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「今日は有名な心霊スポットである廃墟に来ています。うわぁ、これは、かなりの霊気を感じますね……」
嘘である。俺に霊感などない。当然、霊気など感じるはずがない。だが、俺は霊感があるキャラクターを売りにしてyoutuberをやっている。
結果はまあまあといったところだ。こういうことをやっていると、「ニセモノだ、インチキだ!」と言ってくる奴らは必ずいる。だが別にかまわない。そいつらも結局再生数に貢献してくれるのだから。
そういうわけで、俺のチャンネルはそういうアンチたちと、なんとなく俺がニセモノだとわかった上で楽しんでいるファン、そして一部のガチファンで成り立っている。
ガチファン、というのは、俺を心から霊能者だと信じている連中だ。動画のコメントにも、「私も霊感があるんですが、動画の中ではっきり霊の陰が見えました!」などと書き込んでいる。世の中にはいろんな人がいるものだ。まあ、そいつらのおかげで俺の商売は成り立っているのだから、ありがたいのだが。
そんなある日、チャンネル用の旧ツイッターのアカウントにDMが来ていた。どうやらオカルト系の相談らしい。たいていは無視するのだが、たまにネタになりそうな内容もあるので、馬鹿に出来ない。内容は……。
「私は都内に住む女子なのですが、最近妙な夢を見るんです」
「今までそんな夢なんて見たことなかったのに、今は毎日同じような夢ばかり……」
「私は何かにとりつかれてしまったのでしょうか? よければ相談に乗ってください」
まあ、よくある相談だ。内容も要領を得ない。こういうのは普通なら無視するに限る……のだが。何か引っかかる。見ている夢の内容次第では、何か面白い点かいがあるかもしれない。そう思った俺はDMに対して返信することにした。
「初めまして。メッセージありがとうございます!よかったらお話聞きますよー」
すると、早速返信がきた。
「初めまして! メッセージありがとうございます! お忙しい中、ご対応いただきありがとうございます」
ああ、面倒くさい。さっさと本題に入れよ。イライラしつつも、俺は返信する。
「いえいえ、とんでもないです! ところでどんなお悩みですか?」
「はい……最近変な夢ばかりみるのです……」
「どういう夢ですか?」
「それが……その……え、えっちな夢なんです……」
俺は鼻で笑った。馬鹿馬鹿しい。どうせエロい動画でも見たんだろう。俺は返信した。
「なるほど! それで、具体的にはどのような感じですか?」
「例えば、夢の中でクラスメイトと普通に話してて、ふと気づいたら……自分が裸になっていることに気づいて、あわてる、みたいな感じです」
「なるほど」
エッチな夢というが、それほど強烈にエロいものではないみたいだな。クラスメイトというし、高校生、いや、中学生くらいの女の子だろうか。
「同じ夢を何度も見る感じですか?」
「いえ、内容は毎回違います。他には例えば、お風呂に入っていたら、いきなり窓からクラスの男子が覗いてくる夢とか……」
「ふむふむ」
やはりエッチな夢と言っても軽いものばかりだ。もしかしたら中学生よりももっと下、小学生ということもありえる。そんな子がエッチな夢ばかり見るものだろうか?本当に何かに取り憑かれてしまったのだろうか。
「それに、最近知らない人が近くにいるような感じもして……その人がいつも私の周りにいる感じがするんです」
「なるほど。それじゃあ次は、部屋の写真を撮って送ることはできるかな? もしかしたら何かヒントがあるかも」
「はい、わかりました」
そう言って送られてきた画像の一部がこれだ。
……しかし、これは一体なんだ? 写真の中で、寝ている女の子の背後に異様な触手が蠢いている。合成写真か? 特に何の説明もなく送られてきたが……。
「ええっと、順番に確認したいんですが。まず、寝ている女の子が君かな?」
「はい」
「じゃあ、この写真はどうやって撮ったの?」
「前にお母さんが撮った写真を送りました。その写真が一番部屋の様子が分かるかなって思って」
写真を見るかぎりやはり小学生くらいの女の子だ。自分の顔が写っているがいいのか、なんてことも思うが、それよりもなによりも気になるものがある。この触手はいったい……。
「それで、この……写っているのはなんですか?」
「どれですか? なにか変なものがうつってますか!?」
どういうことだ、この触手に気づいていない……? 俺にしか見えていないということなのか? そんなことがあるのか?
「ええっと、お母さんがこの写真を撮ったといっていたけど、お母さんも何も言ってなかった?」
「いえ、なにも……」
やはり母親にも何も見えていないのか? それとも、俺がおかしくなってしまったのか……。
「やっぱり、変なものが写ってますか?」
(続く)