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コメント
6件
わああずっと気になってた部分が!!やっと見れます…😭 楽しみにしてました! 若井さん、そんな感じだったんですね…!若井さんの元貴くんに対する重さっていうか、独占欲みたいなものの原因が分かった感じがします(>ᴗ<) 元貴くんと若井さんのファーストコンタクトとかも気になりますし……!! 本当に大好きな小説です!続き待ってます!
奇数グループって2人ずつのペアや会話に分かれたとき、どうしても1人余る疎外感を抱きやすくなるそんな描写がリアルに描かれてましたね。 「ばいばい」なんて言わないで欲しい…すごい分かります😭 目頭がちょっと熱くなってしまいました。次に繋がるものの描写が気になって気になって🫣 次の更新も楽しみに待ってます🙋♀
楽しみにしてました、更新ありがとうございます>⩊<✨🎵 若井さんそうだったんだ😭😭 歩いてるところや友達と話してるところの心理描写がリアルで苦しさや切なさの気持ちがすごく伝わってきてすごいです😭 都合がいいって言葉選びがなんかもう、😭元貴くんと出会ってどうなるのか続きも楽しみにしてます🥹💕
HN 👼❤️🔥
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【前書き】
私の別作品である「死にたい君に、依存する。」の二人が出会った頃のお話です。
そちらを読んでからでも、このお話を読んでからでも、どちらでも楽しんでいただける内容となっています。
【注意】
大森さんがろう者(生まれつき耳が聞こえない、第一言語が手話の人)設定です。
不快な思いをさせてしまう恐れがあるので、少しでも気になられた方はブラウザバックをすることをおすすめします。
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じーわ。じーわ。じーわ。
蝉が耳をつんざくような声で鳴いている。
靴底がアスファルトを擦るカサカサという音は、きっと俺しか聞こえていない。
灰色の道路の上を、誰かの捨てたタバコや、干からびた落ち葉の破片が流れていく。
それをただ、一歩踏み出すごとに踏みつけ、見つめ続ける。
前方を歩く四人の背中からは、絶え間なく笑い声が弾けていた。
「数学の授業でキレてた時のバヤシの顔見た? マジでウケんだけど」
「見た見た、唾めっちゃ飛ばして真っ赤になってたよな」
「次の練習さ、メニュー見直した方がいいと思うんだよ」
「あーそれ俺も思った。一年だらけてきてるよな最近」
聞き慣れた声。小学生の頃からずっと側にあった、大好きな友だちの声。
でも、それはまるで透明なガラスの壁に弾き返されるみたいに、こちらには落ちてこない。
その輪の中に、俺の場所はどこにもなかった。四人の作る影が陽の光で引き伸ばされ、自分の足元にまでかかっている。影は繋がっているのに、俺とみんなの間にはもう、手の届かない距離が広がっていた。
俺たちは、もともと「五人」だった。
小学生の頃、同じサッカー教室に通い始めたのがきっかけだった。雨の日も風の日も、泥だらけになりながら一緒にボールを追いかけた。練習が終われば誰かの家に集まってゲームをし、駄菓子屋で買ったアイスを分け合った。中学に上がっても当然のようにみんなで同じサッカー部に入り、登下校も部活も、いつでも一緒にいるのが当たり前だった。俺にとっては、世界の全てと言ってもよかった。
異変が起きたのは、中二の秋だったと思う。
本当に、何の前触れもなかった。
朝、いつもの待ち合わせ場所に行くと、四人はいなかった。どうしたのかな、と思いつつ遅刻ギリギリまで待った。教室に滑り込んだ時には、四人はもう席について楽しげに会話をしていた。息を整えながら、俺が「おはよ」と声をかけた瞬間、場の空気がスッと冷えた。誰も俺の目を見なかった。返事もなかった。
最初は、冗談だと思った。明日になればまた笑い合えると思っていた。
でも、次の日も、その次の日も、世界は元に戻らなかった。
LINEグループから外されたわけではない。露骨な暴言を吐かれたわけでもない。ただ、自分という存在だけが、そこから綺麗に消去されたみたいだった。話しかけても、四人は聞こえていないかのように会話を続ける。輪に入ろうとすると、自然な動作で背中を向けられ、外側へ弾き出されてしまう。
「なんで?」
その一言が、どうしても言えなかった。
口を開けば、喉の奥が引きつれて呼吸ができなくなった。
「なんでハブるの?」
「何か悪いことした?」
そう訊ねてしまえば、彼らの口から決定的な言葉が吐き出される気がして恐ろしかった。
「だってお前、うざいもん」
「お前なんて最初から友達じゃないし」
そんな言葉を面と向かって突きつけられたら、もう二度と立ち上がれなくなるような気がした。原因を聞く勇気すら持てないまま、逃げ場を失っていった。だから俺は、そのままグループにくっついていくことを選んだ。
一人で歩いている姿をクラスの他の奴らに見られ、「あいつ、ハブられたんだ」と思われるのが死ぬほど嫌だった。グループの端っこに必死にしがみつき、仲間であるフリをし続けること。それが、俺に残された唯一のプライドであり、同時に地獄の始まりだった。
グラウンドへ向かう道中。そして、部活動が終わった帰り道。
前に四人、後ろに俺。
その構図が、日常として固定化された。
けれど、サッカーをしている間だけは、試合にならないから、最小限の指示の声だけは飛んでくる。
「若井、パス!」
「もっと前出ろ!」
その瞬間だけ、自分が人間として存在しているような錯覚を感じられた。でも、練習が終わってスパイクを脱ぎ、鞄を肩にかけた瞬間から、俺はまた幽霊に戻る。
部活の帰り道、夕陽が街を赤く染めていく。
四人は前に二列に並んで歩いている。笑い合い、特には冗談を言いながら、今日の練習の反省や明日のテストの話をしている。
俺はその後ろを、歩幅を合わせて一歩下がった位置で歩く。
会話に入ろうとしてはいけない。相槌を打とうとしてもいけない。ただの影として、静かに存在していなければならない。
アスファルトの亀裂。点滅する信号機の影。誰かが落としたお菓子のゴミ。目の前を歩く四人の靴の踵が、交互に上がっては下がるのをじっと見つめる。
たまに、前の誰かが振り向く気配がすると、心臓が跳ね上がった。
「若井もそう思うだろ?」なんて言ってもらえるんじゃないかという、愚かな期待が胸を掠める。でも、振り向いた彼は俺の少し先にある自動販売機を見つめているだけだったり、後ろから来る自転車を避けるためにチラッと見ただけだったりする。俺の姿は、彼らの網膜に映ってすらいなかった。
会話のできない時間が、一日、一週間、一ヶ月と積み重なっていく。 気がつけば、季節がひとつ巡っていた。一年近く、俺は彼らの背中を見つめながら、地面を歩き続けていた。
それでも一緒に居続ける心の支え、いや、しがらみになったのは、 帰り道の最後の「別れ際」だった。
俺の家へ続く曲がり角。四人の家とは方向が分かれる、あのT字路。 そこに差し掛かると、四人は立ち止まることなく、そのまま真っ直ぐ歩いていこうとする。俺は足を止め、右に曲がらなければならない。
「じゃあな」
そう言いたいのに、声が出ない。喉が引きつり、乾いた空気が抜けるだけだ。
その時、四人のうちの一人が、チラッとだけ後ろを振り返る。
ほんの一瞬。他の三人に気づかれないような、ささやかな動き。
「……ばいばい」
蚊の鳴くような、小さな小さな声。
彼はそれだけを囁くように言うと、すぐに前を向き、楽しそうに話す他の三人の背中を追いかけて走っていく。
それを聞くたびに、言葉に表しがたい寂しさと苦しさと悲しさに襲われた。
なんでばいばいなんて言うの。
俺のことを気遣ってくれているの?
それとも、ただの哀れみ?
それとも、罪悪感を消すための免罪符?
もし、完全に冷酷になってくれたなら、どれだけ楽だっただろう。「あっち行けよ」と怒鳴りつけられたり、最後まで完全に無視し抜かれたりした方が、いっそ諦めがついた。彼らを憎むことができた。
でも、あの小さな声のせいで、俺は彼らを憎みきれなかった。
「本当はまだ、俺のことを友達だと思ってくれているんじゃないか」
「あいつだけでも、俺の味方なんじゃないか」
そんな惨めで、浅ましい期待を捨てることもできないまま、卒業式を迎えた。
そしてこの一件以来、俺は人に対して強く自分の意見を言ったり、頼みを断ったりすることができなくなった。
理由が分からなかったからだ。
なぜあの四人が突然俺をハブり始めたのか。どれだけ過去の記憶を掘り返しても、答えは永遠に闇の中だった。
原因が分からないということは、あらゆる言動が「嫌われるきっかけ」になり得るということだった。
何気ないひと言かもしれない。笑い方かもしれない。あるいは、ただ存在していることそのものが原因だったのかもしれない。
理由が特定できない以上、俺は自分の全てを疑うしかなかった。少しでも強い言葉を使って相手の気分を害してしまったら、またあの地獄が始まる。急に視線が冷たくなり、存在を無視され、誰も俺を見てくれなくなる。「あの日々」に戻される。
だから、高校に進学しても、俺は「みんなの望む若井滉斗」を完璧に演じ続けた。
明るくて、ノリが良くて、誰にでも笑顔で話しかけるクラスのムードメーカー。傷があることなんて微塵も感じさせない、爽やかなサッカー少年。それが俺の被った仮面だった。
でも、その仮面の下で、俺は常に怯えていた。
友達と話していて、俺が少し軽口を叩いたとする。冗談のつもりで投げた言葉に対して、相手の眉がほんの少し寄ったり、目線がわずかに泳いだりした瞬間、背中に冷や汗が噴き出す。
(やばい、怒った? 嫌われた?)
脳内で警報が鳴り響く。パニックになりそうな心を必死で抑え込み、俺は相手が反応するより少しでも早く、おどけた笑顔で被せるように言葉を放った。
「わりぃわりぃ! 冗談じゃん! 本気にすんなってー!」
軽快なトーンで手をひらひらと振り、笑い飛ばす。自分が下手に回ることで、相手の機嫌を即座に修復する。
相手が「なんだよビックリさせんなよー」と笑い返してくれるのを確認して、ようやく喉の奥で安堵の息を吐く。そんな綱渡りのような会話を、毎日、毎時間、繰り返していた。
特に、相手からの相談事や頼み事は、絶対に断らなかった。困ってそうな人がいたら、真っ先に駆けつけた。そうすれば周りの人もそれを見て嫌わないでいてくれると思ったから。
「若井、宿題写させてくれない?」
「今日の掃除当番、代わってくれないかな」
「若井、これやっといて!頼むわ〜」
どんどん内容がエスカレートしていっても、どんなに自分が疲れていても、他にやりたいことがあっても、断るという選択肢は俺の中に存在しなかった。何がきっかけで人が離れていくか分からない以上、断るリスクを冒すことなんて怖くてできなかった。
そうやって俺は、クラス全員と広く浅く付き合った。
サッカー部の仲間、クラスのグループ、廊下ですれ違う他のクラスの知り合い。誰とでも笑顔で話せるし、誰の輪にも入っていけるようになった。
しかしその反面、 俺は「自分と同じような属性の人間」が苦手になった。
誰にでも良い顔をし、広く浅く人と付き合うタイプ。自分と同類の人間を見ると、猛烈な拒絶反応を覚えた。
なぜなら、そいつらは俺だけを見てくれないから。
誰にでも良い顔をするやつは、誰のことも一番には思っていない。都合が悪くなれば、俺をハブったあの四人のように、簡単に誰かを切り捨てる。自分自身がそうやって自分を守っているからこそ、同類の「浅さ」と「不誠実さ」が透けて見えて吐き気がしたのだ。
自分が満遍なく誰とでも付き合うくせに、俺が求めていたのは、真逆の存在だった。
付き合う相手は、俺だけを見てくれる奴が良かった。
友達が多くて、いつも誰かに囲まれているようなキラキラした奴なんていらない。そいつらは俺がいなくても生きていけるし、他に楽しい選択肢がたくさんある。俺以外の誰かを優先された瞬間、俺はまたあの「置いていかれる恐怖」に苛まれることになる。
だから、俺が欲しかったのは___
教室の端っこで、静かに一人で本を読んでいるような子。
友達が少なくて、人にあまり心を開かない子。
クラスの輪から外れ、一人ひっそりと息をしているような、そんな子が好きだった。
自分がその子の「たった一つの居場所」になりたかった。
俺が話しかけて、俺が隣にいて、俺が優しくしてあげることで、その子の世界のすべてが俺になればいい。友達が少ないその子なら、俺を置いてどこかへ行くこともない。俺以外の誰かを優先して、俺を一人にすることもない。
絶対に、離れないでいてくれるから。
「もう二度と、置いていかれたくない」
「もう二度と、嫌われたくない」
笑顔の仮面を貼り付けながら、俺の心はいつも飢えていた。
俺だけの存在になってくれそうな、誰かを探して。
だからこそ、高二の春に出会った彼は、
俺の心の乾きを埋めるのに
とても、都合がよかったのだ。