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リクオが座敷を去った後。残された静けさの中で、牛頭丸と馬頭丸は障子の外に寄りかかっていた。
「……なんか、空気変わったな」
馬頭丸がぽつりと漏らす。
「チッ。若め、言いたいことだけ言って消えやがって。姫さんの気持ちをどれだけ掻き乱したと思ってんだ」
牛頭丸は腕を組み、苛立ちを隠さない。
けれどその横顔は、不思議と安堵も混じっていた。
「でもさ」
馬頭丸は天井を見上げる。
「姫さん、あんな顔するんだね。……ちょっと、嬉しそうだった」
牛頭丸は一瞬だけ黙り、鼻を鳴らす。
「……ああ。だが忘れんな。あの笑顔を守れるのは俺たちだ」
「うん、わかってる」
馬頭丸も真剣な眼差しで応じる。
二人は視線を交わし、互いに頷いた。
障子の向こうでは、レンがまだ布団に潜り込んだまま。
泣き疲れたはずの寝息はどこか穏やかで、二人はそっと耳を澄ませる。
「……まったく、手のかかる姫さんだぜ」
「でも、そんな姫さんだから俺たちは守りたいんだ」
月明かりに照らされた二つの影は、今夜も静かにレンの傍らを守り続けていた。