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チャーリーに促され、シャットはラウンジのソファに座らされた。
スマホをいじりながら、まるで「この場に慣れている」ようで実はまったく慣れていない顔つき。
チャーリー「よし!じゃあホテルのみんなを紹介するわね!」
シャット「えぇ、お願いします」
チャーリー「こちらはヴァギー!私の恋人!」
シャット「恋人…ですか」
ヴァギーは照れくさそうに肩をすくめながらも、視線はシャットを鋭く測るように見つめてくる。
チャーリー「えぇ!
次は俳優のエンジェル!
そしてハスクにニフティ!
そしてサーペンシャス!」
シャット「はじめまして……ではないですね」
エンジェル「え? 知り合い?」
シャットはスマホを閉じ、淡々と言う。
シャット「ハスクとニフティとは昔からの仲で。
そこのなんちゃらさんは前、戦いましたね」
シャットがサーペンシャスへ視線を向ける。
サーペンシャス「サーペンシャス!!
吾輩の名前は何回も言っているだろう!!」
シャット「知りませんでした」
サーペンシャス「今無視した!? 吾輩を無視したな!!」
ニフティがくすくす笑いながらサーペンシャスの背中を掃除した。
エンジェル「ペンシャス怒るとしわ増えるよ?」
サーペンシャス「増えんわ!!」
チャーリー「じゃあシャットの自己紹介して!」
シャット「……シャットです。以上」
エンジェル「短っっっ!?」
ハスク「もう少し紹介すればいいのに」
シャット「自己紹介って何を話すんですか?」
ハスク「まぁ……普通は仕事とか趣味とかだろ」
シャット「仕事なら……ラジオパーソナリティです」
エンジェル「聞いた聞いた!あんたのラジオ、前に取り上げられてたじゃん。
結構人気あるんでしょ?」
シャット「……まぁ。変なメールが多いだけです」
ハスク「お前、それ人気あるって言うんだよ」
ヴァギーは腕を組んでシャットを警戒しつつも、
ヴァギー「ふーん……ラジオね。
チャーリーの名前は出さないでよ?」
シャット「出す理由がありません」
ヴァギー「そういうところよ!その感じが信用できないの!」
シャット「……じゃあ信用しないままでもいいですよ」
ヴァギー「余計ムカつく!!」
チャーリー「まぁまぁまぁまぁ!!!
ケンカじゃなくて交流の時間だよ!!」
サーペンシャス「交流というより尋問では……?」
アラスター「あとチャーリー。シャットはルシファーのことが大好きです」
シャット「言わなくていいです」
ロビーの空気が一瞬で止まった。
チャーリー「……え? パパを……?」
ヴァギー「ちょ、ちょっとアラスター!? 何その情報!!」
エンジェル「はぁ〜? あんた趣味わっっる……いや、悪魔界では普通か?」
ニフティ「えぇっ、ルシファーのファン!?すごーい!!どれくらい!?どれくらい好きなの!?」
サーペンシャス「ほほう……まさかの大物推し……!」
シャットは無言でアラスターの袖を引っ張った。
「余計なことを言うな」という圧をこめて。
アラスターは楽しそうに微笑む。
アラスター「シャルの“推し”は偉大なんですよ。ねぇ?」
シャット「……アラスター、私あなた殴っていいですか?」
アラスター「言葉の暴力はほどほどに」
エンジェル「いや物理暴力の話だよそれ」
チャーリーは慌てて手を振る。
チャーリー「ちょ、ちょっと待って!?
パパのどこが好きなの!?見た目!?性格!?威圧感!?光!?えっどれ!?」
シャット「……全部です」
チャーリー「全部!?!?」
ヴァギー「チャーリーの心臓が死ぬ!!やめなさい!!」
ハスク「……お前、よりによってルシファーかよ……」
シャット「人の好みに文句言わないでください」
サーペンシャス「まぁ推しは推しだが……よりにもよって王族……!」
ヴァギーは額を押さえながらシャットを指さした。
ヴァギー「つまりあんたは……チャーリーの……お父さんが……好き……」
シャット「“推す”と“恋愛”は違います」
エンジェル「そっちの方が複雑なんだけど」
アラスターは横目でシャットを見ながら、わざとらしく肩をすくめる。
アラスター「まぁまぁ、シャルはこういう子なんですよ。
心は繊細なくせに口は強い。
でも私としては……」
アラスターはわざと声を落とす。
アラスター「“シャルの推しより、私を見ていてくれたら嬉しいんですがねぇ”」
シャット「……っ」
一瞬で耳まで赤くなる。
エンジェル「やっべ……この2人、完全に“めんどくさい大人の恋愛”してるわ」
ハスク「アラスター、お前今日うるせぇ」
ニフティ「ニフティ、この空気好き!!」
チャーリーは戸惑いながらも、少し笑って。
チャーリー「えっと……
じゃ、じゃあ改めて!
ホテルへようこそ、シャット!!」
シャット「……はい。よろしくお願いします」
チャーリー「いつかパパに会わせてあげるね!」
シャット「…会わせてくれたらもっと広めましょう」
チャーリー「ありがとう!でもまだ先の話になると思う」
シャット「まってますよ」
ある日 宣伝ラジオにて
珍しく昼からラジオ放送があった
シャット「それではラジオの時間です」
アラスター「珍しく昼からの放送ですね」
シャット「お願いですから昼は寝かしてくださいね」
アラスター「さて今回はハズビンホテルからの宣伝ですね」
シャット「……ここハズビンホテルでは、ただ宿泊できるだけでなく、悪魔たちが自分を見つめ直し、より良く生まれ変わるためのサポートも行っています」
アラスター「はい、シャットさんのおっしゃる通りでございます。地獄に堕ちたからといって、もう変われないということはありません。誰でも更生は可能です」
シャット「ここでは、専門のカウンセリングやレッスン、そして個別の指導プログラムを用意しています。……どんなに問題がある悪魔でも、努力次第で変われます」
アラスター「もちろん。座っているだけでは何も変わりません。しかし、ハズビンホテルであれば、その一歩を踏み出すお手伝いができるのです」
シャット(少し照れながら)「……えぇ、私もリスナーの皆さんに胸を張って言えます。ここに来れば、必ず更生は可能です」
アラスター「おっしゃる通り、シャットさん。諦めなければ、誰でも変われます」
シャット「そして、私たちスタッフも全力でサポートします。ホテルに来て、変わる勇気を持ってほしいです」
アラスター「さあ、悪魔の皆さん。今こそ自分自身を信じる時でございます。ハズビンホテルで新しい一歩を踏み出しましょう」
シャット「……以上、ハズビンホテルからのお知らせでした」
放送が終わり
シャット「よくこんな原稿考えますね」
アラスター「ヴァギーにたくさん言われましてね」
シャット「あなたが普段言わないことを言わせると気持ち悪いですね」
アラスター「正直ですね」
シャット「普通ですね」