テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
56
雫
16,491
ちょっと口が悪いふたりの
両片思い勘違い❤️×🧡🔞
🧡side
家族が好き。友達が好き。地元が好き。
歌うのも、踊るのも好き。
笑い合うのが好き。
俺にはいっぱい好きなもんがある。
でも、それとは別の意味で、最近好きなもんが出来た。
モノ、というより、人やな。
好きな人が出来た。
大阪から出てきて、都会の街に飛び込んだ。
慣れ親しんだ大好きな地元から離れるのは怖くて、元より結束の硬いグループに俺が入るのは烏滸がましく思えて。
だけど、打診された時に俺に残された道はYESと答えるしかなくて。
この機会を逃せばもうデビューなんて出来なくなるかもしれない。
そんな事が脳裏に浮かんで、大好きな土地からひとり旅立つことを決めた。
初めての都会での生活。
慣れない道、慣れない電車、慣れない事務所。
日々が慌ただしく過ぎては、必死に食らいついて。
葛藤もあっただろうに、温かく迎えてくれた6人のお兄ちゃんたち。
この人たちの為に頑張りたいと思えた。
でも、当たり前に過ごしていた日々とは違い、何もかもが未知で孤独な世界は、俺を追い込むには十分すぎるほどで。
大阪に帰りたい。
メンバーとの気遣いも疲れる。
怖い、楽しくない、おかんのご飯が食べたい。
毎日泣いては、気が滅入って。
ダンスのスキルすら格段に違う6人に、自分が情けなくなる。
一緒に加入しためめはめちゃくちゃカッコええし、ラウールなんて身長からしてズルい。
俺だけ何も持ってへん。
その事実がずっと根底にあって。
そんな時に声をかけてくれてたのが、舘さんやった。
俺がダンスを覚えれなくて泣いていても、必ずタイミングを見つけて探しに来てくれて、隣にいてくれる。
ご飯にも連れてってくれた。
「康二はそのままでいいんだよ」
なんて、まぁ嬉しいことも言ってくれた。
気付けばずっと目で追ってる存在で。
気付けば、いつの間にかそれは恋へと変わっていた。
「また泣いてる」
コツ、と頭に当たった軽いものに、伏せていた目をあげれば、ペットボトルに入った水を揺らしながら舘さんが立っていた。
階段の隅っこで膝を抱えていた俺を覗き込んで、眉尻を下げて。
なんですぐ見つけんねん、と心の中で思うのと同時に、また見つけてくれた、と嬉しさが込み上げる。
ずび、と鼻を啜った。
「…なんやねん」
「それ俺のセリフだし。今度はなにしたの」
「別に…」
「翔太と喧嘩したんでしょ。聞いた」
「聞いたんなら聞くなや」
「康二の口からも聞きたかったんだけど?」
ムスッと唇を尖らせれば、気の抜けるようなふにゃっとした顔で笑って俺を見る。
ズルいねん、その顔。
かわいくてしゃーない。
ほら、これだけでも好きが溢れるくらい、胸がぎゅーってなんねん。
俺が目線を逸らせば、伸びてきた手が髪を撫でた。
「泣くな。翔太も言いすぎたって反省してるし。ほら、戻ろう」
俺の手を引いて、立ち上がらせる。
腕で目を擦れば、向き合った舘さんの指が目尻に触れた。
思わず触れた片目を閉じた。
分厚い手のひらが頬を掠めていく。
「あんま擦んな。浮腫むぞ」
「…うっさいねん」
「あーあ。せっかく探しに来たのにかわいくねぇの」
「誰も頼んでへんやん…」
天邪鬼な俺の言葉。
舘さんの前では上手く素直になれなくて。
いつも減らず口を叩いてしまうのに、それでも舘さんは優しい。
そんなとこが好き。
そんなとこも好き。
やけど、舘さんには言えへん。
舘さんの目には俺やなくて、別の人が映っとるから。
「ほら、翔太。康二連れてきたぞ」
俺から離れて、舘さんがしょっぴーのとこに行く。
幼なじみってのは羨ましいもんや。
ずっと小さい頃から知っとるんやもん。
まだ数年しか一緒に居てない俺とは、関係の深さが全然ちゃう。
俺と同じようにちょっと唇を尖らせて、ふてくされてるしょっぴーが舘さんに押されて目の前に立つ。
仲直り、なんて言って、俺の手としょっぴーの手を持って触れさせて。
俺の手だけ握ってよ。
そんなちっぽけな嫉妬すらしてしまう。
「康二…ごめん。言いすぎた」
「や…俺も、ごめんなさい…」
俺らが和解すると、満足したように舘さんがしょっぴーの肩に手を置いた。
それから耳に口を寄せて何かを囁いて、しょっぴーがふと笑って、舘さんを小突いた。
そんな一連のやり取りを目の前で見せつけられて、俺の目にまた涙が出そうになる。
踵を返して、バッグを持って楽屋を出た。
後ろで舘さんが何か言いかけたのを聞こえないフリして。
毎日見てたら分かるんよ。
東京に出てきてから洞察力はあがったと思う。
気を張ってた分、余計に人の顔も、動きもよく見るようになって。
やからやろうな、舘さんの視線の先におる人のことに気付いたんも。
分かるよ、俺もずっと見とるもん。
だから余計にキッついねん。
こんなん毎日目にするとか地獄やろ。
「めめぇ…俺はどうしたらええんやろか…」
ソファーでめめの膝の上に寝転がって、ご飯を頬張って俺なんか全く見ないめめに問いかけた。
俺が舘さんを好きって、唯一相談した相手。
ちょっと天然で、だけどストレートな言葉を持つめめだからこそ、相談しやすくて。
もう何度も同じ質問をしているからか、めめは最早聞く耳も持ってはくれない。
もぐもぐと口を動かしながら、片耳にイヤホンをさしてるめめは、マジで俺の話ひとつも聞こえてへんらしい。
ちょっとは気にせぇよ!と、めめの背中に腕を回して、腹に顔を埋めるように抱きついた。
再度見上げれば、めめがすっごい面倒くさそうな目で俺を見てて。
渋々イヤホンを外して、なに?と聞いてきた。
「やから、俺どうしたらええかなって…」
「知るかよ。舘さんにそのまま言えばいいじゃん」
「言えへんから相談しとるんやんか〜!どうみてもしょっぴーが好きやろ…」
「別に、好きでも振り向かせればいいじゃん」
そう言ってまたイヤホンを耳にさす。
毎回同じ返答。分かりきってる。
めめの言う通り、振り向かせればいい。
でも、長年の積み重ねが違う相手だ。
勝てる理由が見つからなくて、俺はしり込みしてしまう。
勝てると思う相手やったら、そらアピールしまくるわ。
勝てへんから言うとんのよ。
指先を弄って、はぁ、と深く息を吐いた。
「康二、次、出番だよ」
足元からふっかさんが呼びかけられて、めめの膝から起き上がる。
先行くからな、と楽屋を出てったふっかさんを追いかけようとして、ふと舘さんに目がいった。
どうしても視界に入れてしまう。
入れなきゃいいのに、見たくないのに、無意識に目を向けて。
珈琲を飲む舘さんの肩に背をかけて、横向きでソファーの上に足を組んだしょっぴー。
お互いに何も話してもないのに、割り入る事が出来ない雰囲気に、ぐっと下唇を噛んだ。
ほら、めめ、見てみぃよ。
俺の入る隙なんてないやんか。
見ていた事が気付かれないよう、視線を前に戻して楽屋の扉を閉めた。
舘さんが好き。
メンバーももちろん好き。
グループ自体が好き。
大阪から離れて数年経った今、あの時の決断は間違ってなかったって思ってる。
日に日に好きは増してくし、日に日に俺は舘さんを目で追っては泣く日が増えた。
もう泣かんよって決めても、会えば苦しくなる。
俺が泣いてれば舘さんは見つけに来てくれるけど、それはメンバーとしての心配と、弟のような可愛がりもあるだろう。
どうしたら、俺の事だけ見てくれる?
俺はどうしたらええ?
自室のベランダの窓を開けて、サンダルを引っかけて外に出る。
片手に持ったビール缶を一口煽って、柵に手をかけた。
生温い風が肌を撫でて、前髪が攫われる。
チカチカとあちこちで光る車のヘッドライト、街灯の灯り、まだ同じように起きている人たちの部屋の明かり。
それらをぼんやりと眺めながら、ビールを飲んで。
スマホをポケットから取り出して、指でスクロールした先にある、舘さんのLINE。
『なにしとる?』
と、打とうとして、画面を暗くした。
脳裏に浮かぶのは、へにゃっとしたあの笑う舘さんの顔。
今日も会ったばかりなのに、もう会いたくなってる。
「…舘さん、俺、いま泣いとるよ…」
柵に置いた腕に頭を預けて、瞼を閉じる。
耳に流れていく涙が冷たい。
また泣いてるって、笑ってよ。
どうしたの、って声が聞きたい。
好きやわ。どうしようもなく。
その柔らかな低い声も、触れる手の温度も、眉尻を下げて歯を覗かせて笑う顔も。
全部、俺に向けてよ舘さん。
「えっ…くしゅん!」
次の日の朝、外はそんなに寒くないのに、鼻がムズムズして。
楽屋で各々ヘアセットやメイクをしてる最中、割と大きいくしゃみをしたら、全員の肩が跳ねた。
みんなして俺を見て笑ったり、茶化したり。
そんな中で舘さんだけが立ち上がってティッシュを差し出してきた。
「なに、風邪?」
「ちゃうよ。昨日ベランダで涼んでたからかな」
「…泣いてた?」
「んなわけあるかいな。ビール飲んでたの」
ティッシュを貰って鼻をかむと、それをジッと見てフッと笑われた。
マジで何考えてんやろ、てたまに思う時がある。
普段からポーカーフェイスで考えてる事がよぉ分からん。
そんな顔せんといてよ。期待してまうやん、なんて。
舘さんの手が俺の前髪を梳いて、手のひらが額に当たる。
間近にある舘さんの顔が、上目遣いで俺を覗いて、 吸い込まれそうな瞳の中に俺を映す。
なぁ、ほんまにやめてよ。
心臓に悪いねんて。
「熱はないな。あんま無理すんなよ」
「…分かっとるし」
あげられた前髪を直すように指で弄って、顔を隠した。
離れていった手のひらの熱さが、自分の顔も熱くする。
パタパタと手で仰いでると、 横にいためめが椅子ごと俺に少し寄って、良かったな、なんて呟いた。
「俺はいけると思うけどね」
「なんの話よ」
「大丈夫だよ、康二なら」
「…無理やって」
たった一瞬、触れられただけでこんなにドキドキしてるのに。
これで告白して振られたらきっと立ち直れへん。
なら言わない方がマシや。
まだこうやって想っとくだけの方が、俺を追ってきてくれるし、見てくれるし、触れてくれる。
それが例え想う相手が別だったとしても、俺はこれだけでも十分やねん。
気まずくなりたくはない。
ずっと一緒にアイドルやりたいもん。
……でも、想って泣くのだけは許してよ。
俺に背を向けた舘さんに、心の中でそう呟いた。
自分の番の撮影が終わって、照兄がふっかさんと打ち合わせしてる中、ひとり楽屋に戻った。
俺たちの次はさっくんと阿部ちゃんとラウール。
その次にめめと舘さんとしょっぴー。
指折り数えて、スタジオから楽屋までの長い廊下を歩く。
次の組はもう撮影が始まってるから、まだ楽屋にいるはずの、めめと舘さんとしょっぴーを呼ばなきゃ。
そう思って曲がり角を曲がったところで、めめと遭遇した。
「あれ、めめ。ちょうど呼び行こ思っててん」
「あ、そうなの?俺、トイレ行ってて。しょっぴーたち先に行ってない?」
「いや、会わんかったよ。まだ楽屋おるみたい」
「…一緒に呼びいこうか?」
「ええのに…。俺は大丈夫やよ」
「その顔。絶対なんか怪しんでるでしょ」
ぶに、と頬を抓られて、何も言えなかった。
そんなん、怪しむに決まっとるやろ。
楽屋にふたりきりやで。
なんも無い、とは思ってても、舘さんが好きな相手やもん。
俺の複雑な顔を見て察したのか、めめは楽屋までまた戻って着いてきてくれた。
「楽屋でなんかしてたら岩本くんに怒られそうだし、何もないと思うよ、あのふたり」
「…めめは舘さんの気持ち知らんやろ。見て分かるやん」
「分かってないのは康二も舘さんもだろうけどなぁ」
「なんやそれ」
めめと肩を並べて話しながら楽屋まで。
ちょっと緊張しながらドアに手をかけた。
少し開いた隙間、舘さんとしょっぴーの会話がふと耳に入る。
『好きだからだろ』
紛れもなく、舘さんの声。
ドアを開ける手に無意識に力が入った。
後ろにいためめにも聞こえてたらしく、めめが俺の肩に手を置いて、もう片方の手がドアノブを握った俺の手に重なって開いた。
「舘さん、しょっぴー。今度俺らの番だって」
俺の頭の上、低いめめの声に泣きそうになった。
情けない。こんな事ですぐ俺は泣く。
俯いた俺の肩をめめが抱いたまま、少しだけ後ろに引かれた。
顔を見せないためだろう。
余計に耐えれんくなるやん。
めめの手を取って、ごめん、と呟いてその場を離れた。
多分、上手くめめは誤魔化してくれる。
聞き間違いかもしらんし、しょっぴーに対しての言葉やないかもしらん。
でも、あの言葉は聞きたくなかった。
胸が痛い。
好きやもん。大好きやもん。
今まで当たり前にあった好きとは違う、手に入らない好きの苦しさ。
とぼとぼと廊下を歩いて、たまたま開いていた空き部屋にそっと入って腰を下ろした。
膝を抱えて丸くなる。
鼻を啜っても、差し出されるティッシュはない。
次呼ばれてるから、きっと追ってもこない。
だから今は、泣いてスッキリして、なんも無かった顔で戻ろう。
分かっとるもん、舘さんが誰を好きかなんて。
奪えるなんても思ってないけれど、実際に耳にしたら思ったよりキツイ。
「…あかんなぁ……」
腕の中で、瞼を閉じて呟いた言葉は小さくて。
誰にも聞こえない俺の声。
腕の隙間から、涙が床に落ちていく。
シンとした部屋に、俺の泣く音だけ漏れていた。
「……また泣いてる」
髪の毛にコツンと当てられた何かと、聞き慣れた声。
咄嗟に顔を上げた。
汗まみれで、息切れして、せっかく整えたヘアセットもぐしゃぐしゃにして。
ちょっと怒ったような顔をした舘さんが、水の入ったペットボトルを俺の頭に当てて、俺を見下ろしていた。
「…な、んで…。撮影は…」
「急いで撮ったわ、バーカ」
「バッ…なんやて!?」
「…っはぁ…探したわクソが…」
袖で顎に滴る汗を拭って、ペットボトルのキャップを開ける。
ごくごくと流し込まれるのを、呆気にとられながら見上げて。
それから舘さんが俺の前に膝をついてしゃがみこんだ。
目が合う。
舘さんの瞳に、俺がちゃんと映りこんでる。
「どしたの」
優しく言わんでよ。
さっきまでしょっぴーに対して、その声で好きだなんだ言うてたくせに。
顔みたらあかんねやって。
泣いてまうやん。
「康二」
舘さんの手が髪を撫でる。
あかんて、それされたらいくら口を結んでても緩んでしまうから。
ほら、すぐ嬉しくなって、ニヤけるのを抑えるのに必死だ。
ちょっとガサついた指先が髪に引っかかって、少し引かれるのが痛い。
でも、心地いい。
瞬きをすれば、睫毛にのった涙がパタッと落ちた。
「……も、しんどいねん。舘さん、優しくせんでよ…」
俺の頭に伸びた腕をぎゅっと掴んだ。
その手が震えてるなんてきっと、舘さんにはバレてる。
一度零してしまえば、溢れでるように言葉が落ちて。
舘さんの顔が見れなくて、顔を伏せればまた床に水滴が染みを作っていく。
「いややもん…しょっぴーやなくて、俺を見てよ。俺だって舘さん好きやから、しょっぴーには敵わんかもしらんけど、でも、好きって気持ちは負けてへんもん…」
手の甲でぼろぼろと流れる涙を止めようとしても止まらない。
堰を切ったように感情が溢れでる。
俺の髪に置かれた舘さんの手は動かなくて、舘さんも一言も発さなかった。
それが怖くて、それ以上何も言えなかった。
一時の沈黙。
あまりにも舘さんが何も言わんから、恐る恐る視線をあげた。
小さいおちょぼ口が、ぽかんとあいたまま、眉間の皺は寄っていて。
「は?」という顔をしていた。
何やその顔、って俺まで眉間に皺がよった。
人の真剣な想いをどういう顔で受け止めてんねん。
「…なんか言えや、アホ」
「…いや…え?康二は目黒の事が好きじゃなかったの?」
「はぁ!?」
「え、だって、いつも目黒の膝に寝てるし、目黒にいつもコソコソなんか話してるし、今日だってやけに距離近かったし…」
掴んでた舘さんの腕を離せば、舘さんの手も俺から離れた。
パニックになってるみたいで、何度もチラチラと俺を見る。
そんな様子が面白くて、思わず吹き出すと、余計に混乱してるようだった。
そっと手を伸ばして、舘さんの頬に触れる。
なんや、意外と簡単に触れられるもんなんやな。
「…俺はずっと舘さんの事しか見てへんよ」
舘さんの目を見て真っ直ぐに伝えた。
けど、恥ずかしくてすぐに目を逸らして。
頬に触れた指先すら熱い。
このいたたまれない空気が嫌なんやって。
はよなんか喋れや。
そう思った矢先、舘さんの顔が急に目の前に来て、下から掬うように唇に何かが触れた。
瞬きをすれば、舘さんの顔。
頬に触れてた指はいつの間にか握られていて。
「……俺も、康二の事が好きなんだけど?」
息がかかるほど近くで紡がれた声。
てか、なに、どさくさに紛れてコイツちゅーしてきよった!!
勢いで唇を覆うと、あのへにゃっとした気の抜けた笑顔を見せた。
不覚にもキュンとした。
どんだけ好きなんよ、俺。
「…しょっぴーに好きだからて言うてたやん…」
「え?あ、あれ?違うよ。翔太には康二の事を相談してて…。好きだから告白は出来ないって意味で…」
「…めめが好きって思ってたからか?」
「うん…」
「俺も…俺も舘さん、しょっぴーの事が好きなんやろなって…だからめめに相談してて…」
アホみたいやん、俺ら。
お互いにお互いの事を想っとるんに、別の人が好きやて思い込んで。
そらすれ違うわな。
アホやけど、アホでもええよ。
一緒っちゅーもんは嬉しいからな。
俺がへらっと笑うと、舘さんも嬉しそうな顔をした。
ちゃんと俺を見てる。
それが嬉しかった。
「なぁ、舘さん。まだ信じられへんねん…。やから、もっかいしてくれへん?…ちゅう」
そう言って、舘さんの服を引っ張って、唇を尖らせた。
だって、さっきのはあまりにも不意打ちで。
本当に触れたかどうかすら分からなくて。
今お互いに好きだという証明すらもあやふやで。
本当に?舘さんが俺の事好き?
信じられへんやん。ずっと想っとった人と両想いだなんて。
「…かわいいよねぇ、ほんと…」
舘さんがまた眉間に皺を寄せて、ため息をつく。
いや、するなら早よせぇよ。
唇尖らせとる俺が恥ずかしいやん。
変な汗かいてきたし。
耐えれなくなって、瞼を閉じる。
ふふ、と笑った舘さんの声が耳を擽った。
吐息が近くなって、更に強く瞼を閉じた。
手が重なる。
舘さんの匂いが濃く感じた。
「キス、してもいいけど、止まんなくなりそうでヤダなぁ…」
触れる寸前で、いやもしかしたらちょっと触れたかもしれない距離で、舘さんが呟いた。
目を開ければ、瞬きすらも触れ合うほど近くて。
止まんなくなる。
その意味が少し考えて、理解して、顔に血が登った。
「な…何言うて…」
「俺がこの数年、どんだけ我慢したと思ってんの?俺も立派な成人した男なんですけど」
「いや、そらそうやけど…」
「なに?康二も俺のことが好きなんでしょ?そういう好きじゃないの?」
「す…好きやけど…」
「言っとくけど、キスで止まれるほど余裕ないよ、今」
舘さんが舌で自分の唇をぐるりと舐めた。
ライブとかで煽る時によくやるやつ。
待ってよ、俺だって頭追いついてないのに。
だって普通、告白して、デートして、手繋いで、キスしてって順番やん。
ライブとかで手とかは繋ぐけど、意味もちゃうやん。
いや、キスしてって自分から強請っとる時点で順番もクソもないけどな。
俺が何かを言う前に、舘さんが目を伏せた。
少し開いた口から見える歯が白くて、かわいいなって思った。
それから俺も瞼を閉じる。
触れた瞬間に、うわって思うほどの痺れる感覚。
ライブで他のメンバーにキスしたことはあるけど、ノリやし、こんなゆっくり人からされるのなんて初めてで。
柔らかい厚みのある唇が、ふに、と俺の唇に当たる。
内心パニックや。
目開けれへんし、口もどうしたらいいか分からんくてただただ受け入れた。
「口、開けて」
「へ…ッん、わ…!!」
言われたまま、口だけを開けると舘さんの舌が入ってきた。
俺の舌と絡まって、えっちな音がする。
どうしようも出来ない俺の舌を巻き付けて、吸われて。
その度にびくびくと身体が小刻みに跳ねる。
「んッ、ん…ぁ、は…ッ…んぅ…ッッ」
「…ねぇ、やっぱ我慢出来そうにないんだけど」
重ねられた手を舘さんの心臓に当てられる。
ありえんくらいにバクバク音を立てて、余裕のない表情に俺の心臓も早くなった。
たった今、好きだと分かったばかりなのに。
でも、長年想いあった相手だ。
嬉しくて手を出したくなる気持ちは、俺も男だから分かるよ。
「……家、帰ってからにして」
そう言った俺に、もう一度、触れるだけの軽いキス。
これだけでも息あがってんのに、どうなんねんやろ、なんて思いながら、息を整えてみんなが待つ楽屋へ戻った。
何も無かったフリして、いつも通り泣いてる俺を舘さんが連れ戻したようにして。
目は合わなくても、隣に立って肩を並べるだけで、さっきの熱が伝わってくる。
はよ帰りたい。それはきっと舘さんも同じで。
仕事が終わって、バタバタとなだれ込むように俺の家に上がり込む。
玄関の扉を閉めれば、もう我慢なんてしなくてよくて。
扉に両手を押さえつけられてキスが繰り返される。
喰むように唇を何度も重ねて、何度も角度を変えて、息継ぎの為に口を開ければ舌を捩じ込まれて。
俺の足の間に舘さんの膝が差し込まれて、ズボン越しにグリっと股間を押された。
「んーッ!!!ちょお、舘さ…ッ!!落ち着けや!!」
「…我慢できないって言ったじゃん 」
「初めてやぞ!もっとこう…ムード作ろっかな〜とか、優しくリードしてやろう…とか、そんなん無いんかい!」
「余裕ねぇつってんのに、ムードもなにもあるかよ」
「んッ!!も…っ、アホ!!」
逃げるように顔を逸らしても、すぐ追いかけてキスされて。
しつこい。だけど、そんな所が好き。
どれだけ俺が逃げたとしても、舘さんは絶対に俺を追いかけてくる。
それはいつもの行動と一緒のように。
「舘さ…ココじゃいやや…ッ、ベッド行こ…」
今さら、逃げはせぇへんよ。
覚悟しとるもん。
俺のこと好きって、たくさん言って。
数年分の積もりに積もったもの、どんくらいあるか教えてよ。
少し緩んだ手の拘束を解いて、舘さんの首に腕を巻き付けた。
何も言わずに、舘さんは俺を抱っこして寝室まで運ばれた。
ベッドの上で身に纏ったものを全て剥がされて、舘さんも全てを曝けだして。
寝かされたシーツの上でお互いの肌をぴったりくっつけた。
舘さんの体温が温かくて、柔らかくて気持ちいい。
肌を密着させるだけでも満たされる。
けど、舘さんは違うみたいで、勃ってる舘さんのモノが俺のモノに擦り付けられてて、凄い気恥ずかしい。
当たっとる、というより、めっちゃ腰動いとる。
俺も勃っとるけど…そら勃つけど、ほんまにコレからヤるんやなって思うと、ちょっと怖くなった。
「だ…舘さん…」
「ん…?」
「腰動かすのやめぇ!」
「だって早く康二の中にいれたいもん」
「なッ…もう恥ずいて…」
「康二も勃ってんじゃん。嬉しいよ…」
「あ゛…ッ!?」
頬にキスをしながら、舘さんの手が俺のモノに触れた。
そのまま上下に扱かれて、先っぽの敏感なところを捏ねられて。
他人に触れられることなんてないから、自分の手とは違う感覚に一気に質量が増す。
ずっと好きだった人に触られてるというのが、余計に感情を昂らさせて。
歯を食いしばってイクのを耐える。
額からは汗が滲んで、口端からは涎が伝い落ちてゆく。
「ぅ゛、あ゛ァ…ッ!!や゛ッ、ぃ…ん゛ァ…!!」
「康二…声、抑えないで」
「いや…や゛!!っ、恥ずかし…ぁ゛あ゛ッ…!!」
「かわいいよ。もっと聞かせて、お願い」
「あッ、それ…ダメや…ってぇ゛…ッッ!!!」
カウパーで余計に滑って、手の動きが早くなった。
シーツを握りしめても抗えない気持ちよさに、爪先が立つ。
ピン、と足が伸びて、腰が浮いた。
舘さんの手の中に射精した。
最近自分でもやる事なんて無かったから、思いのほか止まらなくて。
人の手に、ましてや舘さんの手に出してしまったということに、一瞬で青ざめた。
「ご、ごめん…汚いのに…」
「なんで?汚くないよ」
手から溢れて腕に流れる俺の精液を、舘さんがわざとらしく、 べろ、と舐めた。
嘘やろ、と思わず声が漏れた。
ほんまこの人なんなん。
こんな積極的になるくらいなら、なんではよ俺に告白せんかってんて思うくらい、別人やん。
でも、その色気もカッコええなんて、俺も相当やと思う。
全てが愛おしくて、好きだなんて言葉じゃ収まらない。
堪らなくなって、舘さんを抱きしめて、俺からキスをした。
薄目で舘さんを見れば、舘さんも目を細めて笑いながら返してくれた。
シーツの中、舘さんが俺の身体を貪ってる。
余裕ないなんて言っても、丁寧に優しく甘やかされて。
もうええて言うくらい、胸も散々弄られた。
舐められて齧られて、甘い刺激に溺れていく。
最初なにも感じんかったのに、もう今じゃ指で触られただけで軽くイッてしまう。
そんな俺に舘さんは満足そうに微笑むだけ。
俺なんかもう涙か汗か分からんほどに顔ぐしゃぐしゃやのに。
舘さんの汗がキラキラ光る。
胸と同様、下も初めてなのに痛みも感じないほど解された。
舘さんの太い指が、俺の中に入ってる。
それだけで何とも言えない気持ちが込み上げて、ぎゅうっと後ろが締まって、舘さんの指の形を感じてしまう。
「…ふ、締めすぎ。そんなんじゃ俺の入んないんじゃない?」
「うァ゛、っ、ん゛ッ、ん…!!」
「ね、いい?康二…」
「あ゛ッ!?バ…カッ!!そんなとこちゅーせんで…ッ!」
俺の片足を持ち上げて、内腿に吸い付かれた。
ビリッとした痛みが走る。
口を離して、跡がついてるのを確認した舘さんの口が緩んでた。
1個じゃ満足出来ないのか、いくつも跡を残していく。
「も゛、ぇえからッ…!!はよ…舘さんのいれて…ッ」
余裕ないって言ったくせに、大人ぶって。
2つ違うだけなのに、どうしてこうも敵わないんだろう。
口は悪いくせに優しいのもズルい。
結局、こうして俺の方からいれて欲しいなんて強請ってしまうのだから。
もう全部、舘さんのにしてよ。
欲しいもん。受け止めたい。
舘さんが好き。大好き。
「うん。俺も、もう無理」
「は…ッぁ゛あ゛ァ…ッッ!!!」
舘さんの指が抜けてすぐ、俺の中に熱いのが入ってきた。
指とは比べ物にならないくらい大きくて、いくら解されてるからっていっても中はキツい。
どんどん奥まで入ってきて、得体の知れない恐怖に身が強ばる。
ギュッと目を瞑れば、舘さんがいつものように髪を撫でた。
「もうちょい…がんばって、康二」
「ふッ…んん…!っ、舘…舘さんッ…ァあ゛ンッ…!」
「… ねぇ、名前で呼んでよ。なんかヤダ」
「ッ…り…涼太…くん?」
「あっはは!うん、それもかわいいからいいね」
あ、俺の好きな顔。
眉尻を下げて、ちっちゃな唇から白い歯を覗かせて、屈託のない笑顔。
いつもキリッとした顔から、気の抜けた顔になるとこ。
ほんま、この人愛おしいわなんて思って、俺も気が抜けた。
少し力の抜けた身体に、更に深く舘さんのが入ってきた。
腹の奥が苦しい。
でも、繋がってるという喜びの方が勝ってる。
好きな人と繋がれるって、こんな幸せなんやなって実感して、涙が出た。
「…すぐ泣く」
「仕方ないやろ…っ、幸せやもん」
「俺も…すげぇ幸せ」
「ん゛ァッ…!!や゛ッ、急に…ッぁあ゛ん゛ッ!!!」
膝裏を抱えて、舘さんが動き出す。
ゆっくり抜けたかと思えば、一気に奥を貫いて。
腹の内側を抉って、弱いとこを掻き乱される。
奥を突かれる度に嬌声が大きくなった。
もう恥ずかしいとか、そんなことも言ってられない。
ただ、お互いに好きだなんだと繰り返しながら激しく交わった。
舘さんの手が、再び俺のモノを扱けば、すぐに吐精して、中が畝る。
それでも舘さんの腰は止まらなくて。
「あ゛ァッ、も…イったッ!!舘さ…ッあ゛、ァん゛ッ!!!」
「は…ッ、康二…名前」
「りょ…たくん…ッ!!涼太…ァ゛、ん゛ぅ…ッ!!」
「はは…最高」
噛み付くようなキスをされた後、俺の中で舘さんがイった。
絡められた指にお互いの力が加わって、強く結ばれる。
酸素を分け与えるように、射精の余韻をひたすら味わいながらキスを繰り返して。
もう無理やのに、キスだけでまた、今出したばかりの舘さんのが中で大きくなった。
「ッん゛…!!も、無理やて…ッ」
「……俺、まだ1回しかイけてねぇし」
「知らんよ!無理や無理…んぅ゛ッ!!ぁ、動くなァッ…!!」
「俺より康二のが体力あるでしょ。まだ、愛し足りないから」
数年分の愛、受け取ってくれるんでしょ?
そう言ってまた、唇を舐める。
ひく…と喉が鳴った。
俺はもしかしたら、いちばん執念深い人を好きになったのかもしれへん。
そんな事を思いながら、結局舘さんが満足するまで抱き潰されて。
翌日、楽屋のソファーで舘さんの膝の上に頭を置いて、寝そべって1ミリも動けない俺を、めめとしょっぴーが見下ろしていた。
舘さんは相変わらずのポーカーフェイスで、何も無かったかのような顔をしているけど、やけにキラッキラしとる。
特に目が輝いて、心なしか顔は変わらんでも全体からウキウキしてんのが丸わかりや。
「……だから言っただろ。康二に早く言えって」
「うん。翔太ありがとう」
「いや…俺は何もしてねぇけど…。お前、ちょっとは加減してやれよ」
腕を組みながら、げんなりしてるしょっぴーが舘さんに怒ってる。というより呆れてる?
めめもしょっぴーの肩に手を置いて頷いていた。
「ね、康二。だから言ったでしょ?舘さんなら大丈夫だって」
「知らんよ…そんなん。めめとしょっぴー知ってたんなら早よ言うてや…」
「うわ、声までガッサガサ!舘さんどんだけヤッたの」
ふたりしてドン引きしてる。
そらそうやろな。俺ですらドン引きしとるわ。
昨日でもうこの有り様やもん。
コレからが怖くてしゃーない。
やけど、嫌いになんてならんし、むしろ好きは増していく。
ふたりに色々言われて、ちょっと気まずそうな舘さんの手を握った。
目が合って、いつものように笑いかけると、舘さんも笑ってくれた。
愛しい人。
これからは泣いてる俺を見つけては抱きしめて、たくさん愛を囁いてよ。
泣き虫も悪くないやろ。
こんなにかわいがってくれるんやから。
甘えて、甘やかされて、好きを増やしてく。
「これからも追いかけてきてな、舘さん」
「当たり前でしょ」
END.
リクエスト
「だてこじorこじだて」おまかせ
ありがとうございます!!!
私的に❤️×🧡で、ふたりならではの空気がすごい好きで…
というかめちゃくちゃハマりました←
甘々でいこうと思ってたんですけど
やっぱりふたりってこうじゃない?という独自の偏見で書いたらめっちゃ長くなってしまいました🙄スミマセン笑
感想お待ちしております♡
コメント
16件
あ、これ、🖤💙で読んでますごちそうさまです←
攻めてる舘様♥️も良き✨ やっぱ こぉじ🧡は受けだよなぁ!と改めて認識できました!! めっちゃ面白かった(ときめいた)♪ しのちゃまさん✨ありがと~😆
やばいめっちゃ好きです…😍 お互い好きなのに🖤💙が好きだと勘違いしてる時点でもう設定が神✨️手加減しない❤️もジャスティスです…🥹