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時は、大正。
明治維新が起きた後から一気に異国文化が
人々に馴染み始め
着物を着ている人もいるが
洋服を着てる人多く見られるようになったり
外国から取り入れたパン屋や
アクセサリーショップが並ぶ異国文化漂うハイカラな街並み。
その一角に建物は古いが連日行列が出来るほど人気の甘味処があった。
私のひいおじいちゃんが始めた、
『甘味処 とき』
とき、という名前はひいおばあちゃんの名前だ。
当時、自身の妻の名前を店の名前にするなんてとバカにされたそうだがひいおじいちゃんはひいおばあちゃんと2人で『甘味処 とき』を立派なものにした。
なんせ、お米をこして、丸め、あんこやきな粉をつけて食べる『おはぎ』は私のひいおじいちゃんが考えたとか!!
そんな、『甘味処 とき』で働く
ひ孫の私。
小豆沢 実季 (あずさわ みき)
今年で二十一になる年だ。
一応このお店の看板娘だ。
「実季ちゃ~ん、注文お願い」
『はい!ただいま!』
「実季ちゃん!また可愛くなった?」
『ふふ、三郎おじちゃんはいつもお上手ですね』
「ほんとのことだよ~ははは」
お店に来てくれる人はこの街に住んでる常連客ばかりで私を小さな頃から知ってる。
だからこうやってフレンドリーに話しかけてくれる。
「実季~!3卓にこれ持っていってくれ」
『は~い!』
そう言われ私は手際よく3卓に注文の品のおはぎをテーブルに置く。
「実季ちゃんはよく動くねぇ、べっぴんさんだしねぇ、うちの孫の嫁に来ないかい?」
『ふふふ、ありがとう文子おばあちゃん
でも私はまだ嫁入りはしたくないのっ
なんだってパパが悲しむでしょ?』
「あはは!そうだったねぇ!」
このお店はパパと2人できりもりしてる。
母親の顔は知らない。
体の弱い人だったらしく私を産んですぐに亡くなってしまったそうだ。
おじいちゃんとおばあちゃんは私が十一の頃に流行病で亡くなってしまった。
そのおじいちゃんとおばあちゃんは毎日のように
「実季、この世界には鬼がいる。
わしの父親も鬼に食われた。
鬼は人を食う。
怖い生き物なんだ。
だから夜に絶対一人で外に出ては行けないよ」
と言っていた。
ピンと来なくてずっと鬼なんかいるはずないと思っていた。
パパでさえ本当だ、怖い生き物だ、夜には外に出たらいけないと話すけれど私には全然実感はわかず、信じられなかった。
パパは優しかった。
ママが私を産んですぐに亡くなってしまったから私を大切に大切に育ててくれた。
だからパパのことは大好きだ。
いつも穏やかな笑顔で名前を呼んでくれる。
おじいちゃんとおばあちゃんが亡くなった時もわんわん泣いてる私に
「実季、悲しいけれど人間は死んでしまう生き物だ。
今は辛いけれど、これから2人で残してくれたこのお店を一緒に守ろう」
とずっと抱きしめていてくれた。
そんな優しいパパだけれど1度だけものすごく怒られたことがある。
十八になった時だっただろうか。
夜になったら鬼が出るから外に出るなと毎日のように言われていたがある夜、
なんだか外へ出てみたくなって、こそりと家を抜け出し夜に外に出た。
夜の街は異国から輸入したであろうネオンでキラキラしていて泥酔している人や楽しそうな笑い声が聞こえた。
こんなにも夜の街は綺麗なのかと感動した。
何かするわけでもなくただ、街をフラフラと歩いてた。
だが。
歩いていると
泥酔している人にゴツン!とぶつかってしまった。
すぐに謝るも泥酔している人は私を舐めるように見たと思えばごつい手で私の腕を掴み暗い路地へ連れていこうとした。
私は大きな声で助けを呼んだ。
『助けて!!!誰か!!!!』
「娘から手を離せ!」
私を泥酔してる人から引き剥がしたのパパだった。
私を引き剥がすやいなや、無言で家まで手を引いて早歩きで前を歩くパパ。
家に着いてすぐ
「あれほど夜に外に出るなと言ったろ!
今日は鬼は出ていないが夜の街は危ないんだ!」
と怒鳴られた。
パパからこんなに大きな声が出るのかと。
びっくりして
私はなんてことしたんだと悲しくて
あれほど言われていたのに罪悪感で私はわんわん泣いて
『ごめんなさい、、』と何度も言った。
パパは優しく頭を撫でてくれた。
パパに本気で怒られたのはこれっきり。
鬼はパパだったよ?
だなんて言ったら怒られるかな
「実季、今日もお疲れ様。店閉めようか」
『うん!お疲れ様!わかった~』
忙しい毎日だけれど、お客さんもみんな優しくって大好きなパパと過ごせて毎日が楽しい。
明日も素敵な1日になるといいな。