テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「雪、ですか」
東京では珍しく雪が降っていた。通りで今日は肌寒いと思った。
「珍しいねぇ」
そう隣りで呟いたのは仕事を溜め込んで大忙しの自業自得男、風楽奏斗。一応この学校の生徒会長なのだが。
「では私は帰りますね」
「はぁ!?僕を置いてく気!?」
「はい」
ギャーギャーと赤ん坊のように喚く奏斗を細目で軽蔑しながら生徒会室を去る。靴を履き、学校の外へと出ると珍しい雪に興奮する小学生たちが見られ、寒いのが嫌いなのかとても憂鬱そうな大人たちがいた。
「うぅ、寒い」
私ももう高校生だ。雪ごときで興奮するような人間ではない。凍え死にそうになりながら歩いていると小さな公園で母と思われる女と小学1年生位の男の子が見えた。
「お母さんッ!」
「あんたなんてもう要らないわ」
あぁ、可哀想な子供だ。親に捨てられた悲しみは私には知らないが、心に穴が空いた。なんて生ぬるい感情ではなさそうだ。
「おかあ、さん」
ドクンッ。
心臓が耳の隣にあるかのように心臓の鼓動の音が大きく聞こえる。その子供から目が離せない。私のものにたい。
「ぁ、ぇと」
気づけば私はその子供の目の前にいた。
「あんた、だれ」
その子供は私に冷たい視線を向けた。少しボサボサなピンクブロンドの髪から覗く赤と青の夕焼けの瞳は余計に私を奮い立たせた。
「私は四季凪アキラと申します。私の家に来ませんか?」
「は?」
遠目で見ると小学1年生に見えたが端々から見える言葉遣いを見ると小学5、6年にも見える。
「私、あなたに恋したみたいです」
抑えきれない欲望と底しれぬ愛情という名の独占欲。
「おれは、セラフ。あんたについてくよ」
私より一回り小さい手が私の手を掴む。その手は小さく震えていて。寒かったよな、雪が降っている公園で親に捨てられた悲しさもあいまって。
「私が、温めてあげますね」
私は彼を抱きしめながら家まで歩く。子供体温なのかどうもセラフは温かかった。
「その、なんて呼んでほしいですか?」
「べつに、セラフでもセラでもなんでもいいけど」
なんだか本名をそのまま言うのは味気ないしだからといって変にあだ名もつけたくないなぁ。そう悩んでいたところだった。
「せらおはどぉ?」
「セラ夫、、」
私の腕の中で温かさを感じているセラフは目をつぶりながら提案してきた。
「いいですね、セラ夫。使わせていただきます」
「ん、ぅ」
セラ夫は眠ってしまった。その寝顔がかわいくて、私はセラ夫を守ると誓う。
「貴方は私のものですよ」
小学生に向ける愛にしては汚くて重くてねっとりしすぎているだろう。でもいい、それでもいいじゃないか。
「これが一目惚れかぁ」
こんな汚い愛を貴方には見せないよ。貴方には夢以外見せない。都合のいい幻想と楽園を見せてあげる。だからずっと隣にいてよ。