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#女主人公
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「っつ!」
レオンの警戒にディアナがその場から飛び退く。
飛び退いた場所にはブラック ロング スカートがいた。
フレアーなのでこれまた需要が高そうだ。
ふわっと飛び上がったスカートがそのままディアナの頭部を覆い尽くそうとする。
包んだ頭部がばりばりと貪り喰らわれるホラー話を、ふと思い出した。
ディアナは広がるスカートを覗き込みながらスライディングで逃れる。
逃れた先でレオンが手を貸して、素早く体勢を整え直した。
レオンが剣に力を込めるように大きく息を吐いた。
次の瞬間スカートが切られる。
ロング丈がミニ丈になった。
それでもアイテム化はしない。
結構なダメージだと思うんだけどね……と検証している途中で、ディアナがショートソードの切っ先をスカートの腰回りに突き立てる。
手首が器用に捻られて、スカートは真っ二つになった。
さすがにこれが致命傷となったようだ。
綺麗に畳まれた状態で、地面に落ちる。
ヒルデが自慢げに回収していった。
「……フォルス様の恩恵を分けていただいているのかなぁ……」
「間違いないわね。なんて有り難いのかしら。あのワンピース二着で家が買えそうよ!」
仲良く並んでやってくるワンピースに、二人が嬉しそうに頷いている。
私の方を見て会釈するのも忘れない。
ホワイト ノースリーブ ワンピース、ピンク ノースリーブ ワンピースの二体。
ホワイトがマーメードラインでピンクがデルフォスドレス。
ホワイトなマーメードラインはさて置き、ピンクのデルフォスドレスは珍しい気がする。
何となくもっとシックな色合いが多い印象があるのだ。
ピンクといっても幅広いし、このドレスのピンクは落ち着いた色味だとは思うけれどね。
ワンピースは裾に力を入れるように少しだけかがむと、一気に距離を縮めてきた。
レオンがホワイトを、ディアナがピンクを相手にするようだ。
ブラウスやスカートより戦闘力が強いのか、戦闘を許している子供たちが集合する。
「……フォルス様のおかげ。逃がさないようにしないと」
「うん。きちんと仕留めないと申し訳ないものね」
こちらは戦闘枠の双子。
まだ十歳とのことだが、戦闘種族らしい。
見た目は普通の人間なんだけどね。
龍族と人族のハーフらしくて、打たれ強いとのこと。
二人とも男の子。
赤髪赤眼の子がヴィリで白髪白眼の子がヴィム。
ヴィリが赤龍の血をヴィムが白龍の血を持つらしい。
双子なのに父親が違うの? と思ったけれど、双子というからには違うのだろうか。
デリケートな問題なので質問する機会はなさそうだが、気にはなった。
「フレイム!」
「ブリザド!」
フレイムは焔系の魔法。
狙われたホワイトは軽やかに裾で飛んできた焔を跳ね返している。
強い。
ブリザドは氷系の魔法。
狙われたピンクは逃げるのに失敗したらしい。
すてん! と見事に転んだ。
おかげでプリーツの裾がかしゃりと凍ってしまった。
ドジっ子なの?
起き上がれないピンクに容赦なくディアナが躍りかかる。
ショートソードが胸から腹部辺りを綺麗に切り裂いた。
ドレスを破かれた女性のような甲高い悲鳴が上がる。
「きゃ!」
耳を塞いで転がったディアナの体を双子がしっかりと抱き留めた。
どうやら断末魔が攻撃になったらしい。
耳を押さえるディアナの、指の隙間から血が滴り落ちている。
「ディアねぇ!」
「ポーション!」
双子はディアナの体を素早く引き摺って戦線を離脱させると、耳を塞いでいた手を外させてポーションを両耳の中へと流し込んでいる。
これは正しい措置なのだろうか。
「……ありがと、二人とも。こういう場合は飲ませるより患部に直接かけた方がいいもの」
正しいらしい。
御礼を言いながらも首を傾けている。
耳に水が入ってしまったときの不快感を払拭しているのかもしれない。
それでもディアナはしっかりと二人の頭を撫でていた。
龍族とのハーフは幼く見えても年齢を重ねている例が多いようだが、この双子は見た目通りの年齢なのかもしれない。
撫でられて、とても誇らしげな顔をしている。
未だホワイトと対峙しているレオンは戦いに集中していた。
けれど一瞬だけ気が緩む。
ディアナが心配だったのだろう。
「っ!」
ホワイトはかなり優秀なワンピースだったようだ。
焦がせなかったスカートの裾でレオンを殴り飛ばす。
レオンの体はダンジョンの壁へと激しく叩きつけられた。
「レオンっ!」
ディアナの叫びは悲痛だった。
自分の状態に安堵したレオンが隙を作ったと理解できてしまったからだ。
レオンにトドメを刺そうと颯爽と歩み寄るマーメイドワンピースを倒したのは雪華だった。
説明の機会が多いからかな?
子供たちに対して過保護気味になっているらしい。
「獲物の横取りをしてごめんね?」
呆気なくドロップアイテム化したワンピースをナータンに手渡す。
どうしようか迷ったナータンの目が、私を見つめる。
私は大きく頷いて見せた。
この場合はダンジョンルール的にも、レオンに受け取る権利がある。
助けを求められる前に、介入してしまったからだ。
助けられて文句を言うな! という意見は通らない。
助けを求められた場合のみ、助ける。
そうでないと理不尽かもしれないが、罰せられるのは助けた側なのだ。
ドロップアイテムを放棄しても、敵を倒した経験値は倒した者へと渡るのだから。
「雪華さん、すみません。助かりました」
「うん。求められないのに助けてごめんね。レオンならぎりぎり間に合ったと思うんだけど、主が許さないほどの怪我を負いそうだったから」
自作ポーションがあるので、腕の一本や二本折れたところで大した怪我ではない。
ただ切断されてしまうと少々厄介だった。
雪華は切断の気配を察知したのだろう。
その程度には強いワンピースだった。
「レオンとディアナは休憩ね。雪華はあと少し、双子の様子を見てあげてくれる?」
「了解!」
雪華が目を細めて笑う。
彩絲にしろ雪華にしろ誰かを助ける側。
何しろ守護獣。
最優先は私だが、将来有望な子供たちの手助けをしたくなってしまう性分なのだろう。
蛇や蜘蛛本来の姿を見ていないからか双子もよく懐いている。
純粋無垢な者は、強い守護獣に惹かれるのだ。
レオンやディアナがいる以上、二人が歪むこともないはずだ。
ふと、孤児たちが望むなら、王都の拠点へ送ってもいいかな? と思ったのは、双子がなかなかの戦果を上げたからかもしれない。
三階へ降りる前に休憩小屋で一休みする。
これだけでも他のパーティーでは得られない恩恵だろう。
何処でも何時でも安全に休める場所があれば、高難度のダンジョンの攻略も各段と楽になるはずだ。
子供たちは雪華を中心にして、戦利品の確認をしている。
既に孤児院から独立できる最低限の資金は得られたようで何よりだ。
喜びの声を上げる孤児たちに、雪華はもっと余裕を持っておかないと駄目だよ? と指摘している。
特に戦える子供たちの怪我を心配しているようだ。
喜び一色だった子供たちも、我に返ったようで雪華の声に、再び耳を傾けはじめた。
「女性服の依頼分は大丈夫なの?」
「ふ。妾に抜かりがあるとでも?」
「ないでしょうけど、確認は必要よね?」
「その通りじゃな。無論、問題はない。依頼分以上の良品が集まったぞ」
子供たちの面倒を見つつもじっくりと確保していたのは知っている。
でも主と扱われているならば必要な言葉だろう。
「主に似合いそうな服も存分に入手したからのぅ。あとでファッションショーをしてもらわねばなるまいなぁ」
「そそ。主が好むシンプルで愛らしい物も幾つかあったしね。御方様が喜ばれそうな典雅なドレスも入手できたよ。ほんと! 主専用! みたいなドレスで驚きだよ」
子供たちはいいのだろうか?
雪華が話に入ってきた。
様子を窺えば、子供たちだけで今後の相談をさせているようだ。
私たちと一緒にいられる時間は長くない。
子供たちだけできちんと考えられるようにとの心遣いは、実に雪華らしかった。
「そういえば、あのベリーダンスの衣装も試着ぐらいしてみればいいのでは……ごふっ!」
ランディーニの言葉を最後まで言わせないマン! になったノワールが、ランディーニの頭部を叩く。
テーブルの上でひくひくと痙攣しているランディーニの体に、そっと白いハンカチを乗せた雪華。
突っ込みを入れたいが勿論沈黙を守る。
守らないと夫の声が聞こえてきそうだったからだ。
子供とはいえ、男性がいるのだ。
試着でも許されないに決まっている。
子供たちの消耗が激しいので、ぐっすりと眠ってから次の階へ行くと決めたのはノワール。
私も彼女の意見に異論はない。
皆も素直に従って夕食ののち、私はゆっくりとお風呂に浸かってからやわらかいベッドの中へと潜り込んだ。
朝食は賑やかに全員で取って三階へと向かう。
このダンジョンは一度クリアしてしまえば、その階はスキップできる仕様らしい。
勿論一階から下りる選択もできる。
なかなかに都合が良いダンジョンだ。
服飾小物はノワールが依頼を受けている。
数もさることながらかなりのレア物も入っているようだ。
珍しく熱い眼差しを向けられる。
期待されているらしい。
「主様にはできれば釣りに集中していただきたく……」
釣れるアイテムの中には気になる物も多い。
だが普通の三階も少しは探検してみたかった。
「その前に何体かは倒したい……」
なぁ……までは言わせてもらえなかった。
三体の小物がスライディングタックルの勢いで足元へやってきたのだから。
汚れないのかな? と余計な心配をするくらいには激しかったのだ。
「手袋三種類セット?」
「ホワイト レース グローブ、ホワイト イブニング グローブ、ホワイト コルセット グローブ……どれもレアで需要の高い物です。三体一緒に出るとは……存じませんでした」
ノワールも呆然としながら三体のグローブを凝視している。
「うーん。このモンスターはどうやって倒すんだろう」
ウインドカッターで簡単に倒せる気もした。
でもそれはきっとグローブの望む倒され方ではない。
動かない三体の前で悩んでいると。
更に追加のモンスターがやってきた。
今度はドレス三体。
ドレスは服飾小物でないので、この階で出現しないはずなのでは?
「ブラック ミニ ドレス……しかも幻のロリータ型! 主! あれは主用に確保して!」
悩む私の前で、雪華の鼻息が荒い。
好きだもんねぇ、ロリータファッション。
「ホワイト ロング チャイナドレス! 主! あれも主用に確保じゃ!」
彩絲の鼻息も荒くなった。
うん。
好きだよね、チャイナ系。
「ホワイト ロング ウェディングドレス? ベール付! あ、主様!」
ノワールが興奮状態だ。
私に着せたいのかしら、ウェディングドレス。
夫もいないのに?
着るなら行きますけど?
ええぃ、簡単に言わないでほしい!
でもノワールの願い事で、夫にも会えるなら何の問題もないのかな?
私はさすがにグローブの倒し方に気がついたので、もじもじと目の前に並んでいるグローブを三体のドレスに手渡した。
何故か手渡せた。
ロリータにはコルセットグローブ、チャイナドレスにはレースグローブ、ウェディングドレスにはイブニンググローブの組み合わせだ。
よくできました! とばかりにグローブは箱詰めに、ドレスはトルソーに着せられた。
ウェディングドレスはベールもかけられる特殊なトルソーにかけられている。
もうどこにも突っ込むところはない。
どのアイテムを誰が収納したかは言うまでもないだろう。
「……大人しく釣りをするよ。池はどこにあるのかな?」
「我が案内しよう。のぅ奥方よ。そんな魚が腐ったような目をせずとも……」
「え? そんな目をするわけないわよ。ランディーニったら、何時から見る目がなくなったのかしら」
「し、辛辣な奥方は珍しいのぅ。御方様ならそんな奥方も良いと惚れ直しそうじゃ」
ランディーニは私がよくわかっていますねぇ。
本人には聞こえなかったようなのであえて教えはしない。
大喜びさせるのにイマヒトツ乗り気になれなかったのだ。
何にそこまで苛つかされているのかわからないまま、池まで案内してくれたランディーニを皆の元へ追い返す。
ランディーニはしばし粘ったが諦めて戻っていった。
しょんぼり飛ぶ、という表現が似合う姿は初めて見る。
少しだけすっきりした気がした。
さすがに一人にはしてもらえなかったらしい。
近くに子蜘蛛と子蛇がうろうろしている。
虐めているようで落ち着かない。
手招きすれば嬉しそうに近寄ってきた。
きらきらした目で見上げられるので、護衛をお願いしておく。
大喜びで警戒をはじめた。
結局のところ一人になりたかったのかな? と首を傾げながら釣り師の長靴を取り出す。
いそいそと履いた。
ゴム長靴を履いたとき特有のぺたっとした感触もない。
実に履き心地が良かった。
高級釣り竿に刻んである百合柄はワンポイントで可愛らしい。