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第37話
「母上。父上。ロルフが……」
そこまでニコラさんが言って僕がノックをして部屋へ入るとキャサリン様とジェイミー様が目をキリッと開いた。二人とも、三十歳後半くらいに見えるが、実際は八十代だ。
「勇者様。生きてたのね」「良かった……貴方だけでも生きていて……」
……剣術と身体能力以外、普通の鈍い人だけど……いや、三十歳にもなってこれは無いか。何かと言うと童顔の背の低くて色々と鈍い人か。
僕は二人に向かって片膝をついた。
「お陰様です。アニカ姫も僕の妹も今は戦っています。その報告と修行のために訪れました」
「そうか。それにしても、背が伸びたように見えるな」
「華奢な体格なのは変わりませんが、あれから少しは背も伸びましたね」
「でも、普通のホルム人だろう。なぜそのような姿なのだ?」
僕はあの日にあった事を全てを話した。
「……それで、色々な地をまわってここへ着いたのです」
「そんな事もあり得るのだな……」
……僕だって信じたく無いですよ。一生懸命、二人が戦ってる間、ずっと眠ってたなんて……
「それで、勇者様はここまで……」
「えぇ。守れなかった者の責めてでもの償いです。ロザンナの事も守れず、力不足でした」
そう言って僕は肩膝をつきながら頭を下げた。
「頭を上げてください。ロザンナは守るために旅立ったのです。子供が自分を守るためにと泣きついてきたのです」
ロザンナが……
僕も、だもんな……人の事言えないや。
でも、馬鹿にしても、笑っても、何でもいいから皆、最後に何か言ってほしかったな。
でも、十五年も前に逝ってしまったのにこんな事考えてて誂われるな……
「その命を無駄にしないように、剣を振るってきます。もしもの事に備えておいていてください。また、大災厄が復活するかもしれません」
「今日中に立つのか?」
「はい」
「必ず、無事に、倒すのだぞ。そして、姫様と光の子を助ける。セルフを代表して頼む」
「はっ」
僕はそう言って頭を下げてからこの部屋を出た。
「ロルフ。立つって……」
ニコラさんが外で素振りをしていた僕の背中に話しかけた。
「皆の頑張りを託されたんです。水の泡にするわけにはいかないので、昼頃立ちます。必ず会いに来ますからそこは安心して下さい」
「ロルフに言われたって、できないよ。でも、頑張ってきて。そして、無事に帰ってきて」
「はい」
僕は振り返ってからそう笑顔で言った。
「もうそろそろ出ます。ありがとうございました」
「えぇ」
僕は馬に跨がってからセルフを出た。
その日の夜に近くの小さな集落で身支度を済ませて、明日に備えて休んだ。
……アニカ。ソフィー。待たせてごめん。
謝っても、謝っても、許されない。それは重々承知の上なんだ。
だから、何も褒美はいらない。これは償い。
僕は色々と回っていた考えを振り払って深い眠りについた。
次の日。
僕は早くに目が覚めた。いつもは朝日の光がみええいるのに今日は全く見えない。
駄目だ。もう寝られない。十分に寝かしてもらったし……
僕は荷物を持って、代金を置いてから馬を起こした。
馬は感じ取るのが上手いのか、ピシッとたった。
僕は大丈夫となだめてから走らせた。
この子には後で、褒めないとな。
僕は馬を落ち着かせるように頭を撫でながら、馬に乗り慣れている僕でも振り落とされる寸前くらいの速さで黒いモヤに向かって走らせた。
僕が馬を安全な所に避難させてからモヤがある場所に着いた時、ソフィーの声が聞こえた。
『お兄ちゃん……もう、限界はとっくに過ぎてる……だから……託すね』
そう言う声が聞こえた。
ソ、ソフィー……? 無事だよね……
僕が無駄足を……
駄目だ。そんな弱音を吐いていられない。
僕が剣を構えた瞬間、まばゆい光に包まれるのと同時に黒いモヤが僕の体を覆った。
なんだコレッ……苦しい……
僕はモヤに覆われて圧迫されている。息が苦しい。
クソっ……僕が力を使えたら……
僕はなんとか黒いモヤを切り裂いた。
空は黒い雲に覆われ、朝日は見えない。
肩で息をしながら黒いモヤの姿を見ると黒い龍が立ちはだかっていた。翼は大きく、黒い瞳からは僕に対しての敵意が溢れ出している。
その足元でアニカが倒れていた。
僕はアニカを抱き抱えてから近くに寝かせた。
絶対に守る。二人の事はそう決めたんだから……
僕は息を整えてから剣を黒龍に向かって全力で振るった。
遠慮など無い、憎しみと、やるせなかった今までの気持ちの分上乗せされている。
だけど、黒龍も一筋縄ではいかない。直ぐにはじかれるし、魔法も強力。当たったら即死だろう。
僕はこの命……いや、アニカとソフィーを無事に連れて帰る。それは約束したばかりじゃん……
僕は深呼吸を一つしてからまた、剣を振るい始めた。
コメント
1件
ああ、第38話読んだわ! ロルフが両親の元を訪ねてからの流れ、すごく良かった。特に「これは償い」って台詞にグッときたな…自分の弱さを認めつつも前に進もうとする姿勢が、めっちゃ主人公してる。 最後の黒龍との対峙、ソフィーの声が聞こえたところで鳥肌立ったよ。あの絶望感の中でも「絶対に守る」って決意するロルフ、かっこよすぎる🔥 続きが気になりすぎる!