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今日は久しぶりに体調が良い日だった。
最近はずっと寝込んでばかりだったし、病気が悪化してからできた友人とも遊んでいなかった。
適当に買い物をしようと、家の前の細い路地を歩く。
すると、奥の方にしゃがみ込んでいる男性を見つけた。
少し近づいて見ると、しゃがんでいても分かるスタイルの良さと整った顔。
だが、見るからにガラが悪かった。
口の端でくわえた紙タバコ、レンズに茶色がかったサングラス。
普段なら見もしないような人だが、今回ばかりは違った。
彼の手には弱っているまだ小さな子猫。
さらに、彼の目には涙が浮かんでいた。
『大丈夫?…今助けてやるからな…ズズッ』
彼はそう言ったものの、行動に移すことは出来ていない。
俺は思わず彼を見つめていた。
『あ…すいません。今どきますね…』
そう彼に話しかけられて俺は初めて気づいた。
彼の体で細い路地がふさがれていたのだ。
だが俺は彼が開けてくれた道を通らず、
「猫…大丈夫ですか?病院行かないとダメですよね、動物病院。」
そう声を掛けた。
『あ…そうですよね、どうすればいいか分かんなくって…たまたまここ通り掛かったら猫が弱ってて、なんか悲しくて…』
見た目は強面でも、本当は優しくて繊細な性格なんだな、そう思った。
動物病院に着いたあとも彼はずっとソワソワしていた。
俺も彼も猫を預かることが出来ず、動物病院で一時的に預かると決まった時、彼はほっとしたのかその場に崩れ落ちた。
『ふぅ…ほんとに良かった。焦った〜。ほんとにありがとうございました。』
「いえいえ。めっちゃ焦ってたから思わず声かけちゃいました。」
『俺、小さい時にめっちゃ弱ってる動物見て、なんも出来なくて…そのまま死んじゃって…だから今回は絶対助けなきゃって…』
彼の使命感には、俺の心を揺さぶるものがあった。
「でも…猫ってほんとに可愛いですよね。 」
『そうですね…俺猫めっちゃ好きで、飼いたいんですけどねぇ』
「俺もです。飼いたいけど飼えない」
『ふふ…なんかわかんないけど、俺たち気が合いそうですね。』
「確かに笑 仲良くしましょ。」
『やった!連絡先交換しましょうよ!』
「おお…是非是非」
俺と連絡先を交換して微笑んだ彼は、とても優しい青年に見えた。
だがそんな青年も知らない、俺がもうじき死ぬなんて、
俺がさっき静かに胸を抑えたのも、見えていないはずだ…
その日の晩は不整脈が止まず、胸に痛みも走った。
俺は救急車を呼んだが、その救急車が家に着く頃には、俺の意識は無くなっていた。