テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
その後4人で集会場に行って、アライアさんの腕章を緑色に変更して、一応ということでシーツと下着も受け取って。
あとついでということで、部屋も俺たちと同じ家の空いている部屋へと移動した。
なおアライアさんは収納魔法を使えるし、大型の自在収納袋も持っている。
だからシーツや下着を、俺が収納する必要はない。
「魔法はともかく、自在収納袋は便利なのニャ。買うととんでもない値段がしそうニャけれど、幾らしたのかニャ」
自在収納袋は、技術的には前世の世界でも作製可能なものではあった。
しかし一般的に使用可能な神力や魔力では、実用的な収納量と収納期間を確保できない。
アライアさんが使った様な魔力駆動車を収納可能なものなら、最低でも地竜クラスの魔石が複数必要だろう。
だから自在収納袋は、高価かつ特殊なものとされていた。
きっとこの世界でも同じだろう。
技術水準は同じくらいに見えるから。
「ギルド職員になる前、探索専門冒険者だった頃にフィーギの遺跡で手に入れた。自在収納袋も魔力駆動車も」
「それくらい高価そうなものが手に入るのニャら、ギルド職員にならなくても充分生活が出来ると思うのニャ」
なるほど、古代の遺物ということか。
それなら納得出来る。
でも遺跡だろうと、そんなものが簡単に手に入るとは思わない。
「フィーギの遺跡で私が行き来可能な階層は、全部回った。これ以上稼げる遺物は、おそらく出ない。だから諦めてギルド職員になった」
「他の遺跡に行こうと思わなかったんですか?」
「大規模遺跡の中では、探索可能になったのが一番新しいのがフィーギ。他の古い大規模遺跡は既に探索され尽くして、遺物が残っていない。新たな大規模遺跡が探索可能にならない限りは、遺物発見だけで暮らすのは不可能」
なるほど。
とすると、ひょっとして……
「大規模遺跡そのものは、探索可能なものの他にも存在する。でもほとんどは、魔物の異常発生によって探索出来ない。この祭りの後に依頼で行く予定の、サクサダ山渓もそんな遺跡のひとつ」
「アライアの目的は、サクサダ山渓の遺跡なのかニャ」
「今回はそう。ただ他にも狙っている遺跡は幾つか」
なるほど。
これでアライアさんが、今回の依頼で飛んできた理由がだいたい想像できた。
『モリガン関係の依頼と聞けば、彼女なら間違いなく引き受けてくれるでしょう』
クリスタさんが、そう言った意味も。
つまりは……
「アレによって探索できなくなっている遺跡、ということかニャ」
ミーニャさんも、俺と同じ様に考えた様だ。
アライアさんは頷く。
「そう。私は本来、探索による遺物の発掘と、発掘した遺物の研究が専門の冒険者」
つまりモリオンによって探索できなくなっている遺跡の開放と、その遺跡の探索によって遺物を発見すること。
そして発見した遺物を研究すること。
それがアライアさんの目的らしい。
しかし探索だけでなく、遺物の研究も専門としていたのか。
なら技術的に参考になる物を持っていたり、俺の知らない知見があったりする可能性がある。
その辺り、じっくり話してみたいものだ。
まずは自在収納袋と、魔力駆動車の解析から。
「了解ニャ。さて、それはそれとして、そろそろ前夜祭に並んだほうがいいのにゃ。料理を取るのは先着順ニャ。早めの順番で魚を思い切り取って食べまくるニャ」
言われてみると、確かにそろそろ、そんな時間だ。
「あの幻の魚も出る?」
「インガンダ・ルマは明日の10時からニャ。でもそれ以外の魚料理も美味しいのニャ。それに料理そのものは、前夜祭が一番量が多く出るのニャ。だから遠慮せず、食べまくっておくのニャ」
疑問に思ったので、聞いてみる。
「何で前夜祭が、一番量が多いんですか?」
「溜まったものを押し流すために、まずは詰めまくるのニャ。その後にインガンダ・ルマの脂で一気に流せば、胃腸も快調になるのニャ」
ああ、またちょっとビロウでアバウトなニセ健康法的伝統が……
聞いたのは俺だから、誰のせいにも出来ないけれど。
「料理が多い、了解。当方に迎撃の用意あり」
そしてアライアさんが、何か危険なことを言ったような気がする。
まあ問題ないとは思うけれど。
多分……
◇◇◇
前夜祭と言っても、開始の挨拶のようなものは何もない。
ただ、
① 集会所前の広場に50組以上のテーブルが展開され
② 集会所前に料理を置く大テーブルが設置され
③ そこに料理が並べられて
④ 開始時間に取ることが出来る様になる
だけのようだ。
少し早めに行ったおかげか、料理へと並ぶ列の前から10人目を確保出来た。
そしてそこから見る料理やその関係のスペースは、なかなか壮観だ。
並べられた料理は、何種類といえばいいのだろう。
例えばカルパッチョとまとめれば1種類だけれど、刺身になった魚の種類と肉の部位、更にかかったソースの種類を含めると、十種類を超えるだろう。
そんな感じで塩味の焼魚、甘辛の焼魚、フライ、煮物と調理法違いの各種料理が並んでいるわけだ。
更には追加ソースとか、付け合わせるサラダとか、薄く切ったパンとか、白いご飯とかまで。
どれも大食いの猫獸人でも食べ尽くさないよう、巨大な銀皿や大きな寸胴鍋、樽などで提供されている。
もちろんこの銀皿は、一般的な皿という概念の代物ではない。
というか一辺が1m近い正方形、深さも15センチ程度はある料理を入れる容器は、皿と呼んでいいのだろうか。
こんな皿に山積みにしたら、食味が落ちそうだ。
そう思ったら、皿に時間停滞の付加魔法がかかっているのに気づいた。
つまりはどう盛っていようと、物そのものは出来たて状態。
祭りの食事は、ここからバイキング形式で各自が取っていく形式だ。
そして取皿というかトレイも強烈。
幅1m、奥行き60cm程度の大きさで、小分けに出来る仕切りが20列に、汁物や飲み物用のマグカップ3個がついているという代物。
大きくて重くて、ただ手で持って運ぶのは猫獣人であっても困難な様で、首にかけて安定させる紐がついている。
なお普通サイズの取皿とかトレイも、一応はある。
いや普通サイズよりはごついか、こっちも。
カップ2個を載せるスペースがついているし、トレーそのものも深めで量が入るようになっているしで。
これに料理やスープ、ドリンクを入れて、腕力で持ち歩くのは辛そうだ。
猫獣人と比べて腕力に劣る普人では、きっと。
ということで、俺はこそっとジョンに尋ねる。
「腕力強化の魔法、必要か?」
「頼む。これじゃ料理を取って持ち歩けない」
コメント
1件
お疲れさま!第97話、読み終えたわ。アライアさんの背景が明らかになって、遺跡探索と研究が専門だったっていうのが納得できたな。前夜祭の準備と、あの巨大トレイの描写がめっちゃリアルで笑ったわ。腕力強化の魔法が必要なレベルってどんな祭りやねん!料理の種類と量の壮観さも伝わってきて、実際に並んでる気分になった。次回の祭り本番も楽しみにしてる🔥
31
#魔道具職人
こはる
357
bouton
896