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遅刻ではないが、忘れ物を取りに戻っていた六葉だ。

彼女は目立たないように壁際を通り、自分の席へと向かおうとした。

しかし、隷の視界の端が、その小さな動きを捉えた。


(六葉…)


昨日、自ら発した「*絶対的な安心感*」を与える魔力の記憶が、頭の中で鮮明に蘇る。


そしてその魔力に包まれた瞬間の彼女の無防備な、心の底からの**笑顔**。


その光景が、彼の冷酷な理性を一瞬で溶かした。


彼は話していた。

厳格に、厳粛に、生徒たちの模範となるように。


「…よって、全生徒は規律を――」


そこで彼の視線はまだ席に座りきれていない六葉の、光を反射する栗色の髪と、白い制服の襟元に吸い寄せられた 。

そして口から出た言葉は、彼自身も信じられないものだった。

「―くれぐれも、風邪をひかないように。少し肌寒くなってきた。特に、君は…薄着だ」


講堂全体が一瞬で凍り付いた。

氷の王子と太陽の少女

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