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彼女は、それに驚いた様子を見せると手にしていた花を口元へ寄せて言った。
「ダメよ、私もこのお花たちと話し合ってからじゃないと伝えられないよ」
チタニーは、私たちがしたことと全く同じ事を目の前でやってみせた。真似事。子供が親の真似をするのと同じような鏡の跳ね返りに、私たちは言葉を失ってしまった。
彼女は不思議な子供だ。年齢にそぐわないその言動に、毎度ながら私たちは戸惑いを隠せないでいた。
「彼女はやはり一筋縄ではいかないものね}
「私たちが子供に触れてこなかったのもあるかもしれないね」
「そうかしら。前の集落でも子供との関わりはゼロじゃなかったわ。この子が特殊なのよ」
「待って、そんな言い方はよくないと思わないかい」
私は、ティニの区別の仕方に少しばかり言葉が強くなってしまった。
「リエン。貴方も私と同じことを思っているはずよ。この子は、不思議な子だって」
ティニは、私の心を見透かしたように言う。
「わざわざ言葉にする必要はあるのかな」
「ええ、つまり貴方も私と同じことを言いたいわけよ」
彼女はなぜか、鼻につくような言い方をする。ティ二は腹が立っているのかもしれない。私は、これ以上彼女を刺激しないように、その場を去ろうとした。
「待って、ついて行く」
チタニーは私の手を握ってくる。私は驚いて、彼女を見つめるとチタニーは行き先を指した。
「あっち行こう。移動したくなったの」
彼女がわざわざ移動という言葉を選んだのが、意図的なのか、偶然なのか。私が答えを出す前に、彼女は私の手を引いて行く。
「やっぱり、あの子は変わっているわ」
そんなティニの呟きは、花園に吹く風の音にかき消された。
私たちは花園の隅に聳える塔へ向かった。塔の裏にひっそり隠れている小さな建物は、教会だ。元々ただの廃墟の塔であったものを、神父さまが教会にしたのだとか。
チタニーは私たちが集落を移動してから出会った。教会に預けられていたチタニーは、既にいない親を待っているのだと言う。今となっては父親も同然の神父さまから、その話を聞かされていた。
「移動する理由が分かった。きっとコリエンヌ、貴方もこういう気持ちだったのでしょう?」
彼女は、私の手を引きながら話す。教会へ道なりに進んでいる途中だった。
「どういう気持ちかな…。確かに、彼女の言い方は良くなかった。でも、悪気があったわけでもないんだ」
「じゃあ、ティニールはどんな気持ちで言ったのかしら」