「……ははあ、兄ちゃん、『くれないさん』にしてやられたな」
普段は絶対に近づかない、公園の片隅にあるビニールテントの群れに赴き、そこにいたジジイに話しかけたらそう返され、歯の無い口でカカカと笑われた。
「『くれないさん』?」
「都市伝説の一つさ」
ジジイ曰く、くれないさんとは……
・道ゆく人に声を掛け、金銭などを要求する。
・要求されたものを大人しく渡せば引き下がり、反抗すると「時間」を盗られる。
・時間を盗まれた場合、止まった時間の中でくれないさんを探して取引を続行させなければ、永遠に時間は止まったまま。
「まあ、その都市伝説のおかげで『募金活動』もやりやすくて敵わないからワシ達にとっちゃ『くれないさん』様々さ」
こちらの状況などお構いなしに、伸び切った顎髭を撫でながらまたカカッと笑うジジイ。
殴り飛ばしてやりたいが、俺だけの時が止まってる中捕まって、勾留期限のない拘置所生活を強制されるなど溜まったものではない。
ジジイに適当にお礼を言い、おっさん探しを再開させよう。
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