで動き出したことは怪し過ぎる。もしかしたらあれが怪異か、とまで考えたところで、
カシャ
という音がした。
まずい、と思ったときにはもう遅かった。どんなとてつもない怪異が現われるのかと警戒していたのだが、まさか普通のカメラの姿をしているとは思わなかった。その不意をつかれた。しかしあんな怪異は見たことがない。今まで相手にしてきたのとは明らかに異質な存在だ。そのカメラは姿を消していた。どこか別の場所に移動したのか?
そして私は、さっきとかわらず廃校にいた。ただし、さっきまで昼だったのに、今学校の外は真っ暗だ。窓の外に見えるのはまるで黒い壁で、単に夜になったというのとはわけが違うだろう。その証拠に、外は暗いのになぜか校内は昼間のように明るい。おそらく、異界に飛ばされたのだろう。現実とは違う別の世界に飛ばされたか、あるいはあのカメラ型の怪異が作り出した世界か……。いずれにせよ、元の世界に戻るにはあの怪異カメラを倒すか、封印しなければならないだろう。
しかし……。人間を異世界に飛ばせるなんて、神話級の能力だ。そんな相手に、私は勝てるのだろうか。不安と恐怖が湧いてくる。だが、負の感情は相手に付け込まれる。今は絶対勝てると信じて行動を起こすしかない。
まず私は、職員室に入り、ロッカーを開けた。何か使えるものはないか……。片っ端から調べていくと、薄汚れたシーツのようなものを見つけた。これは使えるかもしれない。あの怪異カメラは、おそらく写したものをどうこうする能力だろう。ならば、このシーツで姿を隠せば、攻撃をかわせるかもしれない。
さあ、心もとないが準備は出来た。今度はあのカメラを探さないと……。
(続く)