テラーノベル
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※注意※
本作品は非公式の二次創作です。
原作・公式関係者様とは一切関係ありません。
作品内には独自解釈、捏造設定のほか、 一部に暴力表現、精神的に重い描写、暗い表現が含まれます。
苦手な方は閲覧をご遠慮いただき、閲覧は自己責任でお願いいたします。
完結したらタグは減らします。
鈍い衝撃が横から叩きつけるように入る。
「〜〜っ!」
次の瞬間、視界が傾く。
椅子ごと蹴られたと理解したのは床にぶつかった後だった。
身体が横倒しになる。
背中ではなく肩と腕の辺りに変な角度で重さがかかって息が一瞬詰まる。
「っ、は……」
肺に入る空気が薄い。
痛い。
でもそれより先に動いたのは別の感覚だった。
ウサギ。
反射的に身体を捻る。
壁。
冷たいコンクリートに肩を押し付けるようにしてウサギを隠す。
床と壁の隙間に押し込むみたいに。
見えないように。
触れられないように。
「……はは」
上から声が落ちてくる。
「そこまでして守りたいのかい?」
視線を上げるとあの男がこちらを見下ろしていた。
さっきまでの余裕の笑みは少しだけ薄れている。
「……別に」
息が整わないままなんとか言葉を返す。
「あなたには関係ないでしょう?」
わざと軽く言う。
「へえ」
靴先が視界の端に入る。
次の瞬間。
腹を蹴られた。
「っ……!」
声を出さないように歯を食いしばる。
鈍い衝撃が内側に広がって視界が一瞬白くなる。
でも身体は動かさない。
動かしたら隠してる場所がずれる。
「強がるねえ」
もう一度。
今度は肩に近い位置。
壁に押し付けていた左側に衝撃が走る。
「……っ、」
痛い。
さっきよりちゃんと痛い。
でも。
それでも。
「触るなって言ってるだろ」
低く吐き出す。
自分でも驚くくらいはっきりした声だった。
一瞬だけ空気が止まる。
「……」
男の動きが止まった。
そのあとゆっくりと息を吐く音がする。
「……ああ、そうかい」
少しだけ笑った。
でもその笑い方はさっきまでと違った。
「それがそんなに大事か」
次の一歩が近い。
嫌な気配が濃くなる。
「じゃあ——」
その時だった。
コンコンコン、と扉を叩く音が鳴る。
「……」
男の動きが止まる。
扉越しに誰かの声がした。
小さく、でも急いでいるような調子。
「……チッ」
明らかに苛立った舌打ち。
男は一度だけこちらを見てから視線を扉に向けた。
「動くなよ」
そう言い残して背を向ける。
ドアが開く音。
閉まる音。
——静寂。
数秒。
それから。
乾いた音が遠くで弾けた。
「……っ」
銃声。
一発。
遅れて、もう一発。
さらに重なる。
空気がさっきまでとは明らかに違う。
怒鳴り声が聞こえる。
何を言っているのかはわからない。
けれどただの揉め事じゃない。
足音が走る。
何かがぶつかる音。
硬いものが割れるような音。
「……は」
喉がひどく乾く。
何が起きているのか頭が追いつかない。
でも——
外で戦闘になっている。
それだけはわかる。
……なんで
ここは普通人が来る場所じゃないだろう。
簡単に見つかるような場所でもないはずだ。
じゃあなんで。
誰が。
誰が、戦ってる。
嫌な考えが先に浮かぶ。
何が起こってるか分からないが、どうであれここに突っ込んでくるような状況じゃない。
もしこいつらの内部で起こっているものではなく他の誰かが来て戦っているのであれば。
来るな、と思った。
こんな場所に。
こんな状況で。
関わったら絶対に無事じゃ済まない。
銃声が少し近くなる。
怒鳴り声が重なる。
何かを引きずるような音。
バイクのエンジン音まで混ざる。
混線したみたいに全部が一気に押し寄せてくる。
「……っ」
身体に力を入れようとしてうまくいかない。
拘束されたまま横倒し。
何もできない。
ただ聞くことしかできない。
どれくらい経っただろうか。
時間の感覚が曖昧になる。
数秒なのかもっと長いのか。
わからない。
その時。
ドアが乱暴に開いた。
「——っ」
反射的に視線を向ける。
戻ってきた。
あの男。
さっきと違う。
呼吸が荒い。
肩で息をしている。
余裕が消えている。
「……は、」
息を整えきれていないままこちらを見る。
その目にあるのはさっきまでの興味じゃない。
焦りと苛立ち。
「——動くなよ」
低い声と同時に銃が向けられる。
黒い銃口がまっすぐこちらを捉える。
「……」
動けない。
でも目は逸らさない。
「お前の仲間か?」
短く吐き捨てられる。
一瞬だけ間が空く。
違う。
そう言うべきかもしれない。
でも口は開かない。
代わりにいつもの調子を無理やり引きずり出す。
「……さあ」
かすれた声。
「どうでしょうね」
その一言で男の表情がわずかに歪む。
その瞬間。
——バンッ!!
扉が外から蹴破られた。
木片が弾け飛ぶ。
「……クソ」
男が振り向く。
開いた視界の向こう。
複数の影が一気に流れ込んでくる。
銃を構えた人影。
聞き慣れた声。
「動くな!!」
空気が一気に変わる。
一瞬理解が追いつかない。
見間違いかと思った。
胸の奥が遅れて強く鳴る。
これが曙光とでも言うのだろうか。
信じきれないまま目を逸らせなかった。
仲間が。 868が、そこにいた。
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