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薙刀 瑜菜🍃💌⚓️
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朝。
いつもなら、誰よりも早く起きているはずのおんりーから、連絡が来なかった。
「……あれ?」
おらふくんはスマホの画面を見つめた。
昨日の夜、最後に送ったメッセージ。
『おんりー、もう寝た?』
そのあとに届いた、短い返事。
『うん。絶対ね』
また一緒に出かけよう。
その約束を、当たり前みたいに信じていた。
「……まだ寝とるんかな」
そう呟いて、もう一度メッセージを送る。
『おはよー!起きたら連絡してな!』
既読は、つかなかった。
***
数時間後。
ドズル社のメンバーが集まっていたところへ、一本の電話が入った。
その電話を受けたドズルの表情が、みるみる変わっていく。
「……え?」
誰も、すぐには声を出せなかった。
「おんりーが……病院に運ばれたって」
「……は?」
おらふくんの口から、かすれた声が漏れた。
「ちょ、待って。どういうこと? 昨日、普通に……昨日、一緒に……」
言葉が続かなかった。
昨日のおんりーは、笑っていた。
少し疲れているようには見えたけれど、それでも「また行こう」と約束してくれた。
絶対って、言ったやん。
「俺、行ってくる」
おらふくんは、誰よりも早く立ち上がった。
「おらふくん、俺たちも行くから」
ぼんさんの声に、おらふくんは小さく頷いた。
でも、頭の中では同じ言葉ばかりがぐるぐると回っていた。
――お願い。
――何でもいいから。
――昨日までみたいに、笑っていてよ。
***
病院。
案内された病室は、静かだった。
ベッドの上に横たわるおんりー。
いつもなら、誰かが来ればすぐに気づいて顔を上げるのに。
今日は、目を閉じたままだった。
「……おんりー?」
おらふくんが、そっと呼びかける。
返事はない。
「なあ、起きてや。俺、来たで」
いつもの調子で笑おうとした。
「昨日の続き、話そうや。次どこ行くか決めてへんやん……」
声が震えた。
おんりーの手に触れる。
冷たいわけじゃない。
そこに、ちゃんといる。
それなのに、どうして。
どうして、こんなにも遠く感じるんだろう。
「……おんりー」
おらふくんの目に、涙が浮かんだ。
そのとき。
「……これ」
ベッドのそばに立っていたおおはらMENが、小さな封筒を見つけた。
枕元に、丁寧に置かれていたもの。
表には、見慣れた字でこう書かれていた。
『おらふくんへ』
「……え?」
おらふくんが振り返る。
ドズルが、そっと封筒を手に取った。
「これ……おんりーが書いたのか?」
誰も答えられなかった。
封筒の表には、何度も書き直したような跡があった。
まるで、書くことを決めるまで、ずっと迷っていたみたいに。
「……おらふくん」
ぼんさんが、静かに呼んだ。
「これ、お前宛てだ」
おらふくんは、震える手で封筒を受け取った。
「……なんで」
ぽつり、と声が落ちる。
「なんで、こんなん……」
開けるのが怖かった。
中に何が書かれているのか、知りたくなかった。
だって。
この手紙が、ただの手紙じゃない気がしたから。
「……おんりー」
おらふくんは、ベッドのそばに座った。
手紙を胸に抱きしめる。
「なあ。これ、あとで本人から聞かせてよ」
涙が、一粒こぼれた。
「俺、直接聞きたいねん。おんりーの声で……」
返事はない。
ただ、窓から差し込む光が、白いシーツを照らしていた。
そのとき、ドズルが静かに口を開いた。
「……おらふくん。みんなで読もう」
おらふくんは、顔を上げた。
「おんりーが、何を伝えたかったのか。ちゃんと、みんなで受け止めよう」
しばらくの沈黙。
やがて、おらふくんは小さく頷いた。
そして。
震える指で、封筒を開いた。
中には、折りたたまれた便箋が一枚。
一番上には、こう書かれていた。
『みんなへ』
その下には、少し間を空けて。
『特に、おらふくんへ』
おらふくんの呼吸が止まった。
ドズルが、ゆっくりと最初の一行を読み始める。
「……もし、この手紙を読んでいるなら」
声が、わずかに揺れた。
「俺は、みんなに……隠し事をしたまま、ここまで来てしまったんだと思います」
誰も、動かなかった。
次の行には、見慣れない病名が記されていた。
『花締病』
そして、その下に。
おんりーが、ずっとひとりで抱えてきた秘密が、少しずつ綴られていた。
――自分の胸に、蔓のようなものが現れたこと。
――原因を調べて、病気のことを知ったこと。
――誰にも言えなかったこと。
――そして。
ドズルが、次の一文を読もうとしたとき。
声が、止まった。
便箋の真ん中に書かれていたのは、たった一行。
『俺は、ずっと好きな人がいました』
おらふくんの指先が、ぴくりと動いた。
「……好きな、人?」
誰に向けた言葉なのか。
まだ、分からない。
分からないはずなのに。
胸の奥が、嫌なほどざわついた。
そして、手紙の最後のページ。
そこには、おんりーの字で、何度も迷った跡が残っていた。
まるで、最後の最後まで、伝えることを怖がっていたみたいに。
ドズルは、そのページをそっとめくった。
――そこに書かれていた、たった一つの名前は。
『おらふくん』
「…………え?」
おらふくんの声が、かすれた。
「……うそ、やろ?」
手紙の続きを、読むことができなかった。
だって、その先にある言葉を。
自分は、ずっと。
ずっと、聞きたかったから。
でも。
こんな形で、知りたくなんてなかった。
コメント
1件
ああ……もう、胸がぎゅっとなりました。おんりーからの手紙、しかも「特に、おらふくんへ」って……そこからの病名の告白と、最後の「好きな人」がおらふくん本人だって部分は、文字を追う手が止まりそうでした。これまでずっと笑顔で一緒にいてくれた人が、こんなにも重たい秘密をひとりで抱えてたんだなと思うと切なくて。だからこそ、おらふくんの「直接聞きたいねん」って言葉が、涙を誘いましたね……。どうしてこんな形で届いてしまったんだろう。続きが待ちきれないです。