大広間にやってきた。
偽学園長の姿が見えない。
「偽学園長はどこにいったんですか?」
「俺が偽カラスの居場所を知るわけねェだろ…」
レオナ先輩が頭をぽりぽりと掻く。
すると、見慣れない女性がこちらに近寄ってきた。
「っ、あなたは誰で…」
ジャミル先輩が歩み寄ると、女性はジャミル先輩に魔法をかけた。
ジャミル先輩は宙に浮かび、床に叩き落とされた。
カリム先輩が駆け寄った。
「あのジャミルさんが倒れるとは…信じがたい光景ですね。」
ジェイド先輩が目を細めて腕を組む。
「バイパー先輩に何を!?」
みんなが女性を睨む。
女性はジャミル先輩の胸ぐらを掴み、額にさらに魔法をかけた。
すると、ジャミル先輩の体から魔力が吸い取られていく。
「あっ……うぅっ………」
女性は叫んだセベクを見つめる。
そしてこう言った。
「あなたは、セベクくんね?」
「何故僕の名前を知っている!?!?」
「ふふふ…私、全部知ってるのよ?」
セベクは女性の頭に向かって足を振り上げた。
しかし、女性はジャミル先輩を操って盾にする。
「ふふふ…そんなに張り切って。人を早く殺したいんだね?」
「何を言っている!!!! 非常事態だ!!!! 誰か、手を貸せ!!!!!」
「手を貸すぞ、セベク!!」
シルバー先輩が拳を構える。
なんで、みんな魔法を使わないんだろうか。
頬のバーコードで魔法が使えないようにされてるのかもしれない。
セベクとシルバー先輩が拳を女性の顔面に的中させた。
しかし、女性はびくともしない。
「う〜ん。弱いわね」
女性はジャミル先輩を捨て、リドル先輩とカリム先輩、オルトを魔法で拘束した。
「な、なんだい!?!?」
「おっオルト!!! どうにかしてくれ〜!!!!」
「カリム・アルアジームさん!! 僕に備わっている機能ではどうにもならないほどの、強力な魔法だ!!!」
「オルト!!!! 今そっちに、拙者が取ってきたマップデータ送信しといたから、これでどうにかしてっ!!!!!」
「寮長!!!! おいデュース、どうするんだよ!!!!」
「僕にどうしろって言うんだ!?!?」
「か、カリムっ……!!!」
「この赤毛の子、憎しみに満ちた瞳をしてるわね…そんな瞳、私は好きよ」
女性は、リドル先輩の瞳に触れようとした。
その指には、絶大な魔力がこもっているのが、魔法を使えない僕でもわかった。
みんなが手も足も出ない中、トレイ先輩が女性に向かって走った。
トレイ先輩の周りに、白い薔薇の花びらが渦巻く。
力強い叫び声に反応したかのように、トレイ先輩の体に魔力が還っていく。
___『白を赤に、赤を白に』___
そして、薔薇の花びらが真っ赤に染まり、女性を取り囲む。
トレイ先輩は目を見開き、手を前に突き出し、こう唱えた。
ドゥードゥル・スート
___『薔薇を塗ろう』___
女性は驚いた表情でトレイ先輩のをもろにくらった。
女性は捉えていた先輩たちを振り落とし、頭を抱えて座り込んだ。
「リドルッ!!!」
「か、カリム!!!」
「オルト!!!!」
トレイ先輩はリドル先輩を、ジャミル先輩はカリム先輩を、イデア先輩はオルトを強く抱きしめた。
「リドルッ、大丈夫か!?!?」
「トレイ!!! 本当にありがとう、助かったよ!!!」
「怪我はしてないか?」
「してないぜ、ジャミル!! この通りだ!!!」
「パーツ外れたりしてない!? システムに異常ない!?!?」
「うん、兄さん!! パーツも外れてないし、システムに異常もないよ!!!」
「だ、大丈夫ですか!? 先輩!!!」
僕は脱力している先輩に声をかける。
「あぁ、大丈夫だよ。監督生。心配ありがとう。」
「怪我もないぜっ!! 監督生、怪我は…ないな!!! よかったよかった!!!」
「問題ないよ、監督生さん!!!」
「感動の再会はもういいわ。あの女性は誰なの?」
ヴィル先輩がキッと女性を睨みつける。
女性は怯えながらこう何度も繰り返して呟く。
「どうして…どうして…どうして…どうしてっ!!!!!」
「何が「どうして」なんだい?」
ルーク先輩も参戦する。
「私はっ、「全員魔法が使えないから、弱そうなやつを一通り殺してこい」って命令されただけなのよっ!!!」
「何を言っているんだい?」
「誰に命令されたの。」
「それは…言えない…!!!!」
「…もういいわ。失せなさい。」
ヴィル先輩がそう言うと、女性は大広間の壁の中に走って入っていった。
「壁の中に…!?」
「きっと、あの壁が隠し通路なんじゃろうな。行ってみたいの〜」
リリア先輩が首を傾けてそう答えた。
「いきなり行くのは危険でしょうから、誰か数人で見に行くのはどうですか?」
アズール先輩が提案する。
「うちの犬っころを連れて行け。マジフトに向けて鍛えてるとでも思って、ジャック。行ってこい」
「れ、レオナ先輩に指名された…押忍!!! 行ってきます!!!」
「それでは、僕も行きましょうか?」
ジェイド先輩が手を挙げて前に進んだ。
「じゃあ頼む。」
「はい。」
「うちの寮からは、デュースを行かせるよ。いい経験になると思うし、この中にいる1年生だったら、デュースが一番喧嘩上手だからね。」
「カシラ…!!! 張り切って行ってきます!!!」
「これで三人…ちょうど良いわ。行ってきなさい。」
選ばれた三人は、スキップをするような足取りで壁に向かって突っ込んだ。
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