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やばい、瀬南くんの顔が見れない…それに瀬南くんもあれ以降、何も話さなくなってしまった。ど、どうしよう。頭の中ぐちゃぐちゃなんだけど何で?待って何で私今こんなにテンパってるんだ?
えっと、さっき何の話してたんだっけ?
あ、たしか…
「私、素直になれるようにするね!」
「…五十嵐は素直だとは思うよ。他人事が絡むと断れない性質なだけ」
「じゃあ、断れる人間になる!」
「まぁすぐには無理だろうけど頑張って。自分のこと優先できるようになりなよ」
よかった、会話出来てる…変な動悸もなくなったし、もう大丈夫かも。
「自分優先!自分優先…自分、優先…できるかな」
「は?気持ち折れるの早すぎでしょ」
「だって、断ったら相手が嫌な気持ちになるかもしれないんだよ?」
「それが余計な考えなんだってば」
「出来る気しない…」
「さっきのは自分の気持ち、優先出来てたんじゃないの」
「さっき?」
首を傾げて尋ねると瀬南くんはバッグの紐をツンと指で示しながら口を動かす。
「僕が五十嵐に合わせず歩いてたら紐掴んできたでしょ」
「あの時?」
「かなり強く引っ張られたし’歩くの早い’じゃなく’置いていかれたくない’って言ってたから、あれは自分の気持ちなんじゃないの」
「それは、瀬南くん相手だから言えたのかも」
「僕?」
「ほら、元々遠慮しなくていいって言ってくれてたから、置いてかないでって素直に自分の気持ちを言えたんだと思う」
「限られた人にしか自分の気持ちを言えないってどうかと思うけど」
「ほら、瀬南くんは特別な友達だから」
「…保護者の間違いでしょ」
普通に話してるだけ、ただそれだけなのに落ち着く。瀬南くんは不思議な人だ。
あっという間に駅に着いてしまった。瀬南くんといると時間が過ぎるのが早いな…
「もうバイバイかぁ、早いなぁ」
「やっとバイバイかぁ、遅かったな」
「え!瀬南くん、早くバイバイしたかったの?! 」
「ふふっ…そんな顔しなくてもいいのに」
あれ、瀬南くんのこんなふうに笑った顔、初めて見たかも…
「早くバイバイしたいってことは、一緒にいるの嫌だったのかなって」
「さぁね」
「え~…嫌だったの?」
「眉間に皺寄せて口尖らせてると不細工になるよ?」
「も、元から不細工ですからっ!」
「ふーん?僕、そうは思ったことないけど」
「えっ」
え?不細工とは思ったことないって……いやいや、意地悪な顔してるから、絶対からかって言ってる言葉だって!!!!
「分かりやすい顔」
「よく言われる」
「まぁ僕は保護者だから、保護対象である君のことは見守っててあげるよ」
それって瀬南くんは私と一緒にいるの嫌じゃないってこと?
「じゃあ、見守っててください」
「ん、見守っててあげるから早く改札通りなよ」
「またメッセージ送るね?」
「好きにしていいから」
「ありがとう、また明日!」
「また明日」
手を振ってから改札を通り抜けて後ろを向くと、こちらを見てくれている瀬南くんは’早く行きなよ’って私が乗る電車のホームに続く階段を指で示す。
嬉しくなって、もう一度手を振ってから今度は振り返らずにホームへの階段へ足を向けた。