テラーノベル
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シャインに手を引かれたまま、レイニルは城の階段をいくつも上り続ける。何階まで行くのだろうか。
ドレスでは上りにくく、次第にレイニルは息切れをして速度が落ちてくる。
いくつめかの階段の踊り場で立ち止まると、シャインがレイニルを抱き上げて、お姫様抱っこの状態で軽々と階段を駆け上る。
「えっ……シャイン様!?」
「気にするな、鍛えているからな。あとオレの呼び方を変えるな」
「あ……」
シャインは一度だけレイニルに呼び捨てにされたが、それを気に入ってしまったらしい。『様』付けするとあからさまに不満そうな顔をする。
抱かれたままレイニルが俯いていると、急に視界が明るくなった。顔を上げると、いつの間にか城の外に出たらしい。つまり、ここは城の屋上だ。
快晴の空の下、シャインは屋上の手すり前まで歩くと、ようやくレイニルを地に下ろす。ここからは城下町が一望できる。
「すごい景色……」
レイニルは胸の高さまである手すりを両手で握りしめて、眼下に広がるサンディ国の城下町を眺める。
シャインも隣に立って誇らしげに笑う。
「そうだろう。オレの国だからな」
きっとシャインは、この広大な景色を見せる事でレイニルの気持ちを晴れさせたかったのだろう。だが、その気遣いは逆効果でレイニルは次第と表情が曇る。
改めてシャインは国王なのだという存在の大きさと、この国の運命を握る雨女の使命の重さに心が潰されそうになる。
快晴では、だめなのだ。この国に雨を降らせなければ、単なる役立たず。ローサの言葉が今になって頭の中で復唱される。
「あの……シャイン様」
「呼び方」
「あ……シャイン。あの……」
レイニルは一瞬、曇ったブルーの瞳を伏せてから思い切ってシャインを見上げる。
「私ではなくローサお姉様と結婚してください」
「……は? 何を言ってるのか分からないな」
さすがに意表を突かれたシャインは冗談でも聞いたようにわざとらしく驚く。
「私、お姉様の気持ちが分かります。妹の私が国王に嫁ぐのは……」
きっと屈辱に違いない。レイニルは素直にそう思うが、ヘリオスがローサに愛がないと知った今、ローサが幸せになる形を考えた結果だった。
どうせ雨が降らなければシャインとは離婚する。ならばすぐに離婚すれば、自分もローサも辛い期間を30日も過ごさなくても済むと思った。
「雨女が必要なら、妃という形でなくてもサンディ国に残ります。ですから……」
「……だから離婚しろと? 契約は守ってもらわないと困るな」
シャインの口調は強く厳しいが、その目元は穏やかで優しい。
「レイニル。お前は本当に優しいな。オレは、そういうところが愛しいと思う」
思いがけない言葉にレイニルは息が止まりそうなほどにシャインに心を射抜かれる。今の自分のどこが優しいのか自覚がない。
しかしシャインは見抜いていた。ローサはレイニルを地下牢に幽閉していた一家の姉だ。そんな姉のために自分の幸せを捨てようだなんて。
「離婚したいなら、30日間雨を降らせない事だな。それが契約だ」
あくまでルールとしての契約結婚を突きつけてくる。冷たいように見えて、それはシャインの優しさ。シャインはレイニルを手放したくない。
レイニルはドレスの裾を両手でギュっと握って口を結ぶ。まるで子供のように震えながら溢れる涙を抑える。
嬉しいのか、悲しいのか分からない。ただ、それがシャインの優しさだと気付いた時に、自分の中に何かの感情が芽生えた。
「シャイン……私、絶対に……勝ちますから」
レイニルは涙をこぼしながらも精一杯の笑顔で改めて宣言した。
愛も幸せも勝ち取るもの。今までは忌み嫌われていた自分の能力でシャインの愛を勝ち取りたいと願った。
「あぁ、涙は流すな。どうせなら雨を降らせろ」
自分が泣かせてしまったようで、シャインは困った顔をしながらもレイニルを優しく抱きしめた。
雨が降ればシャインの負けなのに……いや、この契約結婚は勝っても負けてもシャインの思い通りになるように仕組まれている。
たとえ雨が降らなくたって、30日もあればレイニルはシャインの溺愛に溺れてしまうだろうから。
「ふっ……俄然やる気が出てきたぞ。絶対にレイニルを惚れさせてやるから覚悟しろ」
そしてそれは、シャインの勝負魂にも火をつけた。
#コメディ
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コメント
1件
第6話、拝読しました!屋上に連れて行かれて景色を見せられるシーン、シャインの優しさがひしひしと伝わってきてじんわりしました。でもレイニルにとってはそれがかえって自分の立場の重さを突きつける結果になるんですよね…ローサ姉様のために自分を犠牲にしようとするレイニルの優しさが切なくて、胸が締め付けられました。そんな中でのシャインの「愛しいと思う」の一言、もう完全に心臓を撃ち抜かれました。契約の皮をかぶった本心がひたひたと伝わってきて、ああこの二人はもう既に恋愛の渦中にいるんだなって。最後の「勝ちますから」の宣言、涙ぐみながらも笑顔で言い放つレイニルが本当に愛おしい。次も絶対に読みます!