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大学2年・4月。
月曜日。
バイトから帰ってシャワーを浴びている仁義。
「…りちくん、どんな人やろか。」
「手土産とか渡したほうがええんかな。」
「…逆に重いんかなそういうん。」
「身だしなみとか気をつけんとな。」
そんなことを考えながら、風呂場を出る。
備え付けの鏡にうつる、自分の体が目に入る。
「………。」
携帯を取る。
「まりりん。」「よければ土曜日ちょっと付き合ってくれる?」
土曜日。
服屋。
仁義「……。」「入らん。」
まりか「どこ。」
仁義「太腿。」
まりか「……。」「しゃがんでみ。」
仁義「無理。」
店員さん「こちらストレッチ素材ですので……。」
仁義「ストレッチが負けた。」
次の服。
まりか「肩。」
仁義「え?」
まりか「肩。」「そこ入らんの?」
店員さん「XLでも……。」
まりか「だから。」「肩!!」「二の腕!!」
「パツパツやろがい!!!!」
仁義「そんな太い?」
まりか「太い。」
次。
試着室から出てくる。
本人は
「ちょっと垢抜けたかな。」
くらいの顔。
まりか「なんか。」「体育教師。」
仁義「……。」
まりか「肩!」「だからまた肩!!」
「太腿!!!」
下着のシャツのまま座り込んでうなだれる仁義。
まりか「仁ちゃんさあ」
「線の細い服が似合わなすぎるんだよ」
「密度が高すぎる」
仁義「密度?」
まりか「見た目そんなデカくないのに全部詰まっとる。」「だから肩が毎回死ぬ。」
仁義「⋯⋯⋯。」
まりか「悪いこと言わないけどさ」
「今までのファッションでいいんじゃない」
爆笑しているまりか。
ぽつりと、仁義がこぼす。
「…だって、」
「あの人はきっと、きれいだから。」
まりか「……?」
仁義「僕とは全然違うだろうし。」
「どうして似合う人になれないんだろう。」
まりかは真顔になる。
ちょっと考えて、まわりの服を何着か見る。
「…仕方ない。」「これならいけるでしょ」
持ってきたのはどでかいオーバーサイズ。
「そうかな」って仁義。
「たぶん」ってまりか。
オーバーサイズを着た仁義が試着室から出る。
肩は入る。
胸も大丈夫。
でも。腕。太腿。
ジャストサイズ。
仁義「……。」「長い。」
指先を通り越した袖をぶらぶら。
まりか「貸して。」
仁義「え?」
まりかが何も言わず袖を折る。
1回、2回。
まりか「これなら。」
「手、引っかかんないでしょ。」
「ほら、足。」ズボンの裾も折りだす。
仁義「……。」「ありがとう。」
まりか「歩いてみ。」
仁義が歩く。
まりか「うん。」「今度は大丈夫。」
仁義は少し照れながら、
「……。」「これでいいかな。」
まりか「うん。」「仁ちゃんには似合ってる。」
Syrup 16g『土曜日』。
土曜日なんて来る訳ない。来た。
コメント
1件
終わった……これ、めっちゃ良かったわ。 仁義くんの「だって、あの人はきっと、きれいだから」ってとこ、グッときた。自分の体格にコンプレックス持ってるのに、まりかの「密度が高すぎる」で笑いも取って、最後はオーバーサイズの袖を折ってくれる優しさ。このバランスが神ってる。 「土曜日なんて来る訳ない。来た。」っていう締めも、もう全部を物語ってる。第13話、えぬたさん最高だわ🔥