テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
……直美さんがうちの夫を羨ましいなんて……
すっぴんだったけど、彼女のお肌は艶々で、やっぱり旦那さんに愛されているからでしょ?
平凡な家庭で、平均的な幸せの中にいるはずの自分が、鏡の中にいる。
フラワーアレンジメント教室へ行こうと、髪を整えているのだけれど…きちんと髪を整え、フルメイクをした目の前の自分が、髪を一本にまとめただけのさっきの直美さんより不幸に見える。
……見えるだけでなく、本当に不幸なのか……
それは、直美さんの旦那さん…中西さんのような、妻を女として愛してくれる男性と結婚すると、脱することができるのだろうか…
「はぁ…とりあえず…もう行かなきゃ……」
こんなに重い気分でアレンジメント教室へ行くのは初めてだ。
日傘をさして歩き、公民館が見えた頃…いつもなら
“今日の花材は何かな?”
とワクワクするのだけれど、今日は
“少なくとも私はもっと亜優を優先して可愛がるパパになって欲しいんですよね”
……亜優ちゃんより、優先されているってことよね。
直美さんがチラッと漏らした、旦那さんの溺愛エピソードが頭にぐるぐるとしている。
「おはようございます」
すでに着席している方たちに挨拶しながら、空いた席につく間に
「おはようございます、秋山さん」
「おはようございまぁす。暑くなってきましたねぇ」
とか、皆さんもハサミなどを準備しながら挨拶してくれる。
この人たちも
昨夜は旦那さんに抱かれたのだろうか
今夜抱かれるのだろうか
旦那さんと手を繋いで出掛けたりするのだろうか
そんなことを思うと、皆さんそれぞれが、幸せに満ちた明るい笑顔を振りまいているように見えてきた。
向かいの席にやってきた人は、私と同じく何年も通っている50代の女性。
その艶やかな髪と肌は、愛されているから?
直美さんの愛され幸せが、50代60代になっても続くのだとしたら…やっぱり女として私より彼女の方が幸せなのよね…羨ましい。
過去にない注意散漫状態でレッスンを終えたこの日。
私自身の幸せを確かめたくて、私は夫の好物を夕食に並べた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!