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ダダダダダダダダ!!
私は忙しなく階段を登る。
早く!急がないと!!!
ただ足を早めていく。
早く!とにかく早く!!
自分の部屋の前までつくと、今度も忙しなく鍵を取りと出してガチャガチャと乱暴に扉を開ける。
「ただいま!!」
朝ヒーヒー言いながらセットした髪の毛を適当に解き洗面所でこれまた適当に化粧を落とし、バタバタとテレビの前に行き鎮座した。
ウィーン
ゲームの起動音が鳴る。
心臓は、今までの過重労働と忙しない動きとでバクバクいっているが、それ以上の期待と興奮を抑えきれずにいた。
「、、、、きた、、」
そこには、今年一番期待していた新作RPGのアイコンが表示されている。
はぁはぁと興奮を抑え慣れない私。アイコンに合わせて丸ボタンを押す。
「、、きた、、きた、きた、きたきたきたきたきたきたきたきた!!!!!!!待ちに待った大新作(?)!!!待望だったよ!!!オープニングからわかるこの神ゲー感!最高すぎかぁ???てか、グラフィック良すぎじゃね??もうエロいの境地に達しちゃってるよ、、、。、、、わぁ、、凄すぎて。黙ってらんないよこれ、、。明日は土曜日!!オールでやる気まんまんで草w」
目の前に広がる世界に興奮が抑えきれず夜の8時に三十路のOLがテレビを見てニヤニヤしているという気持ち悪い図が出来上がった。
そう、私は三十路にもなって一つとして恋もしない、結婚願望もないただのRPG厨だ。
はっ、悲しいかよ。ふざけんな。
この間同窓会的なのに行ったら、ついこの間まで「絶対末代だよな!?」と同盟を組んだヤツは、「俺子供できたんだよね」と父親の顔になって言うもんだから、うるさすぎてご祝儀をあげた。
会社の周りの人達も「みてみて!」「わぁ!結婚したのあめでとぉ!」の会話をよく耳にする。わざわざ薬指見せるとかウザすぎたから結婚式に30001円握りしめて行ったよ。
「はぁ、、結婚とかどうでもいい、、、。なんなら、RPGと結婚しちゃう?、、、はっ、なんてね」
今日のために終わらせてきたから残業続きで辛かったなぁ。
でも、今の幸福度からするのそんなのチャラにできてしまうほどだ。
そんな能天気な私を親が止めないはずもなく、「孫を抱かせてよ!」「結婚はして損わないわよ」「人生の晴れ舞台が見たいわ」
はぁ、、街コンとか行ってみようかなぁ。
カタン
「ん?」
足先から無機物な音がして、なんとなく下を見ると、 そこには男友達から「お前も乙女になれ」と言われておしつけr ((もらったゲームのソフトだった。
なんとなく手に取りパッケージを見る。
そこには、後ろを向いている金色の髪をハーフツインにした少女の周りを14人のヒーローと思われる奴らが個々で薔薇の花やらなんやらを持ち少女の後について行っているような感じだ。
これは、私が初めてやった乙女ゲーである。
「、、どーせ、私は乙女にはなれねーよ、、」
何度も言うがもう三十路なんだ。三十路のおばさんが、「もう!本当キュンキュンしちゃう!」って目をハートにしてるとか考えてみ?怖いでしょ。普通に。ホラーでしょ。B級の。
、、、、。
まぁ、でも、この乙女ゲーは思った感じじゃなかったけどね。
私が思っていた乙女ゲーは、なんか学校でキラキラ〜っとした男子達に好かれちゃう!みたいな感じだった。
でもこの乙女ゲー、、[恋する主役は我々だ!?〜魔法学校の恋ははちゃめちゃ!〜]という題名馬鹿らしいものは、セオリーどおりにストーリーを進めると友情エンドにしかならないようになっているのだ。
「本っっ当。マジで。全一枚絵、全エンド回収、全サブスト回収の大変さはヤバかったよ」
どんなに口頭で説明しても頭が?で埋め尽くされること間違いなしだと思うので例を出すと、
「もう直ぐ授業が始まる!」ってとき。
この時ヒロインが恋愛エンドをするには、どうしたらいいのか?
セオリー通りだとここは、“教室に行く”ことだ。しかし、この乙女ゲーでは教室になんて行っちゃいけない。なんなら、教室に行くと攻略対象からは「こいつ、ほんま真面目よな。俺とはあわんやろ」ってこってこての関西弁で言われる。
そうこの時起こすべき行動というのが、
“教室に向かわない”である。
教室に向かわずに保健室や、闘技場、魔法室、屋上、エトセトラエトセトラ。そうすることで、攻略対象に接近することができるのだ。「一緒にサボらへん?」や、「おぉい!今授業中やろ〜!何してんねん〜!」とクソデカボイスで言われたり。これに気づいた時は、思わずコントローラーを投げ捨てたよ。
「ん〜〜、、本当クセが強いゲームだったよ。そこらのへたなRPGよりむずかっただよ」
てか、グラフィック最強すぎかぁ、、??キレそう。
なんて思いながらキャラ設定(キャラクリ)をしているときだった。
「あ、これ魔法の種類選べるんだ」
その中で一つ目にとまったのが、「黒魔法」という文字。
確か、あの[こいわれ!?]でも誰かが使っていたような、、、?
「、、、あ!悪役令嬢さんじゃん。あの、高スペを持ちながらにして全てを低スペにするで有名なあの〜、、そう!〇〇・ヴィルヴァルト!!」
この悪役令嬢は、黒魔法持ちなのだが、自分の美貌に酔いしれて婚約者に振られるのだ。
しかも最悪の結果で。
婚約者は、攻略対象のなかにいる。その婚約者は生徒会長という権力を持っていて、いつも悪役令嬢さんに振り回されていたのだけれど、ヒロインさんを見て心が癒されたのか、ヒロインさんの行くとこ行くとこについて行くようになった。
それを見た悪役令嬢さんは、許せるはずもなくただただヒロインにひたすらに嫌がらせを続けたのだ。もうその嫌がらせとかも、悪役令嬢さん馬鹿だからさぁ、殺人未遂までしちゃうとか頭悪いよ本当に。
それを知った婚約者さんは激怒した(メロス)。
そして、公開処刑にしたのだ、、、、。
「、、ふっ、本当狂ってるだろこのゲーム。婚約者がその国のトップとかww流石に笑えてくるよww」
、、、、。
でも、もし誰かに「[こいわれ!?]のなかで一番好きなキャラって誰!?」と聞かれたら、「悪役令嬢さん」と答えるだろう。
なんとなく、なんとなくその、悪役令嬢さんの寂しさがわかるのだ。
「、、、はぁ、神ゲーの最中に思い出したくないこと思い出したんだけど、、最悪」
もう、寝るか、、、、。
私は、スーツを着たまま寝てしまった。
翌日
ピピピ ピピピ ピピピ ピピ(ガシャ
「ん、、、」
いつもいつも毎時間毎分毎秒間違えずによく私を起こしてくれるよなぁ。
クソ真面目な目覚まし時計を壊したくなったが、そんな怪力持ち合わせているわけでもなく、、、。虚しくただ強めに目覚まし時計を止めるだけの行為になった。
「なんか、食わんとなぁ」
いやいや、体を起こし慣れた手つきで冷蔵庫の中を見る。
「、、、、いや、え、、嘘やん、、」
冷蔵庫の中身は何一つなくなっていた。
は?なんで、、、。
「あ!?あぁぁぁ!そっか、昨日金曜だからなんか買って帰らなかんかったやん、、!」
無我夢中で走っていたから気づかなかったが、昨日で一週間分の食料はなくなっていたのだよ。
「あ〜!もう、最悪なんだけれども、、、」
なんか買いに行かないとだなぁ、、、。
思い足取りでスーツを脱ぎ、そこらへんにあったパーカーとジーパンを履いて外に出る。
「今日思ったよりあったかい、、、」
コツコツと昨日よりも大人しく大人しく階段を降りる。
はぁ、、本当何やってんだか、、、。久々の大興奮で大事なこと忘れるとか、、。もう、本当さぁ。馬鹿かよって。あの悪役令嬢かよって。
「はぁ、、早く帰ってゲームしたいな、、」
そう少し足早に最寄りのコンビニに行こうとした時だった。
それは、突然だった。
「んー、何食べたいかな、、、」
パンかなぁ、、。パンにしよ。
??「、、、、死ね」
「へ?、、っっっ!!」
知らない男の声がしたと同時に、私の腹部から何か刃物のようなものが出てきた。グチャリという音と共に、ものすごい痛みで一瞬にして頭の目の前は真っ白になる。
ゴーンゴーンの頭の中を誰かに撃たれているような感覚。
心臓はドクドクドクドクドクと忙しない。きっと今尋常じゃないくらいに呼吸が乱れているからだろう。
「はぁはぁはぁ、、?はぁ、っ、はぁはぁ」
??「はっ、本当無様だよw、かわいそうn、、、、?、、あッッ!なんで、なんであいつじゃないんだよ!!!!!クッソッ!!あいつはどこだよ!!!!!!!!!」
そう青ざめながらどこかに行った、、。
、、もしかして人違い、、、?
そんな事を思った瞬間、テレビの電源が切れるが如く、私の意識はプツンと途切れた、、。
あぁ、なんか、本当馬鹿みたいな人生だったなぁ。
あ、あの乙女ゲー、返すの忘れてたや。
どうしよっかなぁ、、。まぁ、取りにくるだろ。あいつのことだし。
??「〜〜〜!!〜、、、〜!〜!〜〜ま!〜〜さま!!〜〜!」
誰だ?助けてくれているのか?
いやぁ、ありがたいけど多分救わなくていい命ですよぉ〜、、、。
??「〜〜さま!〜おさま!、、、お嬢様!!!」
「、、へ、、、?」
そこにいたのは、メイドさんがつけるヘッドドレス姿の黒髪の女性。多分より少し下ぐらいの年齢。
死ぬほど焦ってる。めっちゃ汗かいてるし、、。
大丈夫って言いたいのはこっちだよ。
??「はぁぁ!やっと目が覚めました!!お嬢様っ!大丈夫でしたか!?」
お嬢様?誰かと間違えてんのか?それとも、メイド喫茶の延長線??いや、そんなわけないよ。
「取り敢えず、その、はい。大丈夫じゃないです。えっと、あの、なんか多分黒い服着てた男の人が多分殺人未遂行為をしたので、、あの、警察を、110番してください、、、」
そう言うと、メイドさんは、さっきとは打って変わって今度は変な顔をした、、、。
??「黒い服?110番、、、?お嬢様何を言っているのですか?殺人未遂行為、、、?、、やっぱ、お嬢様!どこか頭でも打たれたのでは!?お嬢様がそんな難しい言葉知ってるはずないですからね!」
「いや、、酷いですね。だって、ほら、ここらへんに、、、、、、?ん?」
刃物が突き出ていたはずの腹部を触ると、何もない、、。というより、服の装飾で少しゴワゴワした感触を感じた。
え、私パーカーで出たはずなんだけど、、。
「、、、え!?何この格好!?!?パーカーは!?ジーパンは!?何このフリルの服!!、、、なんで微妙にダサいんだよ、、。てか、なんか、縮んでない、、、?私」
ピンクでリボンが嫌と言うほどについているそれは、三十路の私には痛すぎるものだった。
そして、私の視線は明らかに死ぬほどに下がっていた。
??「お嬢様、、?本当に大丈夫なんですか?」
目の前で何が起こっているのかわからないとでも言うように、メイドは視線を合わせながら顔を覗いてきた。
「、、あの、」
??「はい!」
「私って誰ですか、、、?」
??「はい?」
「だから、、その、、。あの!意識はあるって言うか、記憶もあるので、ただ確認のために、、」
なんとなく羞恥心が襲ってきて、下からメイドさんの顔を覗く。
メイドさんは、納得したようにあぁ、と溢し今度は胸を張りながら、
??「貴方は、ヴィルヴァルト家の娘である、〇〇・ヴィルヴァルトではないですか!!」
キラキラした笑顔を向けながらメイドさんは、私に言った。
え、、。これって、もしかして、もしかしなくても、、、、。
「、、転生、しちゃったって、ことっ、、!」