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僕はずっと考えていた。
あの日、元貴が泣きながら話してくれた過去。
震えていた声。
「怖かった」
その一言が、頭から離れない。
元貴は強い。
でも、あれは強さじゃない。
無理して立ってるだけだった。
だから、僕 は一人で連絡を取った。
あのいじめっ子に。
「少し話せませんか」
返信はすぐ来た。
軽い文面で 馬鹿にするような絵文字付き。
それでも僕は行った。
人気のない裏路地。
「何?彼氏の代わり?」
ニヤニヤしている。
僕はまっすぐと相手を見る。
「これ以上元貴に近付かないでください」
声は震えてない。
「昔のことも、今のことも、もうやめてください」
相手は笑う。
「は?何様?」
一歩近付かれる。
でも僕は退かない。強気に言葉をぶつける。
「あなたがやってること、最低ですよ
もう子どもじゃないってことくらい分かりません?」
その瞬間、空気が変わる。
「ッ、調子乗んなよ!!」
胸ぐらを掴まれる。
僕の背中が壁にぶつかる。
鈍い衝撃、酷く痛む。
でも元貴は、きっとこれ以上の痛みを経験したはず。
「っ…」
バランスを崩し、地面に手をつく。
手のひらが擦れる。
薄く赤くなる。
決して大きな怪我じゃない。
でも。
「ッ、気持ちわりぃんだよ!!
調子乗ってる上に男同士で付き合うとかッ、!! 」
吐き捨てる声。
どうして知っているんだろう、そう思った。
そのとき。
「おい」
低い声。
空気が凍る。
振り向くと、若井が居た。
目が、完全に怒っている。
「離れろ」
短い一言。
相手は一瞬ひるむ。
「な、なんだよ、関係ねーだろ」
若井は一歩近付く。
「関係ある」
声が低すぎて、震える。
僕が立ち上がろうとする。
「若井、大丈夫」
でも若井は僕の手を見る。
擦り傷。
赤い。
その瞬間、目の色が変わる。
「触ったな」
圧。
空気が重くなる。
相手が後ずさる。
「ッ、大げさだろ」
若井は笑わない。
「次やったら、許さない」
声は静か。
でも本気。
相手は舌打ちして去っていく。
足音が消えたあと。
若井はすぐ僕に振り向く。
「なんで一人で行ったの」
怒鳴らない。
でも怒りが滲んでる。
僕は小さく言う。
「……元貴のために」
若井の表情が歪む。
「涼ちゃんが怪我したら意味ないでしょ?」
僕が少し笑う。
「これくらい平気だよ笑」
その手を若井が掴む。
「平気じゃない」
震えているのは 、若井の手。
怒りと恐怖。
そこへ
「涼ちゃん!若井!」
息を切らした元貴が来る。
メッセージに気付いて追いかけてきた。
元貴もまた、僕の手を見る。
赤い傷。
顔色が一瞬で変わる。
「……ごめん」
崩れる。
「僕のせいだ」
涙が溢れる。
「僕が弱いから、ッ」
声が震える。
「僕のせいで、涼ちゃんが…っ、」
しゃがみ込む。
自分を責めるみたいに。
僕は慌てる。
「違うよ!」
若井が元貴の肩を掴む。
「元貴のせいじゃない」
強い声。
元貴は首を振る。
「僕がちゃんと戦えれば、」
「違う」
若井がはっきり言う。
「悪いのはあいつ」
僕も膝をついて、元貴の顔を覗く。
「僕が勝手に動いただけなの、ごめんね」
出来るだけ優しい声。
「元貴を守りたかった」
元貴の涙が止まらない。
僕は笑う。
「たまには守らせて」
若井が僕達二人を抱き寄せる。
「俺たちは三人で一つ。困ったら助け合うの。」
低く、でも優しく。
「一人の問題じゃない。」
元貴は僕の手をそっと握る。
「…痛い?」
「んー、ちょっとだけ!」
その一言でまた元貴の目から涙が出る。
若井が言う。
「今後は俺も動く」
冷たい声。
「二度と近付けさせない」
元貴は顔を上げる。
若井の目は本気。
でも、その後 そっと元貴の頭を撫でる。
「でもまずは、元貴。自分を責めるのはやめよ?」
僕も微笑む。
「ねぇ元貴。僕、後悔してないよ」
小さな傷。
でも、
三人の距離は、少しだけ強くなった。
元貴は僕達二人を抱きしめる。
「……ッ、うん、ありがとう、っ」
涙でぐしゃぐしゃのまま。
過去は消えない。
でも
今は、守り合える。
それが救いだった。