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十五
ホイッスルが鳴った。7番がボールを小突き、9番が受けた。その瞬間、天馬は全力で駆け上がり始めた。
9番はレオンに落とした。レオン、ダイレクトで大きく蹴り込んだ。
落下地点へと天馬が走る。やがてボールは落ちてきて、天馬は腿で止めた。その前にはモンドラゴンが立ち塞がった。
「何度やっても同じだ! お前は俺には勝てん!」モンドラゴンの冷酷な断言が天馬の鼓膜を揺らす。
(自身マンマンっすね。だけどなんか今のオレは、相手が誰でも負ける気がしないんす!)
心の中で天馬は吠えた。モンドラゴンと対峙して、抜き去るイマジネーションを膨らます。
天馬は左足をバックスイングした。ブロックすべく、モンドラゴンが左足を出す。
(かかった!)歓喜した天馬は、左足を空振った。そのまま左半身でモンドラゴンを制し、軸にした右足の爪先でボールを掬う。
モンドラゴンを抜いた。右で着地し、天馬はスピード・アップ。ボールに追いつき一度突いて、右足を振り被る。
ボールを捉えた。だがモンドラゴンの足が伸びた。天馬のシュートは上にコースを変えて、ゴール上方に飛び去っていく。
「くあー、惜しい! もうちょいだったのに!」天馬は思うがままに声を張り上げた。コーナー・キックを蹴るべく、ボールに走り寄る。
モンドラゴンの顔が一瞬視界に入った。考え込むような難しい面持ちをしていた。
十六
スコアは〇対一のまま試合は進んだ。神白は前半同様、スイーパー(ディフェンスの最後尾の選手)とキーパーの中間のような動きをしていた。
十分が経った。敵のゴール・キックになり、キーパーは近くの4番に転がした。
その後、ルアレはゆっくりとボールを回し、左サイドハーフの7番に渡った。少し方にはオルフィノがいるが、アリウムがしっかりマークしている。
7番はちょんっとボールを出し、右斜め前に蹴った。「遼河!」神白が叫ぶと同時、暁が地を蹴る。数歩行ってから滑り込み、パスのボールを奪った。
刹那、再び神白の脳裏に閃きが走る。全力ダッシュで暁と平衡の位置まで達し、ボールを要求する。
暁は即座に立ち上がり、神白にパスした。神白は左足内側で止めた。すぐに敵5番が寄せてくる。
一瞬溜めて、神白は右前に出した。走り込んだレオンが受けて、シュート・モーションに入る。神白の攻撃参加により生じた数的優位で、フリーだった。
轟音を上げてシュートは飛んだ。しかしキーパーは弾き、カンッ! クロスバーに当たって大きく跳ね返った。
ルアレ5番が胸で止めた。ツータッチ目で前を向き、右を走る6番に出した。
6番はトラップし、ヴァルサのゴールを一瞥した。ちょんっとボールを前に出すと、助走を取り始める。神白のいないゴールにロングシュートを撃つ気である。
(やばい!)即断した神白は疾走を開始した。
暁が駆けた。6番を妨害すべく、左足を伸ばす。
6番が蹴った。だが暁の足に当たった。ボールは右方に軌道を変えて、タッチラインを割った。
「悪い、遼河! 助かったよ」神白はダッシュでゴール方向に引きつつ、思いきり暁に謝意を示した。暁は歯を見せて笑い、ガッツポーズを決めた。