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地球へ向けてゲートを潜ったプラネット号は、ハイパーレーンに入った。これから到着までの7日間は極彩色の空間を旅することになる。正直目が痛くなるから、余程の事が無い限りブリッジには近寄らず居住区で過ごすことになる。

残念ながらラーナ星系での救出作戦で積み込んでいた地球の食べ物は粗方消費してしまった。それにエナジーカートリッジも全部使ったから調理マシンを使うことは出来ない。一本100万クレジットだから、そう簡単には買えない。

いや、地球産の食べ物があれば買う必要はないから今後は使わないかもしれないけど。

で、この結果私達はどうなるかと言えば。

「これしかないんだよねぇ」

そう、無味無臭の栄養スティックだ。本来これが私達の主食なんだけど、地球の食べ物を知ってしまった人には中々辛い試練だ。7日間は我慢するしかないかと諦めていたんだけど。

「ティナ、朝食にしましょう?今回はバター?を使って焼いてみたんです」

「わっ!美味しそう!」

予想外だったのは、フェルがこっそりアードの海産物と調味料を持ち込んでいたことだった。

私が地球から持ち帰った物の中には料理の本もあった。食べ物を交易の品にするなら料理の本も役立つかなと思ったんだけど、そもそもアード人の大半は料理をしない。

調理ドロイドに任せるか、栄養スティックを食べるだけ。日常的に手料理を振る舞ってくれたお母さんが珍しいだけだ。

その本をアリアが翻訳したらしくて、それをもとにフェルがコッソリ料理の練習をしていたらしい。地球から貰った調味料はたくさんあるしね。

アードの魚介類で地球の魚介類に似た生き物を探して色々研究したんだって。

いつの間に……。

「ティナがお仕事をしている間、ティアンナさんから材料と調理場を提供して貰いまして」

「流石お母さん、抜かりがない」

塩焼き以外の料理にお母さんが関心を示すのは間違いない。そして学ぼうとする姿勢を見せる人をお母さんは放っておかない。そんな人だ。いつの間にかプラネット号に調理場が追加されてたし。

まっ、お陰でフェルの手料理を堪能できるんだけどね。

「美味しい!」

「良かった……」

今回フェルが作ってくれたのは、シンプルに白身魚のバター焼きだ。アードの魚は地球に比べて味も薄いんだけど、バターの香ばしい香りが食欲をそそらせる。

私の向かいに座ったフェルも私の感想を聞いてほっとしてる。いや、たった数日でこの腕前だ。前々から思ってたけど、フェルは間違いなく天才型だよ。呑み込みが早すぎる。チートだよ。可愛いから良いけど。

「あっ、ティナ。汚していますよ。ほら、動かないで」

「んむっ」

夢中で食べてたら、口許を汚してしまったみたいだ。向かいに座ってるフェルからハンカチで拭いて貰った。

ううむ、見た目からしてハタから見れば妹を甲斐甲斐しくお世話するお姉さんにしか見えないんだろうなぁ。

これでも中身は中年のサラリーマンなんだけど、どうしても見た目に精神が引っ張られてる。最近は特に抵抗もしなくなったけどさ。

さて、この7日間は正直暇なんだよね。不測の事態が起きない限りは自由な時間だ。

フェルの手料理を楽しんで洗い物はドロイドに任せたら一気に暇になる。そんな時は、談話室のソファーでまったりしながらホロムービーを見るのが定番だ。

フェルはリーフ人らしく足が圧迫されるのを極端に嫌う。出来るだけ素足で過ごしたいみたいだ。だから談話室の床には地球で貰った明らかに高級な絨毯を敷いて、文字通りまったりできる空間を作り上げた。流石に土足で歩き回る場所を素足で歩かせるわけにはいかないしね。油断するとペタペタ歩いてるけど。飛ぼうよ。

そして用意したのはソファー。アードの特別製で、背中を預けても翼が痛まない素敵仕様。原理?良く分からないけど、とにかく柔らかい。ただ、座る時は翼を目一杯広げるのがコツかな。下手に畳むと押し潰されて痛むからね。

ホロムービーは地球の映画やドキュメンタリーが中心かな。地球の文化を親しみたいと言うフェルの願いだ。完全な翻訳吹き替え付き。

アリアが地球の声優達のデータを調査して精巧に再現してある。違和感が全く無いのが凄い。

さて、このまったりタイムだけど問題もある。いや、ちょっとした不満かな。

私の身長は地球の単位だと150cm前後。ハッキリ言ってかなり小柄だ。まだまだ成長期だけど期待は薄い。アード人は女性でも平均で170cmはあるしね。

対するフェルは170cm、高身長だ。お母さんと同じくらいはある。ちなみにリーフ人の平均身長は男性でも160cmだから、種族的にもかなり大柄だ。

で、身長に差があるとどうなるか。ソファーに座ったフェルの膝の上に私が座り、後ろからぎゅっと抱きしめられてる。いや、フェルは良い匂いがするし色々柔らかいから役得ではあるんだけど、私はぬいぐるみかな?夜も抱き枕みたいな扱いだし。いや、不満はないけどさ。

「こうして見ると、地球の生き物はたくさんの種類が居るんですね」

「多様性だからねぇ」

環境的に生物の種類はアードより地球の方が多い。陸地が多さが違うからね。陸生生物は明らかに地球の方が多い。

「氷の大地……ー!」

「あっ、ペンギンだ」

なんとも言えない愛らしさがあるよね。

「かっ、可愛い!」

「むぎゅっ!?」

愛らしさに興奮したフェルが思いっきり私を抱きしめた。いや、柔らかいけどフェルはこう見えて力が強いから……むぐぐっ!

『マスターフェル、ティナが窒息してしまいます』

「あっ!ごめんなさいティナ!」

アリアの突っ込みでフェルが力を抜いてくれた。ふふっ、天国と地獄の狭間を反復横飛びした気分だよ。

「良いよ、ペンギンが可愛いのは分かるからね」

なんで地球の生き物は可愛らしいのが多いのかな?アード?主に海洋生物になるけど、凶悪な姿をしてるのが大半だよ。巨大な生物も山ほど居るし。

ワン◯ースの海◯類みたいな巨大生物を遠目に見たときは笑っちゃったけど。

けどまあ、こんなのんびりした時間を過ごすのも好きだよ。地球にたどり着いたら、何だかんだで忙しくなるだろうしね。

「ふーっ……」

「うひゃあっ!?ちょっとフェル!くすぐったいよっ!」

「ふふっ、ティナ可愛い……」

「あっ!やぁっ!首に噛み付かないで!ちょっと……あっ…!!」

『この先は検閲対象となります』

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