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うつ伏せでシーツにしがみつく僕の中に、先輩の熱い欲望が挿し込まれた。
「いぁっ!つぅっ……!――痛いっ!痛いよ、せんぱい……っ!」
激しい激痛に、僕の目からとめどなく涙が溢れた。
滲んだ視界の先には、この苦痛の原因たる|長谷《はせ》先輩が。
得体のしれない感覚に震える僕の背中に、先輩はあやすように優しく口付けた。
「ごめん……しばらく我慢して」
耳元でそう囁くと、先輩はすっかり縮こまった僕の中心を握って上下に扱いた。
「やぁっ……あっ、怖いよ……せんぱい……っ」
「気持ちいい方に集中して」
奥深くを突き上げる先輩の律動と性急に上下する手の動きに、僕の中心は硬さを持ちふるりと上を向いた。
痛いのに気持ちいい。前と後を同時に攻められ意識が飛びそうになる。
「あ、あっ、せんぱいっ……せん、ぱい……っ」
「……|祐希《ゆうき》、かわいい」
くぐもった、熱の籠もった声で先輩が僕の名を呼んだ。
先輩は僕の耳朶を甘噛みすると、囁くように何度も僕の名を呼んだ。
「祐希……かわいい。祐希、祐希……っ」
「せんぱい……っ、あっ、あっ、せんぱいっ」
先輩の激しい追い立てに耐えきれず限界を迎えた僕は、先輩の手の中に精を吐き出した。
先輩との初めては、身体が真っ二つに裂けそうな程、痛くて痛くてたまらなかった。
◆
同じ部署の長谷先輩は、新入社員の僕、|藤原祐希《ふじわらゆうき》の教育係。
5年先輩の彼は仕事が早くて完璧!と評判が良い。
おまけに端正な顔立ちで女性からの人気も高い。
そんな先輩と恋人になったのは、つい最近の事。
「――俺と付き合って」
初めて見た時から可愛いと思ってた。
そう先輩に告白された僕は、驚きで頭が真っ白になった。
「……もしかして藤原君、恋人いる?」
衝撃でフリーズしていた僕に先輩が声をかけた。
「いません……」
人生で一度も。
「なら良かった。ねぇ、返事は?」
……先輩、せっかち。
爽やかな笑顔で先輩は僕の返事を待っている。
人気者の先輩が僕の事を好き。
びっくりしたけど告白は、嬉しい。
先輩は仕事が出来てかっこいい。憧れの先輩。
……好き。なんだろうか?
「あ……えっと……」
「付き合う?付き合わない?どっち?」
「その……」
「うん?」
「ちょっと、考えさせてください……」
先輩は目を見開いてぱちぱちと瞬きをした。
「考えるっていつまで?俺、そんなに待ってられないよ」
……せっかち。
「1週間」
「え?」
「1週間後に返事ちょうだい。それまでにしっかり考えといて」
◆
先輩から告白されたその日の帰り、会社の近くにある行きつけのバー【|Holiday《ホリデー》】に出向いた僕は、マスターの谷口さんに今日の事を話した。
「ついに藤原君にも春が来たか~」
「いや、あの……まだ返事してないです」
「そうなんだ。じゃあどうするの?オッケーするの?」
「まだ、考え中です……」
返事の期限は1週間。答えが出せる気がしない。
「藤原君はその人の事好き?」
「……好きです。人として。仕事も出来るし、かっこいいし、皆からも人気で自慢の先輩です」
「いいじゃん!いいじゃん!試しに1回付き合ってみれば?」
谷口さん……そんな軽いノリで……
「先輩を恋愛相手として見れるか分かりません」
「嫌いじゃないんだろ?付き合ってから恋が芽生えるかもしれないよ」
「試しに付き合って上手くいかなかったらどうするんですか?会社で毎日顔を合わさないといけないのに……気まずくて仕事になりませんよ」
「まぁその時は異動願出すか転職すればいいんじゃない?」
「他人事だと思って……」
「ネガティブだなー藤原君は。イケてる先輩と恋人になれるチャンスなのに」
一歩踏み出さないと藤原君の恋愛経験値はいつまで経っても0のままだよ。
困った時は俺が相談に乗るから付き合ってみなよ!と谷口さんは笑顔で言った。
◆
先輩に何と返事をするか?考えている最中も仕事はいつも通りあるわけで。
先輩は告白など無かったかの様に今までと変わらない態度で僕に接していた。
仕事に私情は持ち込まない。
僕は告白されてからずっと先輩の事ばかり考えているのに。
何だかずるい。
返事の期限がいよいよ明日に迫ってきた。まだ答えは出ていない。
どうしよう……延長お願い出来ないかな?
「藤原君、今日の夜空いてるかな?」
「――えっ!?えっと……」
先輩に予定を聞かれてドキッとした。
今日返事をしろって言われちゃうんだろうか?
「取引先と飲み会なんだ。藤原君もどうかって先方からお誘いがあってね」
「……あ、そうだったんですね。大丈夫です、行きます」
ホッとして僕は胸を撫で下ろした。