テラーノベル
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13
それは、忘れたくても忘れられない日のこと。
「元貴、いい匂いするね」
その言葉を、僕は何度も思い出す。
最初は、嬉しかったはずなのに。
放課後の空き教室。
何も疑わずに入ったあの場所。
ドアが閉まる音が、やけに重く響いた。
「最近さ、お前俺のこと避けてるだろ」
「そんなことないよ」
「嘘つけ」
距離が一気に詰まる。
逃げようとしたのに、うまく足が動かなかった。
「オメガってさ」
低い声。
「こういうの、嫌いじゃないでしょ」
急に壁に寄せられる。
「やめて……」
腕を掴まれる。
逃げられない。
「だって、好きなんだろ。アルファのこと」
違う。
違うのに。
「違う…っ」
でも、体がうまく動かない。
怖いのに。
「ほら、抵抗してない」
その言葉で、息が止まる。
「やっぱりさ、こういうの嫌いじゃないじゃん」
違うのに。
「やめてって言ってる!!」
勢いよく突き飛ばして、ドアまで走った。
「元貴」
低い声で呼ばれた瞬間、背筋が凍った。
優しく聞こえるのに、逃げ場を奪う声。
「こっち来て」
―やだ
頭ではそう思うのに。
足が、一歩だけ動いた。
「…っ」
自分で自分の体が信じられない。
止まれ。
止まれって思ってるのに。
「ほら、ちゃんと来れるじゃん」
満足そうな声。
胸の奥がざわつく。
「やめて…」
かすれた声で言う。
でも、彼は笑った。
「なんで?」
一歩、近づかれる。
逃げなきゃいけないのに、体が重い。
「オメガなんだからさ」
その一言で、呼吸が浅くなる。
「アルファの言うこと、聞きやすいでしょ」
違う。
そんなの、違うのに。
「…やめて」
震える声が、情けない。
「やめてほしかったらさ」
指先が、顎に触れそうになって 止まった。
「ちゃんと嫌がってみなよ」
試すみたいな声。
でも、それすらも余裕に聞こえる。
「…嫌だ」
絞り出す。
「近づかないで」
「なに、聞こえない」
軽く返される。
ぞわっ、と鳥肌が立つ。
「ちゃんとさ」
耳元に、声が落ちる。
「命令されないと、動けないでしょ?」
「Come(来い)」
一瞬、世界が歪んだ気がした。
「……っ!」
足が、勝手に前に出る。
止めたいのに、止まらない。
「ほら」
満足そうな声。
「やっぱり」
違う。
違うのに。
体が、言うことを聞かない。
「ゃだ……っ」
涙がにじむ。
「なんで…」
怖い 。
でもそれ以上に。
「…なんで、動くの、っ」
自分の体が、一番怖い。
「オメガだからでしょ」
当たり前みたいに言われる。
その言葉が、深く刺さる。
「アルファのコマンド、効くんだよ」
やめて 。
それ以上、言わないで。
「便利だよね~」
笑いながら言われて、頭の中が真っ白になる。
「ほら、もう一回」
やめて。
お願いだから。
「Come(来い)」
体が、また動く。
涙がこぼれる。
「やだ……っ」
呼吸が荒くなる。
声は拒否してるのに、体は逆らえない。
その矛盾が、ぐちゃぐちゃに混ざる。
「Good boy(いい子だね)」
その言葉で、何かが切れた。
「……っ、やめろ゛!!」
叫んだ瞬間、足が止まる。
息が荒い。
視界が揺れる。
「…へえ」
少しだけ驚いた声。
「ちゃんと抵抗できるんだ」
「…触るな!!」
震えながら言う。
「二度と、僕に命令すんなっ!!!」
やっとの思いで言葉を吐き出す。
その人は少しだけ考えるような顔をして、肩をすくめた。
「ま、いいや」
あっさりした声。
それが余計に、気持ち悪い。
「どうせさ」
背を向けられながら、軽く言われる。
「またアルファに従うんだろ?」
「……っ!」
否定、できない。
「そういう生き物だもんな」
その一言が、決定的だった。
動けなかった一瞬よりも。
従ってしまった事実よりも。
「「そういう生き物」」
そう決めつけられたことが、一番苦しかった。
僕はその場にしゃがみ込んだ。
「…最悪っ、」
体がまだ、微かに震えてる。
「なんで…」
命令されたら、動いてしまった。
あれが事実。
「僕、ほんとにっ、」
喉が詰まる。
「……オメガなんだ」
当たり前のことなのに。
どうしようもなく、嫌だった。
あははは
コメント
2件
オメガ × ドムサブ の 相性 最高すぎる 🫣💭💭 英語 苦手 だけど , 頑張って 読むね .ᐟ.ᐟ 🫶🏻🎀 最後 , 元貴さん の トラウマ が 蘇ってる 雰囲気 出すの 天才すぎて 尊敬です .ᐟ.ᐟ 😽🤞🏻 続き も 楽しみに してるよ ~ .ᐟ.ᐟ 🫵🏻🎀