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#大正
井川奎
111
#恋愛
井川奎
154
#普通
野々さくら
369
芙月みひろ
511
この娼館が、サロンと呼ばれる由縁になった、大広間には、あからさまには名前を出せない国の重鎮に、新興貴族に、と、様々な地位に立つ男達が、集まっていた。
互いに、初対面の振りをして、グラスを傾けあっているのだが、側では、それぞれ、淑女に挺した娼婦が控えている。
グラスの中で泡立つ果実酒《シャンパン》の、甘い香りと、男達が身に纏《まと》う、上品なコロンの香りの漂いに輪をかける様、女達の白粉の香りが被さると、広間は、浮き世を忘れさせるかのような、隠微な空気でむせかえった。
そして、古代の祭壇にみられるような紋章の意匠が刻み込まれた、両開きの大扉が開かれて、この館の女主《マダム》が、パトロンである伯爵に、うやうやしく導かれながら皆の前に姿を現した。
いつも通り、マダムは、これ以上ないほど山高に盛られたカツラに、青粉を振りかけ、色気の象徴とばかりにパッチ化粧を施している。
黒色《こくしょく》のベルベットで作られた、黒子《ほくろ》を付けるそれは、やや、時代ががっていた。
「ご機嫌よう、愛しい人」
「麗しの、我がマダム」
「我々の女神《ミューズ》」
集まる男達に、お決まりのおべっかを振る舞われ、マダムは笑顔を絶やさない。隣では、こちらも、誰、とは名を呼べない、ただの、伯爵が、パトロン然として、その存在感を発っしていた。
「皆様、私《わたくし》のサロンへ、ようこそ!」
その一声で、皆は、グラスを掲げ乾杯する。
一気に、広間は、熱を帯び、マダムが発する、次の言葉を待っていた。
「今宵の月は、どうでしょ?まるで、幾重にもヴェールを纏《まと》っているようだわ!見るものを、惑わせる、仄《ほの》かな光。そうして、それに導かれ、集まった可愛そうな子羊達よ。決して、手の届かない場所にある、月に、恋焦がれ……」
ゴォーンと、銅鑼が鳴る。
今宵の余興の始まりを知らせるそれは、特別なものが、待っているのだと、男達を震わせた。
──そう、かの舞姫が、現れる。
幾重にも、ヴェールを重ね、雲の合間から差し込む、月明かりのような、線の細さとは裏腹に、小鳩が飛び立つかのような大胆で、初々しい、あの舞い──。
「さあ、さあ、まずは、希代の踊り子、サロメの姿をご覧あれ!」
コメント
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うわぁ第2話、めっちゃ官能的で贅沢な世界観…!✨ マダムの登場シーンからもう絵になるし、「幾重にもヴェールを纏った月」って表現がすごく綺麗で、舞姫サロメへの期待が一気に高まったよ😭💕 銅鑼の音で場の空気が変わる感じ、ドキドキした…!これからどんな舞が始まるのか、続きが気になりすぎる〜!!