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気付けばそこは遊園地だった。

お菓子でできた建物やアトラクションが、建ち並んでいる。

しかしそこで遊んでいるのは人間ではない。

イチゴのお化けとでも言えばいいんだろうか?

可愛くて不気味なイチゴの怪物たちが遊びまわっている。

見渡す限り、まるでスイーツをテーマにした遊園地のアトラクションのような、作り物の舞台の上に突然投げ入れられたようだった。

メルヘンチックだけど、どこか不気味な世界だ。

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イチゴのお化けたちがはしゃいでいるメリーゴーランドを呆然と眺めながら、私はつぶやく。

「ここ、いったい何?」

「お菓子の国にようこそ」

背後からカンナに体を抱きしめられる。

「ひっ――っ!」

「美雪ちゃん、ここで仲良く暮らそうよ?」

「ここ、いったい何なの?」

「だから言ってるでしょ? ここはお菓子の国。美雪ちゃんと一緒に暮らしたくて作ったんだ」

「作ったって、どうやってこんなの一人で作れるって言うの!? 魔法みたいに、呪文でも唱えて作ったって言いたいの?」

「そうだよ」

カンナは肯定した。

「このお菓子の国も、あそこで楽しそうに遊んでいるイチゴのお化けたちも、みんなみんなみーんな作ったんだよ。魔法の力で」

「ありえない、こんなの、怖いよ」

怯える私にカンナは語り掛けてくる。

「美雪ちゃん、もう美雪ちゃんに現実の世界に居場所なんかないんだよ」

「えっ?」

気付けばそこは観覧車の中だった。



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その観覧車のゴンドラは、まるでコーヒーカップにパラソルでも突き刺したような形をしている。つまり屋根はあるが壁でおおわれていないのだ。

普通の観覧車のゴンドラのように窓ガラスで覆われていないので、眺めはものすごくいいが、ついうっかり足を滑らせたりすれば簡単に転落して即死することだろう。

だが、ここがカンナの言う通り「作り物の世界」だからなのか、本来なら吹いているはずの風が一切吹いていない。

だからゴンドラが揺さぶられたりして転落するような心配もないので、こういう眺めを重視して、安全性がいっさいない構造になっているのか?

いやそんなことより、いつの間に私は観覧車の中にいたんだろうか?

私がいたのは、メリーゴーランドがあった広場のような場所だったはず。

まるで映画のカットが切り替わるかのように、ごく自然にゴンドラの中に私はいた。

これもカンナのいう「魔法」の力なのだろうか?

ふと、手に冷たくて柔らかい感触。

カンナは私の隣に座って、私に甘えるように手をつなぎ、寄り掛かっていた。

「イヤ――ッ!」

反射的に私は手を振りほどいて、カンナと距離を取った。

狭いゴンドラの中だから大して離れることはできなかったけど、それでも彼女からほんの少しでいいから離れたかった。

もう何が何だか分からない。

恐怖というよりも、何か例えようのない生理的嫌悪感のようなものがこみあげてくるのが分かった。

そしてその嫌悪感は、カンナを拒絶しろと私に訴えかけてくるのだ。

「どうしてなの? もう忘れたいのに」

「忘れたい? カンナを、忘れたいの?」

「そうよ! もう忘れたい! だってアンタはもう死んだんでしょ? これ以上私を苦しめないでよ!」

恐怖と嫌悪感で、堰を切ったかのように私は感情をぶちまける。

「アンタには分からないわよ! アンタが死んでからの一年間、どんな気持ちで過ごしていたかなんて!」

やめて、私はこんなことを言いたいはずじゃない。

「アンタの両親の死体を見せられたうえに、目の前で心臓貫いて自殺とか、本当にアンタ頭おかしいんじゃないの!? あれからずっと、私はあの日の光景がずっと夢に出てきて、私はアンタにずっと苦しめられ続けているのよ! しかも最近はアンタの影が幽霊みたいに現れるようになって、私、頭が変になっちゃったと思った!」

ダメ! これ以上こんなこと言っちゃダメだ!

「それで今になって亡霊みたいに、本当に化け物になって現れて、いったいどれだけ私の事を苦しめたら気が済むって言うのよ!」

涙が溢れかえる。

やめなさいよ、遠野美雪! 私が本当にカンナに言いたいことは、そんなことじゃないはずでしょ!

「もう嫌なのよ! アンタの事でずっとずっと悩み続けて、アンタの影におびえて苦しむのは……。こんな気持ちになるくらいなら、あんたなんかと出会わなければよかったのよ!」

私は本当はカンナの事――。

「カンナなんか嫌い! 嫌い! 大っ嫌い!」

違う! 違う違う違う!

「分かったら、私の事を開放しなさいよ! このバカああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

私の声が遠くまで響き渡る。


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(ああ、言っちゃった。私、こんなこと言いたくないはずなのに)

私が喚き散らしているあいだ、カンナは涼しい顔でどこか遠くを眺めて、一度も私の方を見たりしなかった。

ふとうつむくと、キッと私の方を見てきた。

「痛みがないとわからない?」

「えっ?」

気づくと、美雪の両腕に何かがしがみついている。

この子たちには見覚えがある。

カンナが描いた絵の中にいた、魔女のような姿をした女の子だ。

彼女たちは絵に描かれた通りの無機質な笑顔のまま、私の身体をにしがみついている。

と思ったら、その瞬間私の体が宙に浮いた。

それは小さな彼女たちによって身体を空中に持ち上げられているのだとすぐに気付く。

(まさか、私の事を落とすつもりなの!?)

こんな高いところから落とされたら死んでしまう!

「イヤ! やめて! 放して!」

必至に暴れるが、そんな抵抗もまったく意味がなかった。

気づけば私の身体は観覧車よりもずっと高いところまで運ばれていた。

私の真下には広場の巨大なホールケーキの形のモニュメントがある。

「あ、ああ……」

これから何をするつもりなのかバカでも分かる。

私をここから落とすつもりなのだ

小さな魔女たちはパッと私の身体を離した。

その瞬間私、の身体は空中に放り出され、そのままものすごい速度で落下していく。

もしも魔法の力が本当にあるなら、きっと私の身体だって魔法の力で空中に浮かぶことができるのかもしれない。

だがしかし、この落下だけは現実世界のそれと何も変わらず、ぐんぐんと地面は近づいてくる。

「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

悲鳴を上げる。

(いやだああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!)

心が全身全霊でこの先に待ち受ける結末を拒絶する。

だがそんな私の強い抵抗はなんの意味もなさず、私の身体は一瞬でケーキのモニュメントにたたきつけられた。

理不尽な暴力に晒されて私の全身が砕け散り、血が噴き出す音が聞こえる。


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後頭部を強打したのだろう。真っ白なショートケーキだったそのモニュメントに、私の赤い血のデコレーションがされていく。

私は間違いなく死んだ。

死んだはずなのになぜか意識はある。

観覧車に乗っているカンナは、死んだ私の事を乾いた眼差しで見つめていた。

(これで死んだの、何回目なんだろ?)

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